第八章 大戦勃発! 天界を守れ!

第85話 天界解放作戦

 十月十二日…… 決戦の日 


 午前 十時十五分頃……


 天界の各地では、民衆の全ての避難が完了し、諸々の準備が整っていた……



 閻魔の城、その一階正面ホール。


 巨大な薙刀を携える、銀髪の美しい女性が一人……


 ミリア・アルゼウム。


 先代大王の妻であり、極神流薙刀術の免許皆伝者である。


 その姿はさながら、リーズレットをそのまま大人びた感じにした容姿であった。


 引退した身でありながら、その実力は未だ衰えず。


 此度の天界未曽有の危機に、息子からの応援要請で、夫と共に参戦する事となった。


 隣には先代大王も並び立っている。


「おお!」


「先代様達だ!」


「あの方達がお力をお貸し下されれば、正に鬼に金棒!」


「ああ! 勝利は必ず! 我らが手に!」


 二人の姿で周りの死神達の士気が上がる!


「鬼って…… 失礼ねえ! 私って、そんなに怖く見えるのかしら?」


「はは! 頼もしいって意味なんじゃないか。 まだまだ若い者達に負ける訳にはいかないからな!」


「頼もしいって言葉も、あまり女性的には嬉しくないのだけれど…… けどまあ、天界の平和が脅かされているのなら、そうも言ってられないわね」


「ああ。 精々気張るとしようか」


「ふふ、そうね。 あなた!」



 同時刻…… 屋上。


 閻魔大王、リーズレット、そして少し遅れて彼女も屋上に姿を現した。


 女神アルセルシアだ。


 元々常識外れのオーラを普段から漂わせている彼女だが、いつにも増して、洗練された鋭い、それでいて圧倒的な気に満ちていた。



「! ふふ! これは予想以上だ♪」 


「大分仕上げてきたね! 流石は師匠せんせい♪」


「ああ! まだ抑えているのに、いつも以上の凄まじいオーラですね!」


「ふふ。 まあ相手が相手だからな。 この位は仕上げてこないと話にならん」


「大王、時間は?」


「ええ。 そろそろです」



 午前 十時三十分……



 閻魔の城、城の外周辺、グランゼウス要塞、各戦艦等のモニター通信で、閻魔の城の屋上にて、防御結界を張った状態で映し出された人物達がいた……


 閻魔大王、リーズレット、そして女神アルセルシアである。


 天界中に見守られている中、大王が一歩前に出る。



「諸君! 遂に戦いの日がやってきた!」


「まずは危険を承知で、此度の戦いに力を貸してくれる事、大いに感謝させてもらう!」


 黙って見守り、拝聴する天界の戦士達……


「正直言って、かなり厳しい戦いとなるだろう…… 仲間の屍をいくつも越えなければならない事にもなるだろう……」


「天界の治安を預かる管理者の身でありながら、諸君らにその様な決断を強いる事になるのは、ひとえに我らの力不足によるところも大きい……」


「本当に…… 申し訳ない!」


 天界中に頭を下げる大王!


 その姿に、各地がざわつき始める。



「そんな! 大王様!」


「何を仰いますか! 我らは皆、あなた様と共に行きます!」


「どうか頭をお上げ下さい!」


 皆、大王達を心から慕って、信頼しているのがわかる。


 この場に、嫌々、仕方なしに戦場に集まっている戦士等、ただの一人もいないのだ。


 皆で天界に平和を! 家族や仲間と、また笑顔で過ごすために!


 ここまで皆の想いを一つにまとめ上げるのは並大抵の漢では不可能である。


 皆、とうに覚悟は出来ている……


 皆のその想いに、頭を上げる大王。


「ありがとう…… こんな私についてきてくれる事、深く感謝する…… そして諸君らを誇りに思う!」


「皆の意志と想いに答えるべく! この場を借りて宣言する!」



「必ずや! 勝利を我らの手に!」



「我等三人は、これから敵のアジトと思しき場所に乗り込む!」


「一刻も早く! この戦いに終止符を打ち! 天界の平和を勝ち取る為に!」


「また皆で馬鹿やって、笑いあって…… 素敵な未来を共に歩んでいく為にも……」


「共に未来を勝ち取ろう!」



「おおおおお~~~!!!!!」



 各地から大歓声が上がる!



「もちろんです! 大王様!」


「我らも最後まで戦い抜きます!」



「勝利を我らの手に!」


 それと共に、戦士達の士気が最高潮に達する!


 

 閻魔の城 一階正面ホール モニター前。



「ふふ、大王あの子も随分、立派になったわね」


「ああ、そうだな……」


「本当に…… 大きくなったものだ……」


 息子の成長を、感慨深く想う先代閻魔夫婦……


 そして屋上では、女神アルセルシアも前に出てくる。


「諸君。 女神アルセルシアだ」


 女神の御声にまたもざわつき、少しの間の後、辺りは静寂と化す。


「私からも、まずは皆に感謝の言葉を……」


 一礼する女神。


 またもざわつくが、彼女の想いをしっかりと受け止める戦士達。


「そして、言いたい事はたった今、大王がほぼ言ってくれたが、私からは一つだけ……」


















「この私がいるんだ! 敵の大将は任せろ!」



「パパっと倒してきてやるから、大船に乗ったつもりでいろ!」



「その間! 天界の守りは諸君らに任せた!」



「それが終わったら皆で祝勝会だ!」



「とっとと片して! 皆で勝ち取った勝利の美酒を味わうぞ!」



「おおおおお~~~!!!!」


 その圧倒的な自信からくる言葉で、またも大歓声が湧き上がる!


「ありがとう! だが、皆! 静粛に!」


「最後に! 『この方』からも、御言葉をいただく!」


 そう言って出てきたのは……


 女神イステリア…… そして……


 最高神の姿であった!


「皆の者! ほとんどの者が初めてご拝顔する事と思うが! この方こそ! 我らが天界の、そして世界の父! 最高神様だ!」


「!!!!!!!!!!!!」


「さっ! 最高神様!」


「あの御方が!」


「我らが天界の父!」


「それに隣におられるのは!」


「ああ! 女神イステリア様だ!」



 *    *     *



 第五七番治療施設



「あの方が…… 最高神様!」


「天界の…… そして世界の創造主であり、父でもある御方!」


「まさか生きているうちに、その御顔を御拝顔できるだなんて……」


「ええ…… 感無量です!」


そこで映像を見守るのは霧島とカエラ、そして黒崎であった。



「…… おやっさん……」



 *    *    *



 閻魔の城 屋上



「静粛に! 静粛に!」


「父上…… お願いします」


「うむ」


 敵の襲撃に備えて、イステリアは何重にも最高神に結界を張っている。


 その上で、周囲に不穏な気配がないか警戒もしている。


 いつ敵が襲撃してくるかわからない状況下で、世界の神が矢面に立っているのだ。


 当然である。


 本来ならあまりにも危険な行為である為、娘である女神達は、最後まで反対したが最高神本人たっての希望であり、強固な結界を張る事、それと僅かな時間のみ! 外に出て皆に御声を出す事を承諾した。



「皆の者…… 直接顔を合わすのは初めてだな……」


「私が最高神だ」


「結界に身を包む、この様な姿で皆の前に姿を現した事、どうか許してほしい」


「娘達が随分と私に対して過保護なのでな! 一言だけ……」


「最高神等と謳われているが、この通り私も歳だ……」


「正直、大した力も残っていないし、皆と共に最前線で戦える力も、失っている……」


「情けない父と思うだろうが、それでも! 私にできる限りの事をしようと、心に決めておる!」


「諸君らは皆、私の子供達だ……」


「私も! 私なりに力の限り戦う!」


「共に! いこう!」


「おおおおおおおおおお!!!!!!」


「我らが父!」


「最高神様~~~~~!!!!!!!」



 *    *    *



「黒崎さん! 霧島君! 私達も頑張りましょう!」


「ええ! カエラさん!」


「ああ!」



 …… おやっさん、何だか老けたな……


 待ってな! 諸々解決してきてやっから!




 *    *    *



 皆に軽く手を振り、後ろへ下がる最高神。


「父上…… お身体は大丈夫ですか?」


「ふふ、そう心配せんでも大丈夫だ。 ありがとう、イステリア」


「いえ…… ですがどうか! ご無理はなさらずに!」


「もう本当に年なんだから、無理しないでくれよ。 父上!」


「父上に何かあったら我らは悲しい……」


「特にイステリアなんかは号泣しすぎて、涙で天界が大洪水をおこすんじゃないか?」


「姉様! 人を化け物みたいに言わないで下さい!」


「はは! そうだな…… アルセルシアの言う通り、お前達を悲しませるわけにはいかんしな」


「イステリア…… すまんが今日は多大に迷惑を掛けると思うが、どうかよろしく頼む」


「迷惑だなんて! 父上をお守りするのは私の使命! どうかお任せを!」


「うむ。 アルセルシアも…… アルテミスの事を頼む……」


「ああ…… 任せてくれ、父上」


「お願いします! 姉様!」


「ああ! イステリア…… お前の分もガツンと姉者にぶちかましてきてやる!」


「だから父上と、ここの守りは任せたぞ!」


「はい! 姉様!」


「大王、 リーズレットも…… よろしく頼む」


「はっ! この命に代えても!」


「お任せください!」


 そして今一度、一歩前へと出る閻魔大王。


 そして声高に宣言する!




「皆の者! これより! 天界に巣食う闇を祓いし作戦!」




「天界解放作戦を開始する!」




「おおお~~~~!!!!!!!」


 皆の士気が高まり、いよいよ作戦が決行される!

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