第168話 運命を変えろ! 大魔術 発動! ①
最後の敵兵生成装置跡――
疲労困憊ながらも何とか一万の敵兵を殲滅し切ったセシリアとケイン!
「はあ、はあ、はあ…… ケイン! 生きてるか!?」
「はあ、はあ…… 当然! こんな奴等に後れをとってる場合ではありませんよ!」
「ああ! 急いで先輩達のところにもどらねえと!」
「ええ! 急ぎましょう!」
身体を引きずりながら恭弥夫妻のもとへと向かうセシリアとケイン……
だが、二人が辿り着いた末にその目に映ったのは、壁に寄りかかって、ぼんやりとした光に包まれ、その姿が透け始めている恭弥とサアラの姿であった。
そう…… まるでその存在が今にも消滅してしまうかの様な異様なその光景にセシリア達は動揺を隠せないでいた。
「これ…… は……」
「なんだよ…… なんなんだよ! これ! 一体なにがどうなってるんだよ!?」
特にセシリアの動揺は激しいものであった。
そんな彼女の大きな声に意識を失っていた恭弥がここで目を覚ます。
「…… あー、やべ…… またちっと寝てたわ……」
「恭弥先輩っ!!!」
泣きながら二人のもとへと座り込んで近付くセシリア!
「全く…… この状態で寝ないで下さいってあれ程言ったでしょう!」
「はは…… わり……」
「本当よ…… 全く…… まぎらわしい真似して……」
心とは裏腹に呆れた様に恭弥に言葉を投げかけるケイン。
自分達二人が揃って動揺したら万策尽きている事が恭弥とサアラに伝わってしまう……
セシリアは性格上、この状況下では動揺は隠し切れない事は、彼女と付き合いの長いケインにはわかりきっていた。
恭弥とサアラには気をしっかり持ってもらわないと困る!
自分だけでも必死に冷静を装って恭弥夫妻に『大丈夫! 絶対に助かるから!』と思い込ませ、何とか解決口を見出そうと頭の中で思考を駆け巡らすケイン!
だが頭の良い彼にはもうわかっていた……
もう…… どうあっても二人を助ける手立てがない事を……
例えマクエルの腕を以ってしても助けるのは不可能であるという事を……
ここまで魂の消失が進行してしまっては恐らくはここに女神様がいたとしても……
それでも! 諦める訳にはいかない! 絶対に!
本来ならセシリア同様泣きつきたい位だがここで冷静さを失うという事は思考力を低下させるという事!
何が何でも! 例えどんな方法でも! 僅かしか可能性がない方法でも! 何でもいい! 本当に手はないか! 必死に考えるケイン!
それでもやはり彼に手立ては思いつかない……
「あーあ…… 私の涙を返して…… ほしいわね」
「だからごめんて…… さっきもそれ聞いて謝ったでしょ……」
「そうだ…… お詫びに…… チューするから…… 機嫌直して♪……」
「後輩の見てる前では…… いや…… 寧ろめちゃくちゃ萌えるわね♪…… けど今は…… 無理…… 身体…… 全然…… 動かない」
「こんな時までイチャイチャしてる場合ですか!」
「そうっすよ! 頼むから今は喋らないでくれ! お願いだからっ!」
「後輩に…… 怒られた」
「あなたの…… せいよ……」
絶望し、泣き崩れるしかないセシリア……
苦悩するケイン……
覚悟を決めている恭弥とサアラ……
そんな四人の後ろで突如! 光り輝く強力な霊力が現れ、その中から二人の人物が姿を現した!
「! 何だ!? あの光は!?」
「これは…… 転移術の光!?」
「!」
「!」
「君達は……」
「零番隊の…… セシリアさんにケイン君!?」
「あっ! 貴方方は! どうしてこちらに!?」
「最高神様! イステリア様も! なんで!?」
そう! 現れたのは最高神! そして女神三姉妹の三女にして、天界最高の術師である女神イステリアであった!
何故ここに二人が現れたのか…… 今はそんな事どうでもいい!
まさに天の助けとでも言わんばかりに、現れた二人に懇願するセシリア!
「でっ! でも助かった! お願いします! 先輩達をっ! 先輩達を助けて下さい! お願いします! お願いします!! 二人共アタシらにとって掛け替えのない大切な人達なんです! どうか! どうかっ!」
イステリアの服にしがみついて必死な様相のセシリア!
ここまで冷静だったケインも僅かでも! それでも唯一の可能性を秘めている天界の神を前にして、抑えていた想いが爆発し、必死に状況を説明して助けを乞う!
「二人共魂魄を燃焼してしまって! 簡単な治癒術しか使えない僕の力ではどうにもならなかったんです! どうか! どうかっ! その御力をお貸し下さい! お願いします!」
「!」
「!」
「ちょっ! ちょっと落ち着いて! 二人共!」
「むう…… あまりにも急激かつ不自然な気の乱れを感じたから、まさかとは思ったが……」
やはり…… というかそれしかないと予想していた、だけども決して当たってほしくはなかった最悪の予想……
状況を理解した最高神とイステリア……
そして二人が動き出す!
「事情はわかった! イステリア!」
「はい! 父上!」
セシリアとケインを下がらせ恭弥とサアラの前に出る二人。
そして膝をついた状態で最高神は恭弥に、イステリアはサアラに手を当て、治癒の力を送りながらそれと同時に二人の霊力、そして魂魄の様子を探り始める――
のであったが……
「!!っ これ…… はっ!」
「むうううう!! まさか…… これ程までに!」
「イステリア様?」
「最高神様?」
言葉を失い、苦悶の表情をうかべる最高神とイステリア……
恭弥とサアラに手を当てたまま、治癒の力を送るのを止めてしまう最高神とイステリア……
そしてそれが全ての答えを表していた……
そんな二人を見て絶望のどん底に落とされた表情で…… それでも! それを認めたくなくて必死に訴えるセシリアとケイン!
「どっ どうしたんすか? 早く…… 早く! 先輩達に治癒術を!!」
「イステリア様! 最高神様! お願いします! どうか! どうかお二人をっ!」
「……」
「……」
二人の訴えに何も返せず、歯を食いしばりながら自分達の無力さを呪う最高神とイステリア……
「じょっ…… 冗談やめて下さいよ…… なんとかなりますよね…… 副長以上の治癒術を持ってる女神様と最高神様なら……」
「なあ! お願いしますよ! 二人を…… 二人を助けて…… 下さい…… お願いだからぁ……」
「くっ! 恭弥先輩…… サアラ先輩……」
大粒の涙を流しながら、その絶望で両肘を地につけ、顔を伏せてしまうセシリア……
ケインも立ったまま涙を流し、その握りしめた両の拳は何もできない自分への無力さゆえの悔しさによって血が滴り落ちていた……
だがそんな中!
最高神が『ある覚悟』を決め、最期の力を使う決意をする……
「…… イステリア。 後の事は頼む……」
「! 父上! まさかっ! いけません! 流石にそれはっ!」
父が何をしようとしているのか……
そしてその結果、何が起こるのか理解していたイステリアは必死に父を止める!
ああ、どうすれば……
私と父上でも、どうにもならないなんて!
これでは本当に…… もう……
いえ…… あるいは『あの子』なら、もしかしたら……
でも…… それは……
苦悩するイステリア。
そんな彼女の後ろに!
先程と同じ様に転移術の光がまたもや大きく輝き出し! そして現れる!
その光の中にいる人物は、ゆっくりとこちらへと歩み寄り、その姿を露わにした。
「お二人共お下がり下さい!」
「!」
「!」
「!」
「!」
「おお! 君は!」
「レっ! レティちゃん!?」
「お久しぶりです。 最高神様。 それに
「ですが、ここはどうか
現れたのは、必要分の魔力を補給し終え、覚悟と決意をその瞳に宿した『
彼女の出現が、恭弥とサアラの運命に何をもたらすのか……
『創まりの魔女』 その禁術にして最大最期の大魔術が今! 行われようとしていた……
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