第106話 炸裂! カエラの新兵器! ②

「エネルギー充電…… 二人共! フォローお願いします!」


「おう!」

「はい!」


 砲身の前にあかい球状のエネルギーが収束していく!


「ブレイカーキャノン! 発射!」


 腰を落とし、しっかり踏ん張った状態で真紅の極太レーザーを発射するカエラ!


 凄まじい衝撃が跳ね返ってくるのか、ズン! っとカエラの両足が地面にめり込む!



「! なっ! 何だ! あの光は!」

「こっ! こっちにくるぞ!」



「ぎゃああああああああああああ!」

「ぐあああああああああああああ!」

「うわああああああああああああ!」


 一気に敵の殲滅にかかるカエラ!


 そのままレーザーを出したまま左右上下に振り、更に敵を殲滅していくカエラ!


「んごおおおおおおおおおらあああああ!」


 この為に黒崎は敵の攻撃を躱しながら相手の立ち位置すらコントロールしていたのだ!


 だが、その隙間を縫うかの様に、ある程度の数の敵がカエラに攻撃を仕掛けに突っ込んでくる!


 この武装モードの弱点は発射の反動が大きい為、砲手は身動きが一切とれなくなるという事だ!


 無防備のカエラに迫る敵軍!


 だが当然それも黒崎達は織り込み済みであった。


「カエラ! もういい!」

「了解!」


 巻き添えをくわないように攻撃の停止の合図を送る黒崎!


 そしてそのままカエラに迫る敵軍を霧島と共に返り討ちにする黒崎!


 超大砲形態ブレイカーモードの弱点を補いつつ、最大限の効果を発揮する為に、隙だらけのカエラに向かってくるだろう残りの敵は、最初から黒崎と霧島が始末する算段だったのだ!


 一気に自分達に迫る敵軍をほとんど始末した黒崎達!


「ひっ ひいいいいいいい!」

「そっ! そんな! あれだけの大軍を一瞬で!」


 だが、あえてまだカエラの大砲の攻撃を免れていた少数の敵を残していた黒崎。


 そして彼は敵の前に立ち、大きく気を練り上げ、仕上げに入る。




「はああああああああああああ……」

「かあああああああああああああああ!」


 凄まじい霊圧で辺りを襲う爆風の様な風圧!


 あまりの凄まじさに敵も後方へと吹き飛ばされる!



「! すっ 凄い!」


「さらに力を引き出せる様になっていますね!」


「これが…… シリウスさんだった頃の力!」


「ええ…… それを纏っている状態ですね」


「ああ、まあ『シリウス形態』とでも呼んでくれ」


 蒼白い闘気がバチバチと迸りながら髪が逆立つ黒崎。


 そのままゆっくりと吹き飛ばされた敵へ向かって歩を進める。


「おい」


「ひっ!」

「なっ! なんでしょう!」


 完全に格の違いを見せつけられ戦意喪失している敵の残党達。


「俺達はこれからお前らの大将のアルテミスの所に乗り込み、そして倒してくる」


「言っておくが俺が本気になったらまだまだこんなモンじゃねえ……」


「それこそ女神級の力を引き出す事だって朝飯前(勿論ハッタリ)だ」


「お前ら如きじゃ傍にいるだけで霊圧の余波で消しとばされ、くたばっちまうぞ……」


「巻き込まれたくなかったら俺らの周りをウロチョロすんな……」


「ウゼエからお仲間共にも通信でそう伝えておけ!」


「死にたいなら話は別だがな……」


「それとも…… 今…… ここで死ぬか?」


 その殺気を敵共が気絶しない程度にギリギリで抑えた状態で向けて敵を威嚇する黒崎。


「ひいいいいいいい!」

「わっ! わかりましたあああああああああ!」

「失礼しまああああああああああす!」



 こうして黒崎達を追いかけまわした敵の残党達は一目散へと逃げていったのだった。


 そして通常形態へともどる黒崎。


「ふう…… さてと、これで塔へと向かえるな」


「俺らが女神級に厄介だって錯覚したら雑魚共はまず追いかけてこねえよ」


「全く、口から出まかせを! 確かに凄い霊圧でしたけど!」


「実際、本当にそうだったりして……」


「いやいや! んなわけねえだろ! ハッタリだよ! ハッタリ!」


「前にも言ったが戦は強ければいいってもんでもねえんだよ」


「要は戦略…… 頭も必要って事だ。 勿論、戦闘力も必要だがな」


アルテミスとの決戦まで、なるべく消耗したくはないからな」


「結局あいつを倒さねえと俺らの負け……」


「世界が終わっちまうんだからよ……」


「そうですね……」


「確かに……」


「それはそれとして想像以上だったな! カエラの新武装!」


「ええ! 凄い威力でしたよ! カエラさん!」


「はは、ありがとうございます!」


「ただ、これ凄い衝撃で、正直足腰に負担がかかりすぎるんですよね!」


「特訓中も筋肉痛に悩まされましたよ!」


「んごおおおおおおおおおって言ってたもんな」


「いえ、んごおおおおおおおおおらああああでしたよ」


「そこは触れなくていいんですよ! そこは!」


「いやお前、女性が『んごおおおおおおおお』って……」


「そうですね……『んごおおおおおおおらああああ』はちょっと……」


「そんなに言うなら使ってみてくださいよ! 凄い衝撃ですからね! 腰が抜けそうな位に!」


「そういう声も出ますよ! そりゃ!」


「はは! 冗談だって! 冗談!」


「そうそう! そんなに怒らないで!」


 カエラをいじる黒崎と霧島、そして期待通りのリアクションをするカエラ。


「ブレイカーキャノン…… 左右の武器を連結させて大砲にする事で近接・中間距離だけでなく遠距離攻撃も可能にした新型か」


「確かに凄え破壊力だな」


「ええ! ですがあまりに返ってくる衝撃が大きいので、その間完全な無防備状態になりますけど」


「まあ新型とはいっても試作段階ですからね。 あのモードも拠点防衛用か殲滅用に近い性能ですから、サポート役と連携しての対集団戦にしか使えないでしょうけど……」


「ま、様は使いどころを見極めればいいんだよ。 今回みたいにな」


「それにあくまで試作段階だ。 今後この戦を乗り越える事ができれば改良の機会もあるだろ」


「ええ。 そしたらますますカエラさんの戦力がアップしますね!」


「それはありがたいですけど…… もうちょっと反動抑えられないのかなあっていうのが本音ですけどね。 本当に腰にくるので!」


「まあ、その辺の文句もちゃんと生き残って開発部に言ってやれ」


「ちょっと! 文句っていうと、私が口うるさいみたいな感じになるじゃないですか! じゃなくて! ええと…… そう! 感想です! 感想!」


 いや、十分過ぎる位、口うるせえけどな……


 まあ、それ言うとまたうるさいから黙っとくけど……


 ったく! シリウスの時、一緒にいた時はもうちょい可愛げがあったもんだったが、黒崎として再会したら、やたら生意気になってるんだもんなあ……


 まあ、どんなに生意気になっても何だかんだで、ほっとけねえ奴なんだが……


「どっちでもよくねえか?」


「いや! そこは大事ですよ!」


「わかったわかった! それよりこれで雑魚共の相手はせずに済みそうだ」


「肝心なところで後ろから襲われ、挟み撃ちにでもなったら面倒だったからよ」


「とはいえ…… あくまで雑魚共の牽制に過ぎねえが……」


「通信で入ってきた情報と戦況的にそろそろ『あいつら』とカチ合う事にもなりそうだが……」


「! 『真なる選別者』!」


「敵の主力…… 全員アラン級と考えた方がいいですかね……」


「ああ、 流石にレオン程厄介ではないだろうがな……」


「そっちはリーズレットを信じるしかねえが……」


「馬鹿みたいな桁外れ極まりない位の霊圧で暴れ狂ってたみたいだったが、今はどっちの気も感じ取れねえのが気がかりだな……」


「まさか…… 相討ちなんてことは……」


「そんな…… リーズレット様……」



 正直その可能性も非常に高い…… 恐らくあの二人の強さは実力伯仲!


 二人揃って、くたばってるなんて事も……


 いや! どちらか勝ち残って消耗しすぎて気が感じ取れないだけの可能性も大きい……



「…… とにかく! 今はリーズレットを信じるしかねえ!」


「そもそも、あのじゃじゃ馬はそんな簡単にくたばるタマじゃねえよ!」


「俺のはただのハッタリだが、あいつの戦闘力はそれこそ女神級だ! だから絶対に大丈夫だ!」


「あいつも…… 他の皆も…… 各々が今やるべき事をやってくれてる……」


「俺達もそれに続かねえとな……」


「今のうちに塔へと向かうぞ!」


「はい!」

「ええ!」


 改めて気を引き締めなおし、三人は車へと乗りこみ、塔へと向かうのであった。


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