第82話 最後の準備 アルテミスサイド
異空間……
ここにも後、数日程で決戦が始まるだろうと勘付いている者達がいた。
「ぐう! …… くっ! はあ、はあ……」
膝をつき、胸と瘴気を抑え、苦しそうにするアルテミス。
すぐに持ち直したのは流石としか言いようがなかった。
そして、そんな彼女は大事そうにある物を胸元から取り出し、握りしめている。
壊れてほとんど原型を失ってしまっているペンダント……
「…… シリウス……」
「…… 大丈夫か?」
「! レオンですか……」
背後からレオンバルトの声を聞き、立ち上がるアルテミス。
「…… まだ大事にとっておいたんだな……」
「ふふ。 あの子からの初めてのプレゼントですからね」
「壊れちまってるけどな」
「しかし、まさか『あの爆発』をわずかながらとはいえ、軽減させる程の力を秘めていたとは……」
「ガキが集めた、はした金や小遣いで買える代物でもねえ」
「流石に盗みを働くほど墜ちてもいなかっただろうし……」
「多分、足りない分は買った先で相当頭下げまくったんじゃねえか?」
「大した事ないって顔して渡してきやがって……」
「ガキのくせに泣かせる事してくれやがる」
「ええ。 全くですよ」
「これは私にとって、あの子との絆の形…… 壊れていても、捨てられませんよ」
「だろうな……」
「貴方はどうするのです? レオン?」
「うん?」
「私の所に辿り着く前に、貴方が彼と対峙したら、彼と
「どうだろうな…… まあ、成長、転生したあいつに興味があるし、会ったら情けをかけずに殺りあうだろうなぁ……」
「まあ、少し位は何か話てえって思う気持ちもあるが……」
「ただ俺には『先約』がいるからなぁ…… 先に出くわしちまったらその場で考えるが、まずはあいつとやるのが優先だ」
「ふふ。 例の剣神ですか…… 貴方がそこまで戦う意欲を示すとは、相当な相手の様ですね」
「ああ! ありゃ相当な使い手だ…… 正直殺り合うのが楽しみだよ!」
「ん? 何だ? 妬けたか? アルテミス?」
「斬りますよ」
「冗談だよ! おっかねえなあ!」
「…… レオン」
「あ?」
「貴方には本当に申し訳ない事をしました…… この様な事に巻き込み、本当に……」
そう言いかけたアルテミスの言葉を遮るかの様に、自身の言葉を割り込ませるレオンバルト。
「おっと! 謝るなよ! アルテミス!」
「!」
「昔から言ってんだろ」
「俺の居場所はいつだってお前の隣だ」
「例えお前がどんな道をいき、そしてどんな結末を迎えようが……」
「最期の最期まで付き合うぜ」
「これは決定事項だ! 誰にも文句は言わせねえ!」
「何度も言わせんな!」
「お前の想う様にやればいい」
「…… そうですね」
「失礼しました。 レオン」
「では言葉を訂正します」
「…… ありがとう…… レオン」
「…… おう!」
優しさと感謝、そして愛情を秘めた笑みを浮かべ、ありがとうと言葉を投げるアルテミス。
そしてそれにニカっと無骨、だけど清々しい位の満面の笑みで返すレオンバルト。
「…… 隠れていないで出てきていただいても構いませんよ」
二人を邪魔しない様に気配を消していたが流石にアルテミスには通用しなかった様だ。
ガラン・ズールとイリア セイレスであった。
「も! 申し訳ありません! その…… 盗み見するつもりはなかったのですが……」
「申し訳ない」
頭を下げる二人。
「ふふ。 いいのですよ。 別に」
「決戦は間もなく訪れます。 あなた達も悔いのないように!」
「はっ!」
「はっ!」
そして二人はアルテミスの前で膝をつき、感謝の言葉と想いを並べる。
「アルテミス様…… 我等の様な愚者にここまでお付き合いいただき、力を与えて下さり、更にこの様な
イリアに続き、ガランも想いを告げる。
「いつこの身が果てようとも後悔などありません!」
「世界がどういう結末を迎えるかはわかりませんが…… 最期に大暴れさせていただきます!」
そしてイリアも再びガランと共に、最期の感謝と誓いを立てる!
「貴方様に出会えた事が我らの救いであり、希望でもありました!」
「決戦の日は最期まで貴方様と共に戦い抜く事を改めてここで誓わせていただきます!」
「その誓いと言葉、確かに受けとりました」
「貴方達も、もし彼と戦場で出くわしたら、何の遠慮も必要ありません」
「全力で戦いなさい!」
「そして二人共、しっかりと己が道を示してみるといいでしょう!」
「はっ!」
「はっ!」
こうしてアルテミス達も最期の覚悟を決めるのであった……
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