第104話 激戦! グランゼウス要塞!!
時刻は午後六時前……
大戦勃発から約七時間が経過している……
場所はグランゼウス要塞 正門側――
こちらには先刻キース・マドックが引っ張ってきた『ある大型魔獣』が暴れまわっていた……
「おいおい! これはまた…… 随分とファンタジーなモンが出てきやがったなあ」
「しゃあねえなあ…… いっちょ行きますかね!」
「オラァ!」
そのまま相手の尻尾、背中を駆け抜けながら高速で登っていき、勢い良く、その顔面に闘気を纏った一撃で斬りかかる!
「あらよっと!」
ズバアアァァァンと相手の顔の皮膚が大きく斬られ、魔獣の鮮血が宙に舞う!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
だが、相手は咄嗟に首を振り右目を犠牲にしたが、逆に言うと今の一撃で仕留めきれなかったのと、かえって魔獣の怒りを買ってしまい、より激しく魔獣が暴れまわる結果となってしまっていた。
「ちっ! しくったか!」
怒りに任せ首を振りながら闇雲に尻尾を振り回しては周囲の死神達や地面等に叩きつける大型魔獣!
それを冷静に躱す恭弥。
「おっと!」
「うおおおおおおおおおおお!」
「うおおおおおおおおおおお!」
魔獣にばかり気をとられているわけにはいかない!
背後から無数の敵兵が恭弥を襲う!
「ああ! もう! 面倒くせえなあ!」
一瞬で返り討ちにする恭弥はそのまま付近の劣勢を強いられている死神達が相対している敵兵をも正確無比な射撃で撃ち抜き、援護する!
「大丈夫か! お前ら!」
「! きょっ! 恭弥さん!」
「あっ! ありがとうございます!」
「まだまだ敵さんの攻撃は激しくなる! 気張っていけえ!」
「はい!」
「はい!」
「! やべっ!」
恭弥の注意が仲間達に向いている隙に巨大魔獣が彼を噛み砕きに突っ込む!
それをまた躱す恭弥!
しかし、勢いあまってその魔獣は要塞の壁に突っ込み、外壁を大破してしまう!
「~~! 周りを援護しながらの合間で相手するには、ちとダリーなぁ!」
実際この要塞に限らず、後続の敵兵も数に物を言わせ、どんどん各戦場に数を増やし、現れてきている。
当然、劣勢に立たされている死神達もそれに伴い増えてきている!
一対一ならそれこそ瞬殺だろうが、周りの死神をフォローしながら『これ』を相手にするには恭弥といえども苦しい展開であった!
ダメだ! サアラに手伝ってもらうか!
現在、二手に分かれ、要塞の南側を凌いでいるサアラに通信で連絡をとる恭弥。
「サアラ! 俺だ! すぐにこっちに来れるか?」
「あなた? どうしたの! 敵の数が増えてきて周りの子達のフォローで今すぐは厳しいわ!」
やっぱ向こうも似た様な状況か!
「いや~、信じられんことにこっちは『ドラゴン』が出てきやがってね! こっちも敵さんが絶賛増殖中で、皆のフォローの片手間に始末するには、ちと時間がかかりそうなんでね!」
「でかい図体で暴れまわられると被害甚大になりそうだから速攻で片付けてーから手伝ってほしいなあ~なんて! うおっ! っぶねえ!」
通信しながらもドラゴンの攻撃を躱す恭弥。
「ドラゴンってあのドラゴン? 連中、アニメや漫画の見すぎでしょ! 何てもん創ってんのよ! あ、でもちょっと見てみたいかも!」
「あなた! せっかくだから写真撮っといてくれない?」
「残念ながらそんな余裕はねえ!」
「それはそうと、やっぱそっちも厳しいか!」
「ええ! ある程度こっちの連中の数減らして、戦況を立て直さないと! 二〇分以内にならいけそうだけど!」
「マジかぁ~! わかった! こっちで何とかする!」
「ごめんなさい! 何かあったらまた連絡して! こっちもなるべく早く援護に行けるよう、立て直すから!」
「あいよ! そっちも気をつけてな!」
通信を切る恭弥。
くそ! せめて数分! あのデカブツに専念できれば!
こういう時、
…… いや、ダメだ。 あいつ要塞ごとメチャメチャにしかねねえしな……
しかたねえ! これ以上要塞を破壊されるわけには!
「お前らぁ! 少しの間何とか凌いでくれぇ! その間に俺が……」
「その必要はないわ!」
「! 雫か!」
諜報部 室長 久藤雫。
魔力を纏い、その両の目は金色に変化している!
呪文の詠唱をしながら要塞の上層屋外エリアから彼女は飛ぶ込んでくる!
「我、偉大なる魔の力を宿す絶対なる支配者なり……」
「我の前に立ち塞がりし、全ての愚かなる者を! 無へと帰さん滅びの裁きを!」
「
久藤の右手を覆う様に、巨大な蒼白い魔力状の刺々しい、そう…… まるで悪魔の腕を彷彿とさせるかの様な『それ』を使って、縦に引き裂きにかかる!
久藤の声と魔力に反応し、空を見上げるドラゴン。
次の瞬間!
凄まじい爆裂音と共に、その獣は頭から首にかけて木端微塵に潰され絶命した!
まさに一瞬の出来事だった!
あまりの衝撃で周辺の地面も大きく抉れてしまっている!
「くっ! 久藤室長!」
「久藤室長だ!」
「おおおおお! 室長!」
一気に士気が上がる要塞の死神達!
「ヒュウ♪ さっすが~!」
「恭弥! あなたはサアラと合流してガンシップに乗って黒き塔の近く、ポイント二十へ向かいなさい!」
「先程、閻魔の城から通信が入ったわ!」
「敵の援軍はアルセルシア様と解決屋のおかげで大幅に減らして援軍精製装置みたいなのも塔の中にあったものは全て破壊されたそうよ!」
「ただ、ポイント二十に最後の精製装置が残っているとの事!」
「貴方の抜けた穴は私が! サアラの分は
「天国班も全く余裕がないみたいなの! 今すぐに動けて不測の事態が起こっても臨機応変に判断、対処でき、それに見合う程に戦闘力が高いのはあなた達しかいないわ! 行って!」
「! そういう事か! 了解! すぐにサアラと向かわせてもらうぜ!」
「ええ! 気をつけて!」
「ジーク副室長! 指揮権は一度あなたに預けます! 私はこのまま前線で敵を叩き潰します!」
「了解しました! 室長!」
ジーク・スタンバート――
無線で彼女とやり取りした彼は、諜報部 副室長であり久藤の補佐をする冷静かつ有能な人物である。
「雫! まだまだ先は長いんだ! あまり大技連発すんなよ! お前さんが倒れちまったらこの要塞は終わりだ! へばったら一旦、中に退く事も忘れんなよ!」
「現場では室長! ったく…… わかってるわよ! ちゃんと考えてるし、戦場の流れはコントロールするから心配無用よ!」
「そっちこそ…… あなた達の事だから心配いらないとは思うけど…… 単独行動になるんだから気をつけて行きなさい!」
「ちゃんと生きて帰ってきなさいよ…… 恭弥」
「これは上官命令よ……」
「…… へっ…… わかってるよ! 室長!」
「『またな』…… 室長!」
「ええ…… 『また後で』……」
互いに生き残る様にと、言葉を交わし恭弥はサアラと合流してから要塞を後にする。
まだまだ戦場は激しさを増していく!
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