第167話 立て直し!
敵軍を退け、態勢の立て直しにかかる天界治安部、そして犬狼部隊の各面々――
そのうちの一人、犬狼 野犬部隊のリーダー ジャンも指示をとばす!
「被害状況を確認しろ! 動ける者は負傷者の救護に回れ!」
「敵軍を潰したと言っても他エリアからこっちに向かってきている敵兵もそれなりにいるらしい!」
「戦闘不能者は治療区画へ急いで運べ! 父っつぁんとこの部隊、治療士とも上手く連携をとるんだ!」
「おう!」
圧倒的な戦闘能力で応援に駆け付けた犬狼部隊だったが、当然あれ程の数の不利を乗り越えるのに無傷な筈もなく、相応の被害も出ていた。
それぞれが急いで被害状況を確認する中、狼部隊のリーダー シェリーがジャンと合流を果たす!
「ジャン!」
「! シェリーか! どうやらそっちも片付いたみたいだな!」
「ええ! 今は負傷者達をゴールマンさんと協力してフォローしているところよ!」
「敵の練度自体は大した事なかったから、恐らく私の隊で死者は出てないと思うけど、流石にあの数が相手だったからね――」
「ああ! 重傷者はそれなりにはいるだろう! まだ具体的な数の被害はわからんが、恐らく俺の部隊も似た様なもんだろうな」
「いつ敵の第二波が来るかわからん! 急いで態勢を立て直すぞ! それから――」
「お二人共! こちらにいらっしゃいましたか!」
「! 父っつぁん!」
「ゴールマンさん!」
ここでゴールマン司令も合流!
三〇名程、彼の後ろに男女入り交じっての治療士達が付いている。
「そっちもやったみたいだな! 流石父っつぁんとこの部隊だ!」
「いえ! お二人の部隊の練度には程遠いですよ!」
「ふふ♪ 謙遜しなくてもいいわよ♪」
「はは! それはそうとこちらも今、被害状況の確認、負傷者のケアを行っているところです!」
「シェリー殿の部隊には既に治療士を送りましたが――」
「諸君ら! 頼む!」
「はい! 司令!」
ゴールマン司令の呼びかけに、彼の後ろに付いていた治療士達が返事をする!
「彼等は皆、治療士です! 上手く使ってやってください!」
「怪我人の救護はお任せを! よろしくお願いします! ジャン殿!」
「おお! 治療士の連中か! すげえ助かるぜ! ありがとな! 恩に着るぜ!」
「いえ! そんな! これ位当然です!」
「貴方方が援軍に来てくれなかったらどうなってたか…… せめてこれ位はさせて下さい!」
「あんたら…… ありがとな!」
治療士達の心遣いに感謝の念を抱くジャン。
「よし! そしたら…… あっ! ミゲル! ロン!」
「! ジャン!」
「どうした!?」
近くを見渡し、慌ただしく走り回っていた二人の若い部下を見つけて声をかけるジャン!
下界の犬種でいったらトライカラーのビーグルのミゲル、黒毛の紀州犬のロンであった。
「父っつぁんとこの治療士の方々だ! 上手く連携して負傷者の治療と搬送を頼む!」
「! そうか! わかったぜ!」
「そういう事なら頼むぜ! あんたら! しっかり働いてくれよな!」
「急ぐぞ! こっちは怪我人が大勢いるんだ! もたもたすんな! 早くしろ!」
仲間の事が気がかりで、つい言葉を荒げてしまうジャンの部下達。
そしてそんな彼等の態度にジャンがブチ切れ! その牙を向けてしまう!
「この馬鹿野郎共があ!!!」
ジャンはミゲルの首に噛みつき、そのままロウの方へと振り回し彼にミゲルを叩きつけ二人を吹き飛ばす!
「! ぎゃんっ!!」
「!!っ 痛っで! 何すんだジャン!」
「何すんだ! じゃねえ! このバカタレ共が! どんな口のききかただ! それが率先して負傷者の手当てを名乗り出てくれた方々に対する態度か! 失礼だろ! しばき倒すぞ! テメエら!」
大声を上げ、二人を怒鳴りつけ! 激昂するジャン!
そんな彼に慌てて頭を下げるミゲルとロウ。
「ひっ! すっ! すまねえ! ジャン!」
「負傷者が思ってたより多くて気がたってたかもしれねえ…… 本当にすまん!」
「気持ちはわかるが、皆! その気持ちは同じだ! それに我等は治療術は使えん! 自分とこの隊だって大変なのに、それでも父っつぁんが! 限られた人数の治療士達をわざわざ! 俺達の為に! よこしてくれたんだぞ! 必要最低限の礼節はわきまえろ! テメエら!」
「わっ! 悪かったって!」
「確かに俺らが悪かったよ! ジャン!」
「俺に謝ってどうすんだ! こちらの方々に頭を下げんだよ!!」
怒りが収まらないジャンに、まあまあと彼の気を静めようとする周りの者達。
といっても、中々収まりがつかないジャンであったが……
「わっ! わかってるよ!」
「そんなに怒んねえでくれよ! ジャン! ちゃんと反省してるんだから!」
これ以上彼を怒らすとまずいという気持ちと、確かにさっきは失礼極まりない態度をとってしまったという反省の念で、治療士達に頭を下げ、素直に謝罪するミゲルとロウ。
「ジャンの言う通りだ。 今のは俺達が悪かった…… 本当に申し訳ねえ……」
「仲間達が傷ついて気がたってたんだ…… 勘弁してくれ」
「あんた達だって大変なのに理不尽な態度をとっちまった…… どうか許してほしい」
「ああ! いえいえ! そんな! どうかお気になさらず!」
ここでジャンも部下達の非礼を詫びる為に頭を下げる。
「すまない、皆。 誓って悪い奴等じゃねえんだが、何分まだ若くて口のききかたがなってねえんだ。 俺の教育不足でもある。 どうか許してやってほしい」
「ジャン殿まで!」
「どうか頭を上げて下さい! 自分達は気にしてませんから!」
「大勢の負傷者が出ています…… 気持ちはわかりますよ」
「それに我等治療士は戦闘ができない分、こういう時にコキ使ってもらわないとね!」
「皆で! 協力して! 頑張っていきましょう!」
「あんたら……」
「本当にすまなかった! どうか力を貸してくれ!」
「勿論!」
しっかりと反省して、そして落ち着きを取りもどしたミゲルとロウ。
「ありがとうな、皆! どうかよろしく頼む!」
「任せて下さい! ジャン殿!」
「まあ、口の悪さはあんたの影響でしょうからね。 大将のあんたがそんなだから、皆あんたに似てくるのよ!」
「ぐっ!」
痛い所をついてくるシェリーの指摘に言葉を詰まらせるジャン。
「あ! それは否定できねえな!」
「それにジャンはすぐ怒るからなあ~」
そしてあれ程叱られた後だというのに、シェリーに便乗してジャンをイジるミゲルとロウ。
「あぁ!? 何か言ったか、テメエら……」
ギンっと二人を睨みつけるジャン!
「!!っ さっ! さあて!!! それじゃあ行きますかね!」
「そっ! そうだな! そうしよう! こっちだ! ついてきてくれ!」
「ははっ! わかりました!」
「それでは我々はここで! 司令! 何かあったら通信で!」
「うむ。 よろしく頼む!」
こうしてミゲルとロウは治療士達『二十八名』と共に、負傷者の救護にあたりにこの場を離れていった!
「ったく! 本当に反省してるのかね。 あいつらは…… それに俺をイジるとは中々いい度胸をしているな…… やっぱ後でシメとくか!」
「ふふ♪ やめときなさい♪ ちゃんと愛されてるじゃない♪」
シェリーの言う通り、気性こそ荒いものの一本しっかりと芯の通った漢気の持ち主――
そして何より厳しい所もあるが、仲間想いのジャンの事を嫌う者等、実際一人もいないのは確かであった。
「ったく! それはそうと父っつぁん、シェリーも――」
「閻魔の城とこのエリアの直線状…… まだ城寄りみてーだから距離はあるが、他の敵部隊がこっちへ向かってきているみてーだ」
「匂いと気配で何となくの数はわかるが、一応何人か偵察兵を出しておこうと思うんだが……」
「ええ、私もそうしようと思っていました! そちらは我が隊の方で数名向かわせますのでご安心を!」
「ごめんなさいねゴールマンさん。 私達、通信機も思念波も使えないから、どうしてもこの手の事は要領が悪くなっちゃうわ」
「そうなんだよなぁ。 代わりといってはなんだが、護衛用にウチらから何人か手練れを貸し出そうか?」
「いえ! それには及びません! あくまで偵察ですし、それに数が多いと返って目立ちますからね」
「それもそうね」
「確かに。 それでは我等は救護と態勢の立て直しに専念するか」
「ええ! そうしましょう! それからここに残っている『二人』の治療士ですが、お二人に一名ずつお付けいたします。 治療もそうですが、通信を使って私との直接の伝令役として上手く使ってやってください!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「おお! それで二人だけ残っててくれてたのか! そいつは助かるぜ!」
「何から何までありがとう、ゴールマンさん。 そうしたらこまめに連絡とり合って連携していきましょう!」
「ええ! ではまた後程!」
「おお!」
「ええ!」
こうして駅エリアは陣形を立て直しつつ、負傷者の救護も迅速かつ的確に行なっていくのであった。
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