第146話 塔の前の死闘! ③

「なるほど…… 才能に溺れただけの甘いお坊ちゃんかと思っていたが、凄まじい程の潜在能力だな」


「やはり血は争えん」


「ガラン・ズール……」


 折れた右腕を抑えながら歩み寄ってくるガラン・ズール。


 どうやら戦闘続行の意志は見受けられないが、こちらは負傷したカエラを抱えている状態…… 


 念の為、警戒を怠らない様にする霧島……


「僕は僕ですよ…… そして恭弥さんおじいちゃん恭弥さんおじいちゃんです」


「未熟な僕が今、こうして生き残れたのはカエラさん仲間が助けてくれたから…… 一人では道を見失いかけても、喝を入れて引き戻してくれる仲間がいたから、あなた方にも結果的にですが勝つ事ができた……」


「霧島君……」


「そしてそれは多分、恭弥さんあの人にも言える事です」


「あの人を見てればわかる…… 確かに常軌を逸した戦闘能力で、いつも比べられる僕をヘコましてくれましたが、あの人の強さはそんな表面的なものではなく、もっと別のベクトルに存在する……」


「そういった大切なものを積み重ねてきたから、あの人はあの強さの域に達しているんだと僕は思いますよ」


「今なら少しわかる気がします…… 本物の強さってやつは、たった一人では得られないって事が……」


「とはいえ、流石にこんな勝ち方は全然しっくりこないですけどね」


「自分の弱さを、これでもかという位に露呈してしまいましたから……」


 自身の不甲斐なさに表情を曇らせる霧島だったが、それでもすぐにその表情かおを消し、この結果を受け入れ、その瞳はしっかりと未来へと向いていた!


「それでも! 前へ進む為に! 今は甘んじてこの結果を受け入れます!」


「天界を…… 世界を…… そしてそこに住まう大切な者達を守る為に!」


「ええ…… そうですね!」


「…… なるほどな……」


「はっ! 甘い…… ねえ! こんな…… 甘ったれ共に…… がはっ! やられちまう…… なんてねえ…… はあ、はあ……」


 仰向けで倒れているイリア…… 両手を破壊され、致命傷に近いレベルの傷も負っていた事もあり、彼女も戦闘続行は不可能な状態であった。


「解決屋をぶち殺すどころか…… その取り巻きに…… ぐぅっ! はあ、…… やられちまうなんて…… 我ながらホントに情けないねえ……」




「別に…… 取り巻きではないですが…… ぐっ!」


「随分と…… はあ、はあ…… 黒崎さんに…… こだわっているみたいですね」


「カエラさん! 今は喋らない方がっ!」


「大…… 丈夫です。 霧島君……」


「アラン・カーレントへの仇討ちもあったみたいですが…… 先程から仲間であるガランへの気遣いも見受けられましたし……」


「ただ、それなら私達にも同等の殺意を向けられるはず…… けどあなたの黒崎さんに対するこだわりは『それ以外の部分』も感じられます……」


「それは何故ですか?」


「……」


「こんな事を聞くのは失礼でしょうが…… 『あなたが黒崎さんと似た様な過去』をお持ちの事と関係あるのですか?」


「! まあ…… 当然調べているか。 アタシらの過去も……」


「まあ、いいか……」


「どうせこの傷じゃ助からない…… 最期に退屈しのぎにつまんねえ昔話でもしてやるよ……」


 そう言って彼女は自身の過去を語り始める……

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