第66話 三人の出会い ①
「俺が『シリウス』として生を受けたのは一二〇〇年位前になる……」
「一二〇〇年前というと!」
その数字に霧島はピンときた。
「ああ…… 例の怪物、『災厄』とも呼ばれてた奴が大暴れした、あの大戦が起きてた時代だよ」
「実際には、あの大戦事態が起きる前から、奴は水面下で力を蓄え、天界の連中を少しずつ眷属化して、戦力を揃えて言ってたんだが……」
「一時を境に、今みたいに行方不明者も増えていってたんだ……」
「俺のシリウスとしての両親も、死神だったんだが、ある暴動事件の鎮圧に向かった際に殉職…… 普通なら、そのまま閻魔の城に魂が運ばれるはずだったんだが……」
「…… 運ばれなかった?」
「ああ…… 丁度、そんな魂の行方不明者が『あからさまに続出する時期』だったな」
「恐らく怪物が天界に対して仕掛ける準備ができたから、コソコソする必要がなくなったってとこだろ」
「実際に大戦は、それからひと月と絶たずに起きたしな」
「そして俺は、天国エリアにある二十四番養護施設に引き取られる事になった」
「俺と同じ、孤児達が集まって、一緒に暮らすようになったんだ」
「二十四…… ああ! あの施設ですか」
「ああ。 両親以外、俺も身寄りがなかったからな……」
「ただ、俺は両親の魂の失踪がどうにも腑に落ちなくてな…… まあ、実際にありえない事態だ」
「調べてみたら、公にこそされてないが、似た様な事件がいくつもあった…… 場所、時間、事件が発生するまでの間隔…… 全てが上手くばらけてたが、ある法則性が存在し、その全ての事件が本来魂が行方不明になるなんて『絶対にありえない事』が発生していた……」
「実際その施設に入っていた子供達の中だけでも、俺の他にも二人程、家族の魂が行方不明ってのがいたからな」
「え? ちょっと待って下さい…… 調べたって、どうやって?」
カエラが疑問を投げつける。
この頃のシリウスはただの子供のはず。
一体どうやって情報を集めたのか……
「主に夜中に抜け出して、両親がよく利用していた裏の情報…… それもかなりディープな所にまで精通している、裏情報屋に会って、色々調べてたんだよ」
「裏情報屋って!」
「確かに腕の良い情報屋なら、諜報部並みの情報網を持っている者もいますが……」
「完全に非合法の存在じゃないですか! しかもまだ子供だったシリウスさんが、そんな!」
「まあ、実際は、ぎりグレーなところなんだが……」
「俺の両親の他にも、裏で取引して、諜報部でも苦戦している情報を掴んでもらって、結果、天界の治安維持と事件解決に役立ててる奴も、裏では結構いたんだよ」
「俺は死神ってのが、どんな仕事してんのか興味があったから、よく親の後をつけてたら、そういう情報の取引をしてる時を見かけた事があってな……」
「もう、どこからツッコんでいいのかわからない位ですが……」
「蛇の道は蛇って事ですか」
大分呆れ顔の霧島とカエラ。
構わず続ける黒崎。
「そういう事だ。 特にあの時代は、今ほど天界の治安維持や様々なシステムも揃ってなくて暴動も多かった。 その質も、厄介な事件が多かった時代だし、綺麗事だけじゃ、あの時代の平和は守れなかっただろうしな」
「だからって!」
「まあまあカエラさん。 今は話の続きを聞きましょう」
「黒崎さん。 続きを」
「ああ。 まあ、当然その情報屋も知人の息子だからといって、子供の俺なんかに情報を売るわけがなかった……」
「だから取引を持ちかけた。 もし俺のほしい情報を渡してくれたら、あんたの仕事を一生タダで手伝ってやる! さらに施設から定期的に金目の物を流す!」
「黒崎さん!」
あまりの蛮行に、たまらず怒鳴るカエラ。
そして悪びれる様子もなく、さらに続ける黒崎。
「後、お前の存在をバラされたくなかったら、俺の言う事を聞けと」
「えげつな! 最後のに至ってはただの脅しじゃないですか!」
「何やってんですか! 黒…… あ~、その時はシリウスさんか! 全く!」
ツッコむ二人とは対照的に、笑いながらリーズレットも話に入ってくる。
「ははは! 子供の頃から良い性格してたんだねえ! シリウスって♪」
「いや、笑い事ではないですよ。 総長」
「全く…… なんて可愛げのない子供だったんですか」
マクエルもほとほと呆れている。
「まあ、俺も両親を
「それなりどころではないと思いますけど……」
「で、話をもどすが、当然、いくら脅…… 取引したところで、子供の俺の言う事なんか歯牙にもかけない。 最悪の場合、俺を始末して雲隠れすればいいだけの話だからな……」
「だから施設の子供達に、俺が朝までにもどらない日が一度でもあったら、必ず! すぐに!施設長に報告と同時に、情報屋のこれまで行ってきた行いや、繋がってる可能性のある連中のリスト、潜伏する可能性の高いエリア等書き記した手紙を数百通と書いて、顔写真つきで渡しておいたから、施設長含め、とにかく色んな奴らに渡しまくる様に伝えておいたんだ」
「…… って言ったら『快く』協力してくれる様になってくれてな!」
もはやドン引きしている霧島とカエラ、そしてマクエル。
リーズレットはやはり爆笑している。
「そしたら、ここしばらくの間、奇妙な行方不明事件が続出しているときたもんだ!」
「それらの事件の共通項を探り、いくつか次の事件発生地の候補を絞り込み、確率の高そうな所から当たって行くことにしたんだ」
「武器も情報屋が『快く卸してくれた』からな」
「とんでもない子供だな……」
「いや…… なんていったらいいのか、もう……」
「シリウス殿は子供の頃から規格外だったんですねえ……」
「でも実際大したものだよ♪ 情報屋を脅し、集めた情報を整理、それもあらゆる可能性を考慮に入れて、多角的な見方で、諜報部ですら苦戦している次の事件が発生するかもしれない場所を割り出すだなんて……」
「プロ顔負け…… 大した子供だよ♪」
「ま、確かにそうですが、褒めていい所ではないですよ、総長」
「まあ、それでその割り出した場所で、恐らく一連の事件に関わっている何者かが来るはず……」
「俺はそいつから親の魂の居場所を突き止め、解放させる為……」
「そしてその後…… そいつをぶっ殺して親の仇を討つために、目星をつけた場所へと向かったんだ……」
「その向かった先で…… あいつらと出会ったんだ……」
「女神アルテミス…… そして雷帝レオンバルトに……」
「! あの二人が!」
「上級神と、それを補佐する程の方が直接いらしてたんですか!」
「ああ。 あまりにも不可解な事件…… 厄介すぎると判断して、上級神やその周りの連中も調査し始めていたみたいだ」
「そして奴らは、そこで初めて怪物と交戦したみたいだが、俺が着いた時は、すんでのところで取り逃がした後だったみたいでな……」
「そこで二人に見つかっちまって…… まあ、互いに第一印象は最悪だったな……」
周りが話を聞いている中、黒崎の話はさらに続いていく……
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