第134話 信じる心
大王が更に霊圧を解放していく!
そのあまりに強大な力の余波により、閻魔の城がいくつかのエリアで崩れ始め、天界中が大地震にでも見舞われているかの様に揺れが大きくなっていく!
それに伴い、天界中が敵味方、両陣営共に大混乱に陥っていた!
閻魔の城 正門口――
現在、こちらには先代大王夫妻が移動してきて、敵の大軍を無双している!
そんな中、息子が放った強大な霊圧から、彼が城にもどってきている事、そして感情を爆発させて周りが視えていない事を理解する!
「これは…… あなた!」
「ああ! あの…… 馬鹿息子が!」
同じく管制室――
「れっ! 霊圧測定値! メーターが振り切れ損傷しました!! 測定不能です!!」
「通信機器含め、各機器、強力な磁場が発生した事により操作不能! これより復旧作業にかかりますが…… これではいつ復旧できるか!」
管制室も大混乱に陥っていた!
大王の放った霊圧は辺りの磁場をも狂わせ、各機器が損傷、もしくは上手く作動しない事態に陥っていたのだ!
この場を任されているキール司令だったが、ここは女神イステリアに指示を仰ぐ。
「イステリア様!」
「落ち着きなさい」
「! しかし!」
まさかここまで極めているとは……
ただその
激情に駆られたままだと、身を滅ぼすのは貴方の方ですよ……
そして、暴れている場所は中層区画の屋外……
位置がこうまで中途半端だと結界も張りづらいですね……
様子を見るしかありませんか……
「今は
「その通りだ。 皆の者、可能な限り復旧を急いでくれ。 特に通信機器を優先でな」
「! 最高神様! はっ! かしこまりました!」
天国エリア――
「! くっ! なんだあ! このイカれた霊圧は!」
「この気は…… 大王様!?」
地面が割れはじめ、その大きな揺れと強大な霊圧に驚きを隠せない零番隊 セシリア・ハーレント!
そこにノイズだらけで途切れ途切れだが、どこからか彼女の元に通信が入る!
「セ……シリ…… ア殿!」
「この声…… バルクス司令か!」
「ただいま発…… した桁違いの霊圧……せいで妙な磁場が…… 一旦下が…… 」
なんとなくだが言いたい事が伝わって状況を理解したセシリア!
「戦車隊も一旦下がれ! 通信機器含め各機器の機能が復旧したら即連絡! 遊撃部隊! 敵を駆逐しつつ、援護してやれ!」
「はっ! はい!」
天界 地下エリア 緊急避難区域空間――
「おいおい! 冗談じゃねえぞ! 一体全体どこのバカタレだ! 大王の旦那をブチ切れさしやがったのは!?」
怒鳴り散らすは零番隊きっての功夫使い バゼック・ヴァンドール!
「ったく! 普段温厚な奴程、一度キレると手が付けれねえって言うが、いくらなんでも限度があんだろ!」
くそっ! 下手すりゃ、このまま両陣営共、天界ごと詰んじまうぞ!
勘弁してくれよ! 大王の旦那! しっかりしてくれ!
周りの連中も動揺してるな! 無理もねえが……
今は旦那を信じるしかねえか!
「オメエらああ! ここが正念場だぞ! 各機器の復旧はこのエリアじゃできねえ! そいつは他のエリアの連中がどうにかする! 俺らは俺らのやれる事をやるだけだ!」
「気張っていけええええええ!」
「! おおおおおおおおおおお!」
周りの仲間達に檄を飛ばし士気を上げるバゼック!
そしてそのまま敵の大型魔獣の群れに一人突っ込み、あっという間に蹴散らしていく!
「おうううらあああああああ!」
「! ぎゃあああああああああ!」
「オラオラ、どうしたあ! 面倒くせえから、もっとまとめてかかってこいやあ!」
「おお! 流石バゼックさん!」
「俺達も続けえ~!」
「おおおおお~~~~~~!」
「おおおおお~~~~~~!」
「おおおおお~~~~~~!」
「皆の者、落ち着け! 各機器の復旧は処理班が全力を尽くして当たってくれている! その間は我が思念波を通して伝達事項を送受信する! 一度に思念を受けるのは限界がある故、各隊のリーダー、もしくは司令が伝達係を請け負え!」
「了解しました!」
指示をとばすは神獣 グライプス!
「リリィよ! 我はしばらくそちらに専念する! しばしこの隊の指揮と敵の討伐を頼むぞ!」
「はい! グーちゃん!」
剣神と雷帝との決戦場跡――
激闘の傷を癒す為、仮眠をとっていたリーズレットだったが、常軌を逸したその霊圧を感じとり、驚いて一気に目を覚ます!
「!!!!!!!!」
「この霊圧は…… 兄上!」
「起きたか! リーズレット! 何かとんでもねえ事になってんぞ!」
「レオン!」
「これは…… 兄上が…… 怒っている?」
兄上がここまで激情に駆られるなんて…… ! まさかエレインさんの身に何か!? いや、まさか…… でも……
「当代の霊圧か…… 相当な使い手だとはわかっていたつもりだったが、まさかこれ程までとは! 下手すりゃお前さん以上かもな……」
「ああ…… 兄上が『こうなったら』僕でも止められる自信はないよ」
「これは大分まずいんじゃねえか? どうする? 一旦もどるか?」
「…… いや…… その必要はない」
「なに?」
「僕の兄上はね…… 最高に強い漢なんだよ♪ 剣だけでなく、その心の在り方もね……」
「兄上は絶対に、その心を修羅に堕としたりなんかしない…… 負けたりなんかしない…… だから僕らは僕らのやるべきをするべきだ!」
「リーズレット……」
「大丈夫だよ。 レオン……」
黒き塔へ走行中の解決屋チーム――
いきなり発生した大地震に思わず車を止める黒崎!
「っぶねえ! この霊圧は…… まさか!」
「!!!! こっ! これは一体!?」
「ななななななんですか! この霊圧!?」
突如発生した、あまりに強大な霊圧に混乱する霧島とカエラ!
「…… 大王様だ」
「えっ!?」
「大王様!?」
「ああ…… 間違いねえ」
城から? 何で大王様がそこに? 一体何が…… ! まさか! いや、エレインがそう簡単にやられるとは思えねえが、しかし!
…… くっ! どうする? 今からもどる手段はねえ! 通信は…… くそ! やっぱ使えねえか!
しばし悩む黒崎。 だが、彼の脳裏にかつて自身がシリウスだった頃、まだ子供だった大王と話した事が頭をよぎる……
* * *
「僕はこう見えても、どうやらかなり欲張りな性格らしい」
「もしそういった時が本当に来て、その選択を迫られたら……」
「…… この答えじゃ納得できませんかね?」
* * *
…… へっ…… そうでしたね。 大王様……
「…… 時間が惜しい…… 行くぞ」
「え!」
「行くって! これ、ほっといて大丈夫なやつなんですか! この霊圧…… 下手したら天国エリアも地獄エリアも、ふきとばしかねない様な霊圧ですよ!」
「いや、それどころじゃねえよ。 天界どころか世界そのものを消し去っちまう事すらやりかねない程のパワーだ」
「まあ『このまま』いったら世界は終わるかもな……」
冷静にそう言いながら、車を走らせ始める黒崎。
「! だったら!」
「一度、閻魔の城に連絡を!」
「通信機が上手く使えねえ…… 恐らくこの霊圧の余波で磁場でも狂ってんだろ…… 大王様が落ち着くまで、今のウチらが連絡をとるのは不可能だ」
「そんな!」
「どっ! どうすれば!」
「ったく、お前ら……」
「少しは
「お前らの知ってる閻魔大王ってのは、どんな漢だよ」
「!」
「!」
「あの人なら大丈夫だよ」
「閻魔大王の座を継ぐっていう事は、単純な強さだけが求められるわけじゃねえんだよ」
「剣だけでなく、その心の強さも…… そしていろんなモンを背負う覚悟が必要になんだよ」
「少なくとも、その覚悟の部分はあの人はガキの頃からとっくにできてる」
「だから大丈夫だよ」
「なんなら有り金、全部賭けたってかまわねえぜ」
「あの漢は……」
そして時を同じくリーズレットもレオンに同様の内容を話していた。
「兄上は……」
「絶対に己に負けたりなんかしねえよ!」
「絶対に己に負けたりなんかしないよ♪」
「だからウチらはウチらの役割を果たすだけだ」
「黒崎さん……」
「黒崎さん……」
「…… そうですよね! 僕らは僕らの!」
「ええ! やるべき事を果たすだけですね!」
「そういう事だ! ちと走りずれえが、こっからはまたとばすし揺れるからしっかりつかまっとけ! お前ら!」
「はい!」
「はい!」
同じくリーズレット達も……
「…… そうかい…… あんたがそう言うなら間違いねえか! じゃあ、俺らもこのまま塔へと行くか! 丁度三十分経ったし!」
「いや…… そうしたいとこだけど、ちょっと寄り道していくよ♪ 相手は女神殿とそこに巣食う『災厄』だ。 少し準備しないと」
「準備だと?」
「ああ。 マクエルは城にいるから頼れない…… ここは『彼女』に…… うん! 丁度彼女がいる拠点も近い! 何とかなるかな♪」
ある人物がいる筈の拠点……
そこのその人物の気を探り当て、場所を確認したリーズレット。
「準備? それに彼女って誰の事だ? 言っておくが、あまり時間はとれねえぞ!」
「わかってる♪ けど此度のラスボスに立ち向かうには、必要最低限は体力を取りもどさないと! でしょ♪」
超人的な回復力と仮眠で傷は多少はふさがったとはいえ、最終決戦の場に行く前に少しでも本調子に近付けないと、
「大丈夫だよ♪ ちゃんとまだ生きているみたいだし、彼女の腕なら……」
「あ、ついでに君にも紹介してあげるよ♪」
「僕の恋のライバルをね♪」
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