第74話 お仕置きタイム!
時刻は夜の九時……
娯楽・飲食エリアと治療区画を結ぶエントランスホール。
基本的に娯楽・飲食店エリアは夜の十時に各店舗や施設を閉めるので、この時間帯は施設を後にしようとする帰りのお客さん達が多い。
つまり、かなり人の目につくのである……
ひそひそ……
そのエリアを行き交うお客さん達が小声で言葉を交わす、あるいは笑っている者もいる。
「なんだあ? アレ……」
「クスクス! おっかしいのー!」
「何アレ? 超ウケるんですけど~!」
「お母さん~ アレ、なあに~?」
「しっ! 見てはいけませんよ!」
「なあ…… あの金髪の男って、もしかして……」
「まさか! ただのそっくりさんでしょ! あのお方が、あんな恥知らずで、おかしな馬鹿な格好するわけないじゃない!」
「あれじゃ、ただのド変態よ!」
「だよなあ! しかしよく似てるなあ!」
様々な声が行き交うエントランスホール……
そこの一番目立つ場所で、首からフリップボードをかけられ、横一列で正座させられている面々がいた……
しかも水着姿でだ!
娯楽施設の中の一角にあった水着売り場から、女性陣はかなり布面積の少ない水着、男性陣はパツパツのブリーフタイプの水着パンツを
入り口から向かって右から、霧島、閻魔大王、エレイン、カエラ、マクエルと正座させられている。
そして、その前に常人ならざぬ凄まじい程の殺気を笑顔で発しながら、足を組んでイスに座っている京子の姿があった……
その姿は、さながら女王様そのものであった……
そしてその隣に立ち、凄みをきかせているシリウス……
ちなみにこの場にいない、アルセルシアとリーズレットはというと……
アルセルシアは隙をついて空間移動、リーズレットも瞬時にその空間の中に入り、結果上手く一緒にバックレていたのであった。
そして、正座をさせられている面々にかけられているフリップの内容だが……
霧島 僕は人の恋路をノゾキ見した悪い子です!
閻魔大王 僕は悪ノリ変態ノゾキ魔ナルシストです!
エレイン クールビューティーと言う名の皮を被ったノゾキ魔です!
カエラ 真面目に見せかけて実は興奮鼻血ド変態女です!
マクエル 弟子をノゾキ見して楽しむ痛い性癖の持ち主です!
と、いうように書かれたフリップを首から各々下げられていたのであった。
この様に社会的抹殺レベルの重い罰を公衆の面前で、しかも水着姿で晒す羽目になっていたのであった……
霧島とマクエルは下を向いて、恥ずかしそうにしている。
エレインとカエラは、プルプル震え、羞恥に耐えながらも必死に京子に許しをこう!
大王に至っては、何故かこの状況すら最初楽しんでいたから、京子の拳骨三連撃を脳天からくらい、でかいこぶを頭につけられる羽目に……
そして一同のその姿を、通信機に内蔵されているカメラで、定期的に写真に収める京子。
何とか許してもらおうと必死に訴える面々!
「京子さん…… もう許していただけないでしょうか?」
「わ!っ 私達はただ京子さんが心配で心配でっ!」
「そうです! 我々は決して、野次馬根性で見に行ったわけでは!」
霧島、カエラ、そしてエレインが次々と言葉をあげる。
それに大王も続く!
「その通り! それは精々、三割程度だ! 大部分は君達の恋の行く末を、真剣に案じていての事だ!」
「ほう…… つまり三割は野次馬根性やったって事やな……」
「あ…… しまった……」
京子の拳骨が、またもや大王の頭に炸裂して、鈍い音が鳴り響く!
「痛い! 暴力反対!」
「大王様! あなたはもう喋らないで下さい!」
エレインからも叱責される閻魔大王……
大王の謝罪? は、逆効果だった様だ。
「京子さん! あなたは師匠の真心を信じられないのですか!」
「京子さん! 私とあなたの仲じゃないですか!」
「私達、今日凄く頑張りましたよ!」
「そうそう! 共に死線を潜り抜け、友情を培ったじゃないですか!」
大王は無視して、皆必死に懇願する!
「それとこれとは話は別や! この覗き魔集団どもが!」
「さあ! 女性陣はフリップを両手でバンザイする形で上げて、そのセクシーな水着をご披露するんや!」
「いいって言うまで下ろすんやないで!」
「え~~~~~!」
「え~~~~~!」
「え~~~~~! やない! 早うせい!」
「うう……」
「あぁ…… 何故私がこんな目に……」
「後一時間…… ここが閉まるまで、目一杯恥かいてもらうさかいな!」
そもそも、あの屋上でのお姫様抱っこ登場劇から何があったのかというと……
約一時間前に遡る……
* * *
京子を抱きかかえ、お姫様抱っこの状態で凄むシリウス……
呆れる一同だが、次の瞬間! 一同は揃って顔色を変える!
気絶寸前の赤面顔の京子を皆、堪らなく愛おしく想えてきて、気付いたら通信機に内蔵されているカメラを使ってシャッターボタンを押す者も出てきてしまったのだ!
エレイン、マクエル、そして閻魔大王である。
ちなみに霧島とカエラは、今にもキュン死にしそうな感じで悶え倒れ、写真を撮る余裕がない!
アルセルシアは不機嫌なリーズレットを、かなり適当にだが、一応
「…… おい……」
爆発寸前のシリウス……
「はっ! すいません。 つい!」
「何故か! 手が勝手に! 動いてしまいまして! 一体どうして?」
「いいねえ! 京子君! そのキュンキュンしすぎて気絶寸前の赤面顔! 普段見せない恋する乙女の顔! これは…… 萌える!」
「大王様! ちょっと、そこどいてください! そこの角度から撮りたいんですよ! それと今撮ったの、後で送ってください!」
「うぅ~~~~~~っ」
未だ正気に戻らず縮こまって、どうしていいのか、わからないといった様子の京子。
…… この顔…… く~~~~! たまらん!
一同は皆、そう想っていた……
いたのだが……
「…… はっ!」
ようやく我に返る京子。
と、同時にシリウスから降ろしてもらい、可愛かった顔は憤怒の表情へと殺気を漂わせながら変わっていったのである……
「……」
「何しとんのやぁ~~! おのれらぁ!」
完全にブチ切れた京子!
そして一同は、もれなく全員京子から拳骨を一発ずつ…… いや、大王は何故かついでにもう一発オマケでもらうのであった。
「ぐ~~~~~~!」
「ぐおぉ~~~~!」
「~~っ! 一切の迷いのない鋭い拳打! これは…… 効く! それにもう少し写真に収めたかったのに!」
「~~~! まさか弟子に拳骨をもらう日がくるとは!」
悶絶して膝をつく霧島とカエラ、そしてエレインにマクエルであった。
「何故、僕だけ二発も!」
「やかましい! なんとなくや!」
「ひどい!」
「痛つつ…… こら! 私、女神だぞ! 偉いんだぞ!」
「関係あらへんわ!」
「~~~! 痛いなあ! 恩を仇で返すなんて!」
「…… あんたとはマジで今度サシで話さんとあかんみたいやな!」
アルセルシアとリーズレットに至っては全く反省の色がない。
「さて…… どうしてくれようかな……」
一同を睨みつけるシリウスと京子……
「ひいっ!」
二人のあまりの殺気に気圧され、一同は連行される(その内、二人は逃走に成功したのだが)のであった……
* * *
そして、今のこの状況に至るのであった。
そこからさらに一時間…… 施設も全ての区画が閉まり、ようやく許しを得て解放された一同……
普段の服へと着替え終わったのだが……
皆、色々な意味で相当なダメージを負っている様子だ。
「…… もうお嫁にいけない!」
「…… もうお婿にいけない!」
両手で顔を覆い、大分まいった様子のカエラと霧島。
「くっ これ程までの羞恥を味わうとは!」
エレインも後悔の念が絶えない様だ……
ちなみに彼女含め、全員、撮った写真も消されてしまっている…
「やれやれ…… 本当にひどい目にあいましたね…… 大王様」
「全くだよ! マクエル君!」
もうこりごりといった様子の大王とマクエル。
「これに懲りたら二度とふざけた真似すんなや!」
「わかったら、ほら! 『ごめんなさい』は!」
「ごめんなさ~〜〜〜い!」
まるで親が子を叱るかの様な絵面で、この騒動は幕を閉じるのであった……
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