第68話 決意
「…… とまあ、こんな感じで奴等と出会って『怪物』とやりあって…… 後はお前らの知る通りだ」
「そして話をもどすが、俺がアランとの爆発に巻き込まれた後、かろうじてとはいえ、俺の命を繋いだ事…… さらに閻魔の城付近でいつの間にか倒れてたところをみると……」
「それこそ、女神級の治癒術と空間移動能力の一種を使わない限り、そんな事はまず不可能だ!」
「もし、アルセルシアかイステリア、もしくは最高神様がやってたら、それを黙ってる理由もないしな……」
「だとしたら、そんな事が可能なのは、もうたった一人しかいない……」
「それに…… 俺が目を覚ました時、懐かしい感じがした……」
「優しさと慈愛に満ち溢れた、覚えのある気配……」
「アルテミスの仕業としか思えねえんだよ……」
黒崎の発言に納得のいった霧島とカエラ。
「なるほど…… 確かにそれなら、シリウスさんの不可解な発見のされ方にも、納得はいきますね」
「しかし、シリウスさんがアルテミス様と雷帝と、そういう形で出会っていたなんて……」
「ええ。 そして出会って約ひと月後、大戦が起きたと……」
マクエルが黒崎に確認をとる様に問う。
「ああ。 襲撃場所やタイミングこそ、一見ばらけてる様に見えたが、どれもその日、警備が手薄な所や、今までの襲撃場所から、線で全て交わる点があった事……」
「そしてそれがあからさまなフェイクで、でも最悪襲撃がばれても、撤退しやすい地形でかつ、身を潜めるに最適な場所に撤退する際、使う可能性の高いルート…… その各襲撃場所からの全ての撤退ルートの方で交わる点があった事……」
「さらに天界の諜報部を毎回、
「ただ、襲撃痕や、アルテミス達の話、何より女神とその補佐役の二人と交戦して、無事で済んでる時点で何か超常的な力をもった常識外れの化け物が関わっていることもな!」
「おそらく近いうちに大規模に仕掛けてくる…… だからそれまでに戦力を整える必要があると……」
「それで情報を整理して、戦力と陣形を色々整えて、あの大戦に繋がったってわけだ」
「なるほど……」
当時、子供とは思えない程の状況把握能力……
恐らく他にも色々知恵を貸したのでしょうが……
先程の話でシリウスさんは、アルテミス様から、恐らく両親の死がきっかけで目覚めた潜在能力の可能性が高いと言われていたみたいですが……
両親が亡くなった事で、その後に! そんな力を、ただの子供が手にするなんて……
ある意味、残酷な話ですね……
やりきれないといった感情が巡りつつ、黒崎にそんな表情を見せない様にと、気を配る霧島。
話を続ける黒崎。
「アルテミス達は合間をぬって俺に剣の稽古をつけてくれたり、レオンは今までの任務で行った場所で起きた、面白い話とか聞かせてくれたり、施設に土産を持ってきてくれたりと、本当に良くしてくれたよ…… こんな俺なんかを相手にな……」
「まあ、全く遠慮しねえ奴等だったから腹立つことも多かったが…… それはお互い様だしな……」
「短い付き合いだったが、何だかんだで充実して、それでいて少し楽しかった……」
「多分、一応の納得はしたが、俺がまた復讐心に取りつかれない様に、施設の連中より遠慮なしに話せる事……」
「そして、頑張って生きていればどんな境遇の持ち主でも、過去の不幸を乗り越えられる位には、幸せになれる可能性は持っている……」
「とかなんとか考えて、気を使ってくれてたんだと思うけどな」
「さんざん世話になってたから、借りを作りっぱなしじゃ面白くねえし、いつだったか施設長に相談して、施設の掃除や仕事なんかを手伝う事で小遣い3か月分前借して、かなりの守護の
「わかりづらかったから俺とレオン位しか気づかなかったが、あの仏頂面のアルテミスがが珍しくデレやがったからな!」
「!」
「!」
「!」
「!」
「デレた! 女神様が?」
「意外ですね!」
「それは中々興味深い!」
「結構可愛いとこあったんじゃない。 彼女も♪」
これには流石に四人共、食いついた。
「ああ。 面白えからその事をレオンと一緒にイジリまくったら、その後、稽古と称してレオン共々いつも以上にボコボコにされたが……」
「あれはマジで殺されるかと思った……」
「あれで結構短気なとこもあったからな…… ったく大人げねー女だぜ!」
「まあ、そんなこんな色々あったから俺…… シリウスは、施設長とあの二人にとっては、俺を手のかかる、ほっとけねー息子みてーに想ってくれてたのかもな……」
「俺にとっても、あいつらは…… 口うるさい『家族』だったしな」
「実際、あいつらと出会ってなくて、いや出会った後も気にかけてくれなかったら、俺は復讐の道を進んで、そして何もできずにくたばってただろう……」
「今は敵同士になっちまったが、それでも…… 今でも感謝している……」
「黒崎さん……」
「本当に…… 素敵な方々だったんですね……」
「縁や絆に血縁は関係ない…… それが『本物』なら家族にだってなれる……」
「ふふ…… ますます僕も会ってみたくなったよ♪」
霧島やカエラ、マクエルはもちろん、リーズレットも感慨深い様子だ。
「多分会えるんじゃねえか? 近いうちに……」
「俺も…… 昔世話になった分位は恩を返しておかねえとな……」
「あいつらに天界を滅ぼすなんて大罪を背負わせるわけにはいかねえ!」
「力づくでも! ぶん殴ってでも! 目ぇ覚まさしてやるよ!」
「奴らの腐れ縁であり、家族でもある! シリウス・アダマストとして……」
「そして解決屋 黒崎修二としてもな!」
「黒崎さん……ええ! そうしましょう!」
「ふふ、良い啖呵だ♪ もちろん僕も最後まで付き合うよ♪」
「総長に同じく、私もお付き合いさせていただきますよ」
「私も同じくです! 一緒に頑張りましょう! 黒崎さん!」
「おまえら…… ああ! よろしく頼む!」
黒崎達は改めて、彼女達を、そしてその背後に蠢く陰謀を阻止する為に決意を固めるのであった!
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