まさかあの世に来てまで仕事をするとは…… こうなりゃとことんやってやる！

第59話 覚醒！ そして終結

「おらぁ！」

　シリウスと呼ばれたその男は、瞬時にアランとの距離を詰め強烈な右の拳を叩き込む！

「ぐっ！」

　アランは魔剣でガードするが、そのパワーに後方へと吹き飛ばされる！

「黒崎……　さん？　シリウスっって……」

「喋るな、霧島！　説明は後だ！」

「よく持ちこたえて、二人を逃がしてくれた！」

「悪いがもう少しだけ待っててくれ！　すぐに奴を片付けて、お前を手当てするからよ！」

「後、悪いついでにこれを借りるぜ！」

　シリウスはそう言うと霧島の鎌を右手にとる。

「くっ！　おのれシリウス！」

　吹き飛ばされながらも魔剣を離さないのは流石というべきアラン。

　そして容赦なく魔剣を伸ばし、シリウスを襲うアラン！

　蛇のように襲い掛かる魔剣！

「あんまり使い慣れてねえが、仕方ねえ！」

　流石に相手のこのリーチに対して、素手では分が悪すぎると判断したシリウスは霧島の鎌を借り、アランに応戦する！

　不慣れな武器にも関わらず、上手く魔剣を捌いていくシリウス。

　だが、逆に言うとそれが精一杯だった。

「どうした！　その程度か！　シリウス！」

「くそったれが！」

　流石にそう上手くはいかねえか……

　はええとこ、霧島を治療しねえといけねえのに！

　くそ！　『あの剣』さえあれば！

　それに『この状態』も長くは続かねえ！

　次第に追い詰められていくシリウス。

　そこへ、一つの強大な霊圧を放つ存在が、猛スピードでこちらへ向かってきているのを二人は察知した！

「！　何だ！　この馬鹿でかい霊圧は！」

「この隠そうともしねえ気は……　奴か！」

「避けて！」

　次の瞬間！　巨大な斬撃がアランを襲う！

　シリウスは一足早く下がって、それを躱す。

　だがアランもその斬撃を、後方へ飛んで躱していた！

「大丈夫かい！　二人共！」

　駆けつけてくれたのは、リーズレットだった！

「！　剣神だと！　くそ！」

「助かったぜ！　リーズ！」

「！　『あなた』は！　やはりそういう事か！」

「そしてアラン・カーレント！　報告を聞いて多分そうかと思ったが、ビンゴだったみたいだね」

「手負いの君等、僕の相手ではないが……　これ以上僕が出しゃばるのも、あれか……」

「シリウス！　これを！」

　リーズレットは、あるＰＳリングをシリウスに向かって投げ渡す！

　しっかりと受け取るシリウス！

「！　こいつは！　諸々助かったぜ！　リーズ！」

「貸し一つだよ♪　さあ！　あなたの手で、今度こそ！　九〇年前の決着をちゃんとつけるといいよ！」

「おう！」

「召喚！」

　シリウスは、鎌を置き、そのＰＳリングから発生した空間から、白銀に輝く巨大な両刃の大剣を取り出した！

「それは！」

「久しぶりに見たね……　宝剣……　デュランダル！」

「もう終わりだ、アラン……　お前はやり過ぎた……」

「くっ！　シリウス！」

「……　一体、何が……」

「もう大丈夫ですよ。　霧島君」

　意識を失いかけている霧島の所に、暖かなオーラが傷を癒す。

　マクエルであった。

　リーズレットと共に報告を受け、一緒に駆けつけてくれたのだ！

「！　マク……　エルさん……」

「しゃべらなくて結構です。　本当に……　よく持ちこたえて下さいました」

「かつての不肖の弟子が本当に申し訳ない……　本来なら私が見つけ出し、けじめをつけなければいけなかったのですが……」

「京子とカエラさんなら大丈夫です。　私がカエラさんを、ある程度回復させておきましたから」

「本来なら先に避難させるべきなのでしょうが……　京子も見届けると言って聞かないもので……」

「全く、あの子も頑固なんですから」

「あくまで応急処置なので、ゆっくり後から来るようにと伝えてあります」

「まあ、そこまで離れてなかったみたいですし、すぐに戻ってくるでしょう」

「そう、ですか……」

「ええ。　それに……　もう決着はつけてくれそうですから……　『彼』が」

「！　そうだ！　マクエルさん！　黒崎さんのあの状態は一体……」

「それは……」

「！　師匠！　もはやこれまでか……」

　マクエルの姿に気づくアラン。

　シリウスも気づいた様だ。

　勝負はもうついたも同然……

　だが彼は、撤退するつもり等毛頭なかった……

「……　決着をつけるぞ！　シリウス！」

「ああ……　こい！　アラン！」

　宝剣に闘気を込め、構えるシリウス！

　そのシリウスに、魔剣を持って斬りかかるアラン！

　正面から迎え撃つシリウス！

「ああああああああ！」

「はあああああああ！」

　互いの渾身の一撃が交差する！

　真っ二つになり、切っ先が地面に突き刺さる剣……

　魔剣グニアスであった……

「……　勝負、あったね……」

「お前の……」

「負けだ……　アラン！」

「ぐはあ！」

　魔剣と共に身体を切り裂かれていたアラン。

　大量の血飛沫が辺りを舞う！

　致命傷だった……

　それでも膝をつかないアラン。

「ごふ！　はあ、はあ……　どうやら、私の負けの様だな……　『また勝てなかったか』……」

「……」

「……　やはり貴様は気に食わない……　それ程の力がありながら……　天界の甘い戯言にいいように使われおって……」

「以前貴様に敗れた時……　『あの方』に見いだされ、救われ……　何があろうとも、あの方の力になろうと思った……」

「例えどんな形であれ……　私の様な者に……　ごふ！　……　最後のチャンスを与え、新世界の可能性を見出してくれた、あのお方の……」

「そして……　尚更、貴様には負ける訳にはいかなかった……　『私と同じ……　あの方に救ってもらったお前』だけには！」

「！　アラン……」

「あのお方を……　真に、支えられるのは我らだけだ！　あの方の寵愛（ちょうあい）を受けていながら、それでも天界にいい様に使われている貴様等では、断じてない！」

「あの方は貴様を仲間にするのも考えていた様だが……　決着をつけたいという私の意志を尊重して下さった……」

「まあ、そこまでしていただいて、結果は無様なものだったが……」

「あの方に、ろくな恩返しもできなかったのが本当に心残りだが……　これも結果……　受け止めるしかあるまい」

　ここで京子達が、マクエルと霧島の所に到着した！

「師匠！　達也はんも！　無事やったか！」

「よかった……　霧島君」

「二人共……　どうやら……　お互い、命拾いした様ですね……」

「ええ、本当に……」

「ほんまに……　ほんまに良かった……」

　本当によかった……

　三人共、安堵の表情を浮かべる。

「って、黒崎さん！」

「？　何か様子が……」

「そうやな……　！」

「え？」

　……　この感じ……　うそやろ……

「ゆくがいい。　シリウスよ……　あの方のもとへ……　たどり着けるならな……　間もなく『準備』が整う……」

「お前の処遇は、あの方にお任せする……　もし歯向かうつもりなら、精々覚悟を決める事だな……」

「兄弟子！」

「！　京子……　戻ってきていたのか」

「私はもう終わった……　後は好きにしろ」

「傀儡にしてでも新世界に引っ張ってやろうかとも思ったが……　もう何も言わん」

「最期まで自分の好きに生きるがいい……」

「兄弟子……」

「師匠……　袂を分かったとはいえ、最期にあなたの顔を見れて良かったですよ」

「精々最期の悪あがきでもするといいですよ」

「あなたという人は……　全く……」

「……　やっぱり『あいつ』が絡んでるのか……　お前があいつに助けられてたのは意外だったが……」

「言われるまでもねえよ……　何があったか知らねえ……　いや、大体の予想がついてるが……　あいつが暴走してんなら、それを止めんのは俺の役目でもある」

「奴に拾われ、助けられた、シリウス・アダマストとして……」

「そして解決屋、黒崎修二としてもな！」

「！　シリウスやて！」

　やっぱりや……　

　やっぱりそうなんや……

　京子の目から大粒の涙が流れている。

　隣のカエラに至っては、何が何だかわからないといった様子だ。

「ふん……　やはり貴様は気に食わん……」

「いいだろう……　好きにするがいい……　そして行って返り討ちにされてこい」

「だがな！　シリウス！」

「貴様の手にかかって消えるのは私のプライドが許さん！」

「！　お前！　まさか！」

　まさか『あの時』みたいに自爆する気か！

　アランは自身の右手で胸を貫いた！

「アラン！」

「兄弟子！」

「ごふぁ！　はあ、はあ、はあ……　安心しろ……　あの時の様に自爆はせんさ……　もし私が敗れた時は自分で決着をつける……　引き入れるにしろ、相対するにしろ……」

「それが、私の我儘（わがまま）を許してもらう際に、あの方に言われた言葉だ……」

「さらばだ。　シリウス……　いや、黒崎修二よ」

　そう言い残して、自身の急所を貫いたアランは光に包まれ消えていった……

「じゃあな……　アラン」

「兄弟子……」

「せめて安らかな眠りを……」

　シリウスと京子、そしてマクエル……

　アランの散り際を見届けた三人……

　そして、その四者を見届けた霧島達……

　武器を収め、霧島達の所へ集まるシリウス達。

「あの……　黒崎さん？　カエラさん、京子さんも……」

　シリウスって名前……　どこかで……

　京子やカエラも困惑している……

　そこへ、マクエルとリーズレットが口を開く。

「お久しぶりです。　シリウス殿。　またお会いできて嬉しい限りです」

「そうだね♪　九〇年振りだね！　シリウス♪」

「いや……　『総司令』殿、と言った方がいいのかな？」

「……」

「……」

「え～～～～～～～～～～！」

「え～～～～～～～～～～！」

　霧島とカエラがが驚きのあまり、大声をあげる！

「ごふ！　ごふ！　あいたたたた！　はあ、はあ、　えぇ？」

霧島に至っては、むせて背中の傷に響いて、痛がって、リアクションに忙しくなっている始末だ。

「今は黒崎だ。　黒崎でいい」

「久しぶり……って事でいいんだよな？」

　黒崎の秘密が遂に明かされようとしていた……