第69話 話を終え…… そして……
「あ! それともう一つ、気になってた事を思い出しました!」
霧島が思い出したかの様に言う。
「? なんだ? 霧島?」
「あー いえね、どうしてアラン戦の途中で黒崎さんはシリウスさんの力と記憶を取りもどせたんですか?」
「! そういえば……」
カエラも疑問の視線を黒崎に向ける。
「いや…… 正確に言うと…… 『ずっと前から徐々にその傾向はありました』が……」
「訓練時や戦闘時も、いくらなんでも『絶対にありえない早さで黒崎さんが強くなっていきました』から……」
「まるで『かつての戦いの感覚を記憶と力ごと思い出していく』かの様に……」
その質問に黒崎は推測交じりだが、こう答える。
「ああ。 それは多分なんだが…… 天界に満ちた霊力と俺の精神状態が、そうさせたんじゃねえか?」
「? というと?」
「いつだったか…… ああ、そうだ。 確かカエラとやりあった時にエレインさん達が言ってたんだったか……」
「元々、天界は常に霊力に満ちている…… 何かしらのきっかけで、その力が手伝い、何らかの形で覚醒する事があるって言ってたの覚えてるか?」
「! そういえば言っていましたね」
「黒崎さんが私との戦いで、人間であるにも関わらず『訓練なしでいきなり』気を発動させた時の事ですね」
「ああ。 元々俺の転生はイレギュラーな形で行われたもの…… ちゃんとした『転生の儀』で行ったわけではないし、表面上はともかく、深層心理ではシリウスだった頃の記憶や感覚が残ってたんだろう……」
「それが天界に満ちた気と、現状の自分と天界が置かれている状況に、俺も内心では常にあせってたからな……」
「恐らく精神的に追い詰められる事がトリガーになって、感情の高ぶり等と一緒に、元々持ち合わせていた力が忘れていた記憶と共に、徐々に黒崎修二としての俺の中にもどってきてたってとこだろ」
「そして天界に満ちた気が、かつての感覚を取りもどすのを後押しして、さらに戦いや訓練で、戦いの記憶を取りもどすのに決定づけたって事だろ」
「まあ、多分だけどな…… 俺もそっちの分野は詳しくねえし……」
「ただ、グランゼウス要塞での訓練時から、自分でも『明らかにおかしい早さ』で強くなっていく…… いや、『元々あった戦いの感覚』がもどってくる様な感覚に見舞われてたからな」
「なるほど…… 不思議な話ですが、絶対にありえない話ではなさそうですね」
「確かに…… そしてアラン戦の最後…… 黒崎さんが倒れ、私や霧島君も倒れて、絶体絶命の危機に
「まあ、多分だけどな」
「いえ、恐らくですがその推測で間違いないと思いますよ」
マクエルとリーズレットも、今の話を補足する形で入ってきた。
「理論的にはありえない話ではないですからね」
「うん。 兄上や
「そして数日前、僕にもその事を話して、彼の愛刀、宝剣デュランダルを僕が預かってきたんだ♪」
「まあ、まさかこんなドンピシャのタイミングで渡す事になるとは思わなかったけどね♪」
「いや、マジで助かったわ。 アランの魔剣相手に素手や不慣れな鎌での対応はやっぱり無茶があったからな」
「お役に立てて何よりだよ♪」
「しかし、凄い
「ああ♪ 何せ天界に何本かある
「基本的に上級神や閻魔一族に認められた者にしか与えられない類の武器ですからね…… 強力過ぎて当たり前です」
「ちなみにデュランダルを参考に、それでも彼の技術力をもってしても再現不可能だったから、途中から別方向へと鍛え上げ、魔の剣へと自身で作り上げていったのが、アランの魔剣グニアスだったんですよ」
「まあ、随分禍々しい方向へ出来上がって、完全に別物になってましたけどね」
「そうだったんですか」
「確かに
「もう二度とあんなの相手にしたくないってのが本音ですよ」
「私もですよ。 霧島君」
霧島もカエラも、もうコリゴリといった感じで苦笑している。
まあ、そういうわけにもいかなくなってくるだろうし、二人も覚悟は決まっているのだが……
「さて、と……」
ここで黒崎が立ち上がり、その黒崎に霧島が声をかける。
「? 黒崎さん、どちらへ?」
「ちょっと風にあたってくるわ…… 傷自体は治ってるが、まだ頭もボーっとするし、いきなり前世の記憶がもどったからな…… それに『色々整理してーんだよ』 このまま戦いの準備だけして戦場に行くってのもあれだしな」
「!」
「まあ、何かあったら通信で『連絡』くれ」
「……」
その言葉に反応する京子。
周りの者達も、黒崎の言いたい事はすぐに理解した様だ……
「…… ふう…… わかったよ。 修二♪」
「あ、黒崎さん! 最後に一つ!」
部屋を出ようとする黒崎に、マクエルが声をかける。
「ん?」
「かつての記憶と力を取りもどしたとはいえ、今のあなたは人間の黒崎修二の魂がベースになっているはずです」
「先程のアランとの戦闘の様に、一時的に! 短時間! かつての力を解放し、ふるう分には問題ありませんが、長時間その力を酷使し続けると、今のあなたの魂ではその力に持ちこたえられません……」
「体感的には、霊石を使ったパワーアップ時より、身体にかかる負担も少ない上に、その戦闘力も遥かに上でしょう」
「ですが実際は、霊石はただ単に体力を消耗するだけに対して、黒崎修二として『シリウス・アダマスト』の力を解放し続けると……」
「無茶な使い方をすると魂ごと消し飛びますよ…… 連続使用するのは精々5分…… 長くても十分位が限度でしょう……」
「それ以上は保証できません……」
「ゆめゆめお忘れなきよう……」
マクエルが真剣な目で黒崎に釘をさす。
「ああ…… さっきの戦いで感覚で理解している…… 大丈夫、無理はしねえよ」
そうやりとりして、黒崎は部屋を後にするのだった。
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