第89話 閻魔の城の攻防戦!

 霧島夫妻の活躍により、グランゼウス要塞が敵軍を凌いでいる頃……



 閻魔の城 正面口方面――



 こちらも『ゲート』からの敵の突然の襲来、その対応に追われていた。




「くっ! まさかいきなりこんな近くに敵が大挙してこようとは!」


「怯むな! 冷静に対応していけば大丈夫だ!」


「おお!」


 迅速に対応する死神達。


 しかし、障壁を破った敵軍の勢いは中々に止まらない!


「障壁は破れている! いけえ!」


「おおお!」


 チャンスとばかりに、一気に閻魔の城の正門口へと、なだれ込もうとする敵兵達!



その時だった!



「がっ!」


「ぐあっ!」


 突如バラバラになっていく敵兵達!


 よく見ると至る所に、細い糸状の物が張り巡らされ、敵兵の血が滴り落ちていた。



「迂闊に踏み込まない方がいいわよ……」


「コマ切れになりたくなければね!」


「おお! メアリー司令!」


「流石は! 頼りになる!」


 糸状の闘気を操る、霧島とカエラの上官 メアリー司令の仕業であった!

 

 障壁が再度展開されるまでの間、自身の糸を周辺に仕込んでいたのである!



「くっ! ふざけた真似を!」


「ならばお前から消してくれるわ!」


 仲間を殺られ、怒りに駆られる敵兵達は次々とメアリーに襲いかかる!



「ふふ、悪いけど……」


「!」


「消え…… ぐわああ!」


「ぎゃああああ!」



「その程度の実力じゃ、無理ね♪」


 高速の動きで敵を翻弄、次々と敵を返り討ちにするメアリー!


 黒いグローブの各指の先端から闘気上の糸を出し、敵を絡めとり、コマ切れにしていく!


「まだまだ来るわよ! 各隊の司令! 上手く指示を出していきましょう!」


「おおおおお!」

「おおおおお!」

 




 閻魔の城 屋上――



「ふふ、来た来た♪」


「やれやれ、エレイン君も人使いが荒いねえ」


「あら、良いじゃない♪ 息子の未来のお嫁さん候補なんだから♪」


「はは、大分苦戦しているみたいだがな」


「まあ、息子が普段迷惑を…… いや、相当! かなりのレベルで迷惑をかけているんだ!」


「たまには返して、我らがポイントを稼いでおかないとな!」


「そうそう! ああ! 早くエレインちゃんに『ママ♡』って呼ばれてみたいわ!」


「まだ付き合ってもないみたいだがな…… 全く、あのヘタレが!」


 屋上では未来の愛娘候補の話題で盛り上がりつつ、屋上から侵入しようとした敵の飛行型魔獣の怪物兵共を次々と無双していく先代閻魔夫妻!



「くそ! とっくに引退した老いぼれ風情共が!」


「舐めた真似してるんじゃねえ!」


 数で押し切ろうと波状攻撃を仕掛ける敵兵達!



「極神流薙刀術……」


「風月輪!」


 大きく構え、一回転しながら闘気を込めた三日月状の一撃が前方の敵集団に炸裂する!


 一瞬で前方の敵グループを大量に殲滅したミリア・アルゼウム。


「え? ……」


 そのあまりの出来事に呆然とする敵兵達も多数いる始末だ。



「おお! やるな! では私も……」


「極神流一刀術……」


「炎滅斬!」


 巨大な閻魔の炎の闘気を剣に纏わせ、そのその闘気を斬撃と共に飛ばす先代大王!


「ぎゃああああああ!」


「ぐあああああああ!」


 塵一つ残さず消滅していった敵のもう一グループ。



「しっ! 信じられん!」


「ばっ! 化け物だあ!」


 先代閻魔夫妻の、あまりの戦闘力に恐れをなして、退こうとする怪物兵達!



「あらあら、女性相手に化け物扱いだなんて……」


「あまり感心せんなあ……」


「まあ……」


「今更謝っても……」















「許さないんだけどね♡」

「許さないがな!」




「ぎゃああああああ!」

「ああああああああ!」



 あっという間に、屋上の敵を一掃してしまった先代閻魔夫妻。



「ふむ。 こんなところか」


「大した事ないわねえ」


「あくまで先兵隊…… 油断しない方がいいだろう」


「ええ、わかってるわ。 あなた!」




 閻魔の城 後門前――



 死神達の背後をとろうと、後門側へ回り込んでいた敵兵達……


 だが当然、こちらにも戦力を配置しているエレイン。


 応戦中の戦力に加え、もう一人強力な使い手を送っていたのだ。



「ご足労いただき、恐縮ですが、ここから先は通行止めですよ」


「! マクエル殿!」


「! 奴は零番隊の!」


「? あれは…… メス?」


 マクエルは両手に黒いグローブを付け、右手の親指以外の各指の間で挟む形で計三本のメスを持っている……


 死神達の扱う武装は、何もPSリングに収納されている固定の形状の武器ばかりではない。


 メアリーの糸を出すグローブもそうだが、自身のイメージを闘気の武器として具現化し、状況によっては武器の形状を変え、臨機応変に対応できる武器もあるのだ。


 高いイメージ力が必要なのと気の消費が通常の武装より多いのが難点だが、PSリングより素早く武装が出し入れでき、応用力も高いので霊力の総量の多い者は好んで使っている者も多いタイプの武装である。




「そこから一歩でもこちらに踏み込んだら…… しますよ」


 笑顔で圧倒的なまでの重圧プレッシャーをかけるマクエル……


それに気圧される敵兵達。



「くっ!」


「かっ! かかれえ!」


 一斉にマクエルに襲い掛かる敵兵達!



「ぐあ!」


「ぎゃあああああ!」


 だが、次々とコマ切れにされていく!



「まあ、踏み込んでも踏み込まなくても、結果は同じなんですけどね」





「さあ、手術オペの時間ですよ……」




 左手の人差し指で自身の眼鏡を、くいッとあげながら死刑宣告をするマクエル。


 彼もまた普段温厚だが、天界の平和を踏みにじった襲撃者相手に遠慮するつもりは一切ないのであった。



 激戦は続く……

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