第98話 爆走! 解決屋!
地獄エリア 北西部――
「がっ! がは!」
「つっ! 強い……」
天界側の死神達を圧倒している漢がいた……
『真なる選別者』の一人、ガラン・ズールであった。
戦車で構成されている大部隊、機甲師団も彼を中心に敵部隊により第十二~十五部隊が壊滅させられていた……
「ふん…… この程度か…… 歯応えのない……」
「こちらガラン! イリア、解決屋共は見つかったか?」
通信機で、同じく『真なる選別者』であるイリア・セイレスと連絡をとるガラン。
こちらは天国エリアの中央より、やや南に位置する拠点を攻めていた。
黒崎を狙っていた二人、特にイリアは黒崎に強く執着していたので、彼の動向を例の監視ロボで探り、黒崎達がここの拠点に大戦前日に移動していたのを把握していたのだ。
先程まで敵側と交戦していた黒崎、霧島、カエラであったが、少し前から姿をくらましていたのであった……
「ガランか。 いや、それが一時間位前に連中が姿をくらましてから全然姿を見せねえ!」
死神達の返り血で、服が真っ赤に染め上がっているイリア・セイレス……
相当数の死神が彼女に殺られていた……
「あいつらどこ行きやがった!」
「まさかすり抜けられたのではないだろうな……」
「あの連中があの方に敵うはずもないが、アランの仇は我らが討つと決めた」
「地獄側の戦力もある程度、潰しておく必要がある上、お前が駄々をこねるから、こちらが片付くまで、お前一人に譲ってやったんだぞ」
「わかってる! 譲ってくれた事には感謝してるよ!」
「勿論、見逃してもねえはずだが……」
だが、ずっと黒崎達を探しながら死神達を蹂躙していたイリアだが、ここまで姿を確認できないのは、あまりにも不自然と感じていた……
そして、ある可能性が頭によぎる……
「…… まさか……」
「ああ…… 『
「待ってろ……」
恐らくステルス装置を解析して、即席で何かの車両にでも付けて、すり抜けたといったところか……
だとしたら…… どのルートで攻めてくる……
比較的戦力の薄いこのルート…… いや、奴ならその裏をかいて、あえて厳しいルートを通ってくる可能性も……
情報によると昔、シリウスの車両の操縦技術は桁違いだったと聞いたからな……
見えない状態なら、奴ならどんな戦場でもすり抜けられる?
いや! それすら見越して……
しばし考えた後、ガランは大きく二つのエリアに絞る!
そしてそのまま、黒の塔の管制室に通信を入れる。
「ガランだ。 今から指定した範囲に対ステルス量子レーダーを展開しろ!」
「ガラン様!」
「はっ! 了解しました!」
「対ステルス量子レーダー展開!」
「レーダー展開! 了解!」
黒き塔から索敵用の量子エネルギーが二つのポイントに向かって展開される!
「ガラン様! 敵の車両と思われるものが姿を現し、真っ直ぐ
「! やはり! どこのポイントだ!」
「黒き塔より南の方角…… ポイント三十七辺りを走行中! それから……」
「もう一つ! 車両が! こちらは塔から南東、ポイント五十九の辺りを走行中!」
「何! 二つだと!」
片方は
「かまわん…… どちらのポイントもかなりの数の部隊を展開しているはず……」
「車両ごと奴等を潰せ!」
「はっ!」
すぐさま、二つのポイントに指令が伝わる!
姿を現した二車両の戦車!
それぞれ大勢の敵が狙いを定める!
「撃てーーーーー!」
「撃てーーーーー!」
魔獣型はエネルギー砲を、人型はバズーカ砲等を一斉に放ち始めた!
激しい爆発音がそこら中に鳴り響く!
「ガラン様! こちらポイント三十七! 例の車両! 撃破しました!」
「こちらポイント五十九! 敵車両、撃破しました!」
? …… 早い…… やけにあっさりだな……
「奴ら自体は仕留めたのか?」
「そ、それが……」
「?」
「ど、どうやら遠隔操作されていたみたいで、誰も乗っていませんでした!」
「こっ! こちらも同様です!」
「! なんだと! 二つ共か!」
まさかこちらがステルス車両を使用する事を見抜く事、さらに予測するルートまで読み切っていたというのか!
「くっ! 仕方ない!」
「こちらガラン! 管制室! 応答しろ!」
「こちら管制室!」
「もう一度! 対ステルスを展開しろ!」
「今度は黒き塔から閻魔の城までを直径とした範囲全てにだ!」
「! し、しかし、それではこちらの援軍を生成する為のエネルギーにも支障をきたします!」
「それ程の広範囲を索敵する程のエネルギーとなると、間もなく生成される援軍がかなりの数を減らしてしまう事になりますが……」
「かまわん! いいからやれ! 今すぐにだ!」
「はっ はい!」
「りょっ! 了解しました!」
今度は大規模な範囲で索敵する敵方の管制室!
すると黒き塔、真西の方角から約三十キロ地点で新たな反応を検知!
「これか!」
「何であんな所から!」
「近くに部隊は…… くそっ! ほとんどいない!」
「おい! 誰か近くにいないか! 凄まじいスピードで走行している車両が突然現れたはずだ!」
「誰が乗っているか急いで調べろ!」
その通信に僅かながら配属されていた飛行型の怪物が報告を入れる!
「こちらポイント十一! 乗っているのは…… 例の解決屋だ!」
「舐めた真似を! ぶち殺して…… ぎゃあああああああああ!」
「! おい! どうした! 応答しろ! おい!」
「くそ! ガラン様に報告だ!」
黒き塔より西部 三十キロ地点――
ステルス機能を破られ、姿を現した一つの車両……
薄い障壁を纏いながら、青いオープンカーが超スピードで爆走している!
運転しているのは…… 黒崎修二!
後部座席には、既に武装を出して装備している霧島達也とカエラ・クリスティン!
あえて武装車両を選ばず、敵からの攻撃にあっても直接反撃しやすい、いざとなったらすぐさま飛び出す事ができる上、小回りがきく様にと、オープンカーをチョイスしていたのだ!
早速カエラの銃口が火をふき、先程の飛行魔獣を撃墜する!
地獄エリア 北西部――
報告を受けたガランが再度イリアに連絡をとる!
「イリア! やられた! 奴等はポイント十一付近を塔に向かって接近中だ!」
「ポイント十一だあ? なんだってあんな塔からも離れた所から! たった一時間でここからそんな所まで走ってったってのかい! 不可能だろ! そんなの!」
「恐らくダミーを仕掛けると同時に、ノーマークの所に空間移動で抜けていったのだろう!」
「奴等がすり抜けた事に、こちらが気付くのも見越した上でな!」
「黒崎修二…… 恐ろしい漢だ…… まんまとしてやられた!」
「くそったれ! 連中、舐めた真似を!」
「兵隊共に足止めをさせておく!」
「俺もこれから向かう! そこはいいから、お前も急いで奴等を追え!」
「了解だ!」
黒き塔より西部 三十キロ地点――
「どうやら連中もやっと気づいた様だな!」
「はっ! 騙くらかし合いなら、負けやしねえんだよ!」
ステルス機能を破られ、敵が襲来した事により、敵方にこちらの動きがバレた事を察した黒崎!
「ステルス機能と遠隔操作を使っての
「まさかこんな事を思いつくだなんて……」
「本来だったら、こんな遠回りしてる暇なんてねえ距離のルートだからな! 事前にイステリアに頼んで、一瞬だけこっちに来てもらって
「直前に仕込んでもらって、俺らが通った後すぐに
「それに連中も、俺の前世やアルテミスとの関係性も承知の上! 俺がなるべく力を温存して
「こんなルート、そうそう簡単に見破れねえし、そうなりゃ広範囲の索敵レーダーか何かを展開する羽目になるだろう!」
「そうなったら、恐らく天国エリア一帯に、もしくは限りなくそれに近い範囲を索敵するはず……」
「開戦した時に黒き塔と敵が出現した時のエネルギー反応……」
「可能性の一つとしては予想してたが、敵側は兵隊を創るのに、かなりの瘴気とエネルギーを必要とする……」
「あの黒い塔から発せられてる膨大な瘴気は兵隊づくりや各兵器を使用するにあたってのエネルギー減、つまり燃料の役割とか諸々かねてんだろう」
「だったら俺らを探し出す為に! たった今! かなりのエネルギーを消費したって事になる!」
「運が良けりゃ、敵の次の援軍、かなりの数を減らせる事もできたと思うぜ!」
「そこまで計算して…… 凄いですね! 流石は黒崎さん! その性格の悪さも作戦に
「ひと言余計なんだよ! お前は!」
「まあ、さっきみたいに、ここから先は妨害が入ってくるだろうが……」
「このまま行ける所まで、アルテミスの方まで突っ走るぞ!」
「了解!」
「了解!」
閻魔の城 管制室――
「どうやら、黒崎殿の作戦が上手くいった様ですね。 イステリア様」
そう、イステリアに声をかけるはキース司令……
「ええ…… ふふ、全く……
黒き塔 兵隊生成エリアの一角――
仰々しい機械群が並んでいる中、一人の男が佇んでいる……
キース・マドックである……
「ちっ! ガランの奴、勝手な真似を!」
「勝手にエネルギーを持っていかないでほしいねえ……」
「全く……
「いや…… この場合、彼らが見事だったという事か……」
「流石は元総司令を務めていただけはある…… まさかこんな手を使ってくるとは……」
「仕方ない…… 当初の予定では兵隊も大量に呼び出すつもりだったんだけど……」
「まあ、兵隊は呼び出さず、少し小振りになるだろうが、二匹…… ギリいけるかな♪」
「一番近い
「よし…… それじゃあ……」
「そろそろ僕も行こうかな♪」
次々と本格的に動き出す『真なる選別者』達……
そしてキース・マドック……
遂に彼も直接、動き出そうとしていた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます