第166話 現れる『災厄』!!
禍々しい瘴気の渦の中、アルテミス『だった』その姿が大きく変貌を遂げようとしていた。
そんな中! 黒崎は今のうちに、かつての力を纏った状態であるシリウス形態へと姿を変え、臨戦態勢に切り替える!
「はああああああああああ!」
凄まじい霊圧と
奴が完全に姿を現す前に、視線は奴に向けたまま、小声で打ち合わせる黒崎とアルセルシア。
「シリウス…… 姉者との久々の再会だったからさっきは私もシリウス呼びにもどしてたが、面倒だからこの戦いが終わるまでこれで通させてもらうぞ」
「ああ、やりやすい方で頼む。 呼び名の選択のせいでいちいち反応が遅れてたらこいつ相手じゃ命はねえだろうからな」
「うむ。 それでシリウス……」
「お前がその力を纏っていられるのはどれ位の時間だ?」
「ああ、アラン戦で初めてシリウスだった頃の力を纏う形で発動した時は、精々五分が限度だったが、あれから三日…… 慣らして特訓したおかげで連続使用三〇分はいけるぜ。 ちょこちょこ解除して、もうちょい負担減らせば、すぐにまたシリウス形態になれるようになるしな」
「それにこの大戦でそこら中に発生している強力な闘気、霊圧同士による激しいぶつかり合い……」
「強力極まりない程の戦いの…… 闘争の気配、オーラが混じった霊圧に刺激されて、黒崎としての魂魄も影響を受け、馴染んできたおかげかその状態でもそれなりには力を増してきている様だぜ」
「それは嬉しい誤算だな。 元々シリウスの力だけでなく、黒崎としても才能があり、修羅場を潜り抜けてきた末に身についていた恩恵か」
「三〇分あれば十分! というかアレ相手に長丁場になると恐らく世界そのものがもたん!」
「ああ! ソッコーでケリをつける心構えでいかねえとな!」
「アルセルシア…… そういうあんたは十分なレベルまでの回復までに後どの位かかりそうなんだ?」
「全快…… は恐らくもうこの戦いの中では無理だ…… が! とりあえず奴と戦えるだけの体力だけなら、後五分程で取りもどせるだろう」
「それまで…… お前一人で時間を稼げるか?」
「! やれやれ…… きびしー注文をさらっとまあ言ってくれるねぇ!」
「だが了解だ! それでもなるべく急いでくれよ!」
「ああ、わかってる!」
「シリウス…… 奴の面倒な所は、パワー、スピードもそうだが、ある意味それ以上に厄介なのは再生力は勿論の事、それ以前に立ちはだかる『異常なまでの頑丈』さだ!」
「以前の大戦でも私と姉者が奴とやり合った際、単純な力は我等女神一人分とさして変わらない位か少し劣る位だった」
「だがとにかく馬鹿みたいに固い上に不死身に近い再生能力も加わって、私と姉者が二人がかりでかかり、隙を作って大技をかましたり、それでも足りなかったからレオンが奴を引きつけ、その隙に私の霊力を姉者に渡して
「だがそれでも奴を倒しきれなかった……」
「恐らくお前の全力を込めた一撃でも、奴の
「加えて姉者も言った通り、今回は母体が女神である以上、そのパワー! スピードは前大戦以上! 我等の想像のさらに上をいっているだろう」
「だからまず! お前はその全神経を集中して! しばらくは『回避』に専念しろ!」
「私と姉者の最後の一撃も目で追えてた位だ! お前なら奴のスピードに目が慣れれば回避だけでなく、応戦も可能になるだろう」
「目が慣れた後、足止め程度でもかまわん! 奴に攻撃も繰り出しながら可能なら何とか核の場所も突き止めろ!」
「その後は私が必殺の一撃で仕留める! それまで何とか耐えてみせろ!」
「消極的過ぎて自分の非力さ加減に悲しくなってくるが、まあわかったぜ」
「ちなみに核以外に奴の弱点とかねえのかよ?」
「いや…… あの火力の前では弱点と言える程の物なのかはわからんが…… あるにはある」
「!! マジか!?」
「ああ」
「知っての通り、奴そのものは宿主に寄生してその爆大な瘴気によって宿主の身体と融合、その身体を改造、主の闘気とも混じり合わせる事で身体能力を激的に向上させる」
「パワー、スピード、諸々の戦闘能力は元の宿主のそれより遥かに強化されるが、実は奴自身の戦闘『技術』は大した事ないんだ」
「!! なんだって!? そいつはつまり――」
「ああ、奴は基本その
「ましてや今回は姉者の身体に寄生しているんだ。 圧倒的な力を手にした分、その傾向はより強いかもしれん」
「つまりは脳筋の馬鹿という事だ。 まあそれでもそんなもの関係ないと言わんばかりに火力が桁違い過ぎるから手を焼くのだがな……」
「だが言い換えると――」
「そこが大きな狙い目となってくるだろうな」
「…… なるほどね。 そいつは良い事を聞いたぜ!」
「お前の得意分野じゃないのか? 馬鹿を
「人聞きの悪い言い方をするな! せめて戦略とか
「少しはやり様は出てきたかな」
相手の攻略法を聞き、僅かながらにも何とか渡り合える可能性を見出し、その左頬に汗を垂らし緊張しながらも、笑みをこぼす黒崎……
「まあ、精々踏ん張ってみますかね」
「それにあんたの依頼もまだ『半分』しか達成してねえしな」
「! ふっ なるほどな…… そういえばそうだったな」
「よし! 頼んだぞ!」
「死ぬなよ…… シリウス!」
「ああ! ていうか、一応もう既に黒崎としての魂魄体なんだから、死んでる身なんだがな……」
「この状態でさらに死ぬと魂魄ごと消えちまうし……」
「流石にこれ以上死んだら
「まあ、精々気張らせてもらうぜ!」
「ああ! それでいい!」
「! 来るぞ!」
「! おう!」
二人の目の前の黒い渦が収束していく……
作戦会議が終わり、遂にその姿を現すは全ての元凶……
真っ黒な瘴気で覆いつくされたアルテミスの姿……
体格はさして変わらない――
だがその顔は禍々しい程の邪悪な気配を漂わせ、頬には血管や神経の様な物が多数浮き出て、先程までの美しいアルテミスの顔とは色々な意味で対極にあたるその形相……
そして何より圧倒的なまでの瘴気と殺意をその身に静かに纏いながら、その怪物は口を開く――
「ふう…… 表に顕現できたのはいつ振りになるだろうか……」
「ようやく…… あの忌々しい女から解放されたというわけか」
「もっとも…… その愚妹とオマケみたいなものがまだ我の前で息をしているが……」
二人に視線を向けるは『災厄』!
「久しぶりだな、アルセルシア…… 姉の最期を看取った気分はどんな気分だ?」
「まあ心配せずともすぐに姉の後を追わせてやる…… この身体が完全に手に入った以上! いくらお前といえども我にとっては、もはやとるに足らんアリ同然にしか過ぎぬ」
「じわじわと貴様を嬲りつくし! ついでに服も引き裂き! たっぷりと蹂躙した後で始末し! その無様な姿を天界に巣食うゴミ共に晒してくれようぞ!」
「そうして我に歯向かった連中全てを! そして世界を! 恐怖のどん底に叩き落とした後で天界も下界も我の支配下においてくれるわ!」
「そして! 我こそが新世界の支配者! 神となってやるのだ!」
「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
遂に顕現できた喜びと圧倒的なパワーを手に入れた自信から、アルセルシア達を露骨に見下し! 挑発する『災厄』!
「ふっ 随分と好き勝手に言ってくれるな」
「私相手にそんなプレイができる奴がいるのなら、寧ろ会ってみたい気もしなくはないのだが――」
「悪いが貴様は毛程も私のタイプではないのでな…… 死体役は自分でやれ」
アルセルシアは冷静にその挑発を躱し、そして返す。
そして黒崎が前に出る。
「やっとお目にかかれたか」
「だがアルセルシアの前に、まずはこの俺に話を通してもらおうか!」
「ふん…… 話に聞いた
「それなり程度にはやる様だが、我の前では貴様如き、無に等しいわ」
「まあいい…… その女の前でお前を嬲るのもさぞかし愉快な気分になりそうだしな」
「そうかよ。 まあやれるものならやってみな」
「生憎、ルールを破って勝手に道端に放置されてそうな不燃ゴミみたいな奴にやられてやる程、俺はお人好しじゃねえがな」
「なんだと……」
「貴様…… 誰に向かって吐いている……」
「誰って…… そりゃあ目の前にいる自称神様気取りのゴミクズ野郎様だろ?」
「いや、それじゃあゴミに対して失礼か」
挑発し返して奴の隙を誘いつつ、余裕を見せた表情で全方位最大レベルで警戒していく黒崎!
髪の毛一本一本! 毛先の先の先まで神経を集中している!
その上で、奴の一挙手一投足も、悟られぬ様に逃さず観察するのも
戦いは既に始まっているのだ!
そして彼の挑発に怒りを露わにし始める『災厄』!
「…… いいだろう…… そんなに早死にしたいのならば、今すぐに殺してやろう!」
「へっ 上等だ……」
「やってみろよ…… やれるもんならな!」
黒崎VS『災厄』!!
遂にその火蓋がきっておとされる!
そしてその同時刻――
最後の敵兵生成装置跡 その戦場――
「はあ、はあ、はあ…… どうだっ!!!」
「ぐっ! はあ、はあ…… ま、ざっとこんなもんですね!」
無数にも見える敵の屍の山!
血塗れになりながらも、その上に立つは二人の若き勇敢な戦士!
セシリア・ハーレント! そしてケイン・マグナス!
セシリア、ケイン組――
一万の敵兵を完全撃破!!
同じく
「ひいいいい! 待っ! 待ってくれ! 許し――」
「ぎゃあああああああああ!!!」
敵の命乞いを無視して、一切の慈悲もなくその喉元を噛み切るジャン!
敵の喉元から激しく鮮血が噴き出る!
ぺっと相手の喉肉を吐き捨てるジャン!
「ふん! 命乞いとは戦士の風上にもおけん奴だ!」
「そう言って貴様らはどれだけ罪もない者達をその手にかけてきた!」
「因果応報…… 誰かを殺すならテメーも殺される覚悟を持て」
「それができない奴は最初から戦場に出てくるんじゃねえよ! このヒヨッコが!!」
仲間を脅かし、罪もない弱者を痛ぶる敵に対しては一切の情けもかけずに葬る――
ジャンもまた、一流の戦士なのであった。
「ったく、数だけは一丁前だったな! 手間取らせやがって!」
そう言って周囲を見渡しながら周りの気配も探るジャン。
「どうやら
「ようし! 野郎共! 景気づけだ! 勝ち名乗りを上げるぞ!」
「おおおう!!」
「ウオオオーーーーーーーーーーーーーン!!!!」
ジャン達の猛々しい勝ち名乗りは周囲に大きく響き渡り、離れたポイントで戦っていた狼部隊のリーダー格 北極狼のシェリーにもしっかりと届き、彼等の勝利を確信する!
「! ふふ! 丁度向こうも片付いたみたいね!」
「貴方達!」
「はい!」
「ウオオオーーーーーーーーーーーーーン!!!!」
ジャン達に負けじとこちらも豪快に勝ち名乗りを上げる!
そして――
同じくジャンとシェリーと共に、この駅エリアの指揮を執っていたゴールマン司令。
そしてその部下達も、周囲の敵を全て殲滅し終えたところであった!
「司令! やりましたね!」
「ああ! まあ他のエリアからこちらへ進軍してきている敵兵達もいるとの連絡は受けたが、すぐには来るまい」
「今はひとまずこの勝利の喜びを皆で分かち合おう!」
「皆! 我等の勝利だーーーーー!!!!」
「おおおおおおおおーーーーーー!!!!」
駅エリアの戦い――
天界治安部・犬狼部隊混成軍 勝利!!!
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