第189話 最後の手段!!
一方、『災厄』とグライプスの闘いはさらにヒートアップしていた!
「はああああああああああああ!!!!!」
両手から黒い瘴気弾を連続かつ高速で放ち続ける『災厄』!!
「カアアアアアアアアアアアア!!!!!」
グライプスも光弾で応戦する!!
「ふん! 遅いわあ!!!」
「ちっ! やはり連射速度は奴の方が上か!」
どうしても口から霊力を圧縮して光弾を放つグライプスの方が速射性、連射性重視で放っても尚『災厄』のそれの方が
徐々に後退し、押され始めていくグライプス!
だが彼が押され始めているのには別の理由も含まれていた!
そしてそれは黒崎や大王達が懸念していた通りの結果でもあった。
「―― まずいな……」
「ああ、やはり思った通り…… いや! 思っていた以上に神獣殿の霊力の消耗が早い! あの形態は地形に及ぼす影響が強い故、滅多に、というか、ほとんどなった事がないのだろう」
「使い慣れてない強力過ぎる力故、燃費が悪すぎる! あの形態での長期戦はまずいな」
「ああ、これ以上モッフンにばかり負担はかけられない! やっぱりちょっと行ってくるよ!」
「! リーズっ!」
「どれ程の力、スピードを以って奴の『
「気をつけろよ! リーズ!」
「ふふ♪ わかってるよ♪」
「ああ、それと修二! モッフンはどうする? 一度身体のサイズを少しもどして、奴を抑えるよりも攪乱重視で動いてもらう? そうすれば神獣の彼なら、少しずつでも霊力を回復できるだろうし――」
「…… ああ! 今はそうする様に伝えてくれ! あの火力はメチャクチャ惜しいが、ここで無理にあのサイズでいられて肝心な時にガス欠になられる事の方が厄介だ!」
「今は足を使ってなるべく攪乱する様にと伝えてくれ!」
「了解♪ 彼が攪乱に専念できれば何とかなるかもだけど、それでも足りなかったら僕もそっちに入るしかない…… 修二、兄上、それに
「最悪、僕が攪乱に加わって『核』の破壊に参加できなくても、こっちの火力は足りそうかい?」
リーズレットの問いに思考する三人――
そしてその後、最初に口を開くのは黒崎であった――
「アルセルシア…… 正直なところ、今どれ位の力が残っている?」
「そうだな…… 奴が巨大化する前に放った奥義の一撃で著しく霊力が低下している。 多少回復はしたが、この後どれだけ回復に専念できるかにもよって、どう動くかは変わってくるだろう…… 今は全快時の二割がいいとこだ」
「さっきの一撃…… 神撃一刀を放てる様になるには、後どの位の回復時間が必要だ?」
「放つだけでも恐らく十分は必要だろう。 万全の破壊力を帯びた状態でなら三十分近くは必要かもしれん。 なにせもう既に短時間で二発も放ってしまったからな」
「そうか……」
流石にアレ相手に三十分なんか、とてもじゃねえがもたねえ!
「大王様。 仮にあんたとリーズレットの二人の最強技を更に限界まで練り上げた状態で二人だけで奴にぶつけた場合…… 『核』までその一撃を届かせ、尚且つ一撃で! 一瞬で消滅させられる自信はありますか?」
「…… 恐らく厳しいだろう…… 『核』自体に届かせ、奴に甚大なダメージを与える事だけならば可能だと断言できるが――」
「だがそれでもあの硬さだ! そして巨大化した事によって奴の体内にある『核』までの距離も考慮するとね」
「あの異常なまでの再生速度を少しでも遅くできる事ができれば、更なる追撃も間に合いどうにかできるかもしれないが、一瞬で消滅させる事はできないと思う」
「ましてやリーズレットが攪乱班に行ってしまったら、それこそ完全に詰むだろうね」
「ですよね……」
大方予想通りの答えが返ってきたといった感じの黒崎。
「じゃあどうする? 僕と変わって修二が代わりにモッフンの所に行ってそのまま攪乱担当に専念する?」
「…… いや…… ちょっと待ってくれ……」
これまでの状況と情報を整理して頭を巡らす黒崎……
ちっ! これだけの面子が揃ってても、こうまで厳しいとはな!
普通に考えれば俺が代わりに行った方が一番良いが、それは大王様とリーズが確実に『災厄』を仕留める事ができるならの話だ……
今の形態のぐの丸の
いや、ダメか? それはつまり、ぐの丸を一定時間! 霊力を溜めるのに専念させる事になる。
セシリア、ケイン、それに霧島とカエラは元々消耗が激しい状態でここに乗り込んできてる…… 流石にそこまで時間は稼げないし、となると残るはリリィのみ……
比較的消耗はうちらの中では少ないほうだが、それでも残りの不利な状況を全て彼女がカバーし切るのは流石に……
くっ! どう動こうとしても、まだ戦力が足りねえか!!
ったく! 元々反則技みてーな存在なくせして、更にバグ技みてーな形態にまでなりやがって! あの『
タチがわりーにも程があんだろ!
苦悩する黒崎……
そんな彼だったが、ここで開戦三日前、アラン戦後の前原や京子とのやり取り……
その時の光景が、彼の脳裏に浮かんでしまう――
* * *
「…… 黒崎さん 一つ確認させてもらってもいいですかな?」
「なんだい?」
「貴方…… 『もう帰ってこない』おつもりですか?」
* * *
「あんたに無理するなって言われても説得力ないわあ!」
「ぐっ!」
「はは! 冗談や! ウチは大丈夫やさかい! そっちこそ! 気ぃつけえや!」
「ああ…… わかってる」
「…… にしても……」
「中々、洒落た事ができる様になったもんやなぁ」
「ん? 何の話だ?」
「このカクテルの事や。 ウチが知らんかったとでも?」
二人が飲んでいるカクテルはネバダ……
ネバダのカクテル言葉を知っていた京子は黒崎をイジりながらも嬉しく想う……
「! さあ…… 何の事だか……」
「テレとるん? 可愛いやっちゃなあ!」
「うるせえ!」
* * *
…… やっぱり『まともなやり方』じゃこの状況を打開できねえか……
…… しかたねえ…… 腹を決めるか……
「―― わるい、リーズ。 やっぱりぐの丸の援護はお前が行ってくれ。 できれば使いたくねえし、上手くいく保証もねえ賭けみてーなもんだが、実は事前に用意しておいた、とっておきの策がある」
「! なに!?」
「! なんだって!?」
「! マジか!?」
「! へえ♪」
「だがそれは正真正銘、最後の手段だ! できれば使いたくねえが、この際仕方ねえ!」
「それに失敗したらそれこそ世界は終わりだ!」
「そしてそれを実行するには、俺もこれ以上消耗するわけにはいかねえんだよ!」
「それから大王様は勿論、リーズ! お前も渾身の一撃を放つだけの力は絶対に残しておいてくれ!」
「それらが全てできて! 初めて成立する策だ!」
「一発分だけでいい! それを残してもどってきてくれるなら、その範囲内での攪乱は好きにやってくれ! それ以上はダメだ! 奴を倒し! 世界を救うためにはな!」
「…… ! シリウス! お前、まさか!」
ここでアルセルシアが黒崎が何をやろうとしているのか『ほぼ』理解する!
「? どういう策か教えてもらってもいいかな?」
「俺も詳細を教えてほしいな」
「僕もだ…… 説明してくれるかな。 黒崎君……」
「…… ああ、わかった」
黒崎は対『災厄』用の『最後の手段』を説明する――
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