第188話 激闘✖️分析✖️回復!!

「ぬうううううううううううん!!!!!」


 ズドオオオオオオオオオオオン!!!!!


 その首元に牙を突き立て、そのまま『災厄』を投げ飛ばすかの様に地に叩きつけるグライプス!


「がはああっ!!!!!」


 そのまま彼は『災厄』の身体を押さえつけたまま、その喉元を引き裂きにかかる!


「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 牙を突き立てたまま自身の首を力づくで横に振り切るグライプス!!



 次の瞬間!



 ブシュウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!!!!


「!!!!っ ぐああああああああ!!!」


『災厄』の喉元から夥しいまでの鮮血が噴き出し! 辺りは血に染まっていく!


「おお! やった! でも――」

「ええ! 『コア』を潰さないと!」


 霧島とカエラの懸念をよそにグライプスは既に次の行動を起こしていた!


 相応の深手を負わせればその傷を再生する為に一瞬『災厄』の動きが止まるか最低でも鈍りはする!!


 グライプスは大きく後ろへ下がりつつ、その口を開け、前方の空間に超高密度の霊力を圧縮する!


 そして地に踏ん張り! その光の光弾を『災厄』に向けて放つグライプス!!!


 ズガアアアアアアアアアアアアン!!!!


「まだまだまだまだあ!!!!」


 当然一発では終わらない!


 それは倒れている『災厄』の身体ごと『核』を木端微塵にするのではないかと思わせる程の破壊力!


 グライプスの光弾が次々と嵐の様に『災厄』へと襲い掛かる!!



 ズガガガガガガガアアアアアアン!!!!



「!!っ 障壁を展開しつつ、セシリアさん達を!」


「! ええ! そうですね!」


 今のうちに先程『災厄』によって吹き飛ばされたセシリアとケインのフォローへと向かう霧島とカエラ!


 黒崎達も既に障壁は展開済みであった。



 そんな中!



「! むっ!」


 瘴気の高まりをいち早く察知したグライプスは攻撃をやめ、自身の周りに強固な障壁を展開する!


 次の瞬間!


 辺りを瘴気による爆発波が『災厄』のいる場所からは発生!!!

 

 辺り一帯が大爆発に襲われる!!!



 その爆発により生じた爆煙によって視界を遮られる一同。


 そこへグライプスは抑えて解放した霊圧によって発生した風圧で爆煙を消し飛ばし、視界を確保する。


 彼の視界の先には、既に半分以上の傷を再生し終えている『災厄』が佇んでいた!!



「…… やはりそう上手くはいかんか……」



 回避される事を懸念して一撃の破壊力よりも速射性と手数を優先し、奴の再生力を消費させつつ、あわよくば隙を見て『核』への直接攻撃をとも思ったが……


「…… 再生力もそうだが、それ以上に再生速度の方が厄介かもしれんな」


 我の最大技…… 滅びの息吹バーストブレスをマックスパワーまで溜めた後、奴にぶつける事ができれば『核』ごと塵と化す事も可能かもしれんが…… 正直それを以ってしても百パーセント確実に滅ぼせるとは言い切れん程の硬さだ。


 というか一発では正直厳しいかもしれん……


 その上、あのスピード……


 躱されるか発動前に潰される可能性の方が高い!


 故に手数で様子を見たがあの再生速度……


 やはり一瞬で決めるしかないか?


 しかしセシリア達だけでは、今の『災厄』を長時間注意を引く事は難しい……


 シリウスや大王達も必死に奴を分析しているが……


 奴等がどういう策を出すかにもよるが、これはどうするか……


 ぬしはどう動く…… シリウス!



 一方、セシリア達はというと……



「ぐっ! 痛ててて……」


「セシリアさん! 大丈夫ですか!?」


「ああ、なんとかな…… 助かったぜ! ありがとな!」


「いえ!」


 セシリアのもとに駆けつけたのはカエラ!


 先程の爆発波からも彼女の障壁によって何とか事無きを得たセシリアであった!


 とはいえ『災厄』によって地に叩きつけられた際、相応のダメージを負い、全身傷だらけになってしまっているのであった。



 …… クッソ痛えが、まあ問題なく動く…… 骨、健…… 内臓も…… まあ多分大丈夫だろ…… よし!


 自身の身体の動作確認をするセシリア!


 どうみても重症だが、弱音を吐いてる場合でもないのもあり、自分で問題なしと判断する!


「セシリアさん!」


 霧島に肩を貸されながら合流しに来たのはケイン!


 彼もまた、相応の深手を負ってしまっていたが、自身の胸に手を当てながら治癒術を施し、移動しながらも回復も測っていた。


「! ケイン! 生きてたか!」


「当たり前です! そんな簡単にくたばれませんよ!」


「よし! 上等だ! にしても――」







「ぐの太郎の奴!!! ここまで強かったのか!?」



「ええ、『災厄』もみたいですが、彼もまた巨大化してもスピードが全く落ちていない…… 流石としか言いようがありませんね」


「ああ、可愛げのねえ奴だが、こういう時は頼りになるぜ!」


「でっ! でもこれじゃあ近付く事もできないですよ!」


「そうなんですよね…… あのサイズであのスピードとパワーで、しかも二人で暴れ回られたらこっちが潰されかねないですし!」


「ええ、下手したらプチって下敷きになりそうです!」


「僕もそれは絶対に嫌です!」


「私もですよ! 多分即死決定でしょうからね! それからそれとは別にもう一つ――」


「えっと…… リリィさんでしたか。 彼女は一体どこへ?」


「ああ、彼女ならあそこです!」


 そう言って空を指すのはケイン!


「!」

「!」

「!」


 なんとリリィは『災厄』とグライプスの遥か上空にて待機していた!


 正確には例の霊的物質のミラーを足場代わりにして上空から『災厄』とグライプスの闘いを分析していたのであった!


 姿だけでなく気配も消されていた為、四人共、暫く彼女の事を見失っていたが、セシリア達と合流しようと移動していた際、ケインだけはリリィの位置を掴んでいたのだ!


 こんな時、リリィならどうするか……


 それを考えながら辺りを見渡していた結果、ケインが四人の中で誰よりも早くリリィを発見する事ができていたのであった!


 そう、本来ならすぐにでもグライプスの援護に向かいたい気持ちで一杯の筈の彼女であったが、今はまだ動くわけにはいかない!


 彼女は自身の感情を押し殺してでも、今は立ち止まって冷静に敵の分析をする事を選んだのだ!


 それ以前にまずは『災厄』のスピードに目を慣らさないといけない!


 そこからさらに『災厄』の攻撃時の癖、回避時、防御時の方向や方法の優先順位、その確率等、極めて冷静かつ的確に見極めようとしていた!


 全てはこの戦いの勝利の為に!


 そして一秒でも早く! グライプスの力となる為に!


 既にある程度だが、『災厄』のスピードにも目が慣れ始めてきているリリィ!



 …… 待ってて! グーちゃん! どうかもう少しだけ! 持ち堪えて!


 彼女が動き出す時も近付いていた!



 そんな中、セシリア達は――



「―― あんな所に!」


「霊子物質の…… 鏡? 先程も使っていましたが――」


「ええ、彼女の武装の一つです。 ああやって足場にしたり霊子銃の跳弾に用いたりします」


「! そんな事もできるんですか!」


「ええ、もっとも、彼女の才能…… いや、もはや異能レベルとも言える、空間把握能力と状況分析能力があってこそ、はじめてその真価を発揮できる代物ですけどね」


「なるほど…… あのスピードだ…… 近くで見ても目で追う事すら難しい。 だったら距離をとって遠くから視野を広くして見る事で少しでも早く目を慣らそうとしてんのか」


「ええ、それと同時に隙あらば『災厄』の動きの癖等も分析しているのでしょう…… 流石です」


「ああ、全くだ。 連携の必要に応じてあの女からも声がかかる事があるかもしれねえが、今は好きにやらせといてやれ」


「はい!」

「わかりました!」


「ケイン! 自分のが終わったらアタシにも治癒術を頼む!」


「わかりました!」


「あ! ケインさんは自分の手当てに専念して下さい! 簡易的なレベルでなら私も治癒術は使えますから!」


「! マジかあんた! 本当助かるぜ! そしたら宜しく頼むよ! カエラ!」


「助かります! カエラさん! 達也さんは少しの間だけ障壁を展開しつつ、『災厄』の注意をお願いします!」


「了解しました!」


「ぐの太郎が粘ってくれてるおかげで、アタシも少しずつだが、あのイカレスピードに目が慣れてきやがった……」


「アタシはタイミングをみて、ぐの太郎の援護に向かう! 皆も可能な限りで宜しく頼む!」


「ええ!」

「はい!」

「了解しました!」


「あのクソ寄生虫野郎が…… 今にみてろ! さっきの一撃の借り! 倍にして返してやんよ!」

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