第58話 命懸けの攻防戦! そして……

 霧島が仕掛ける!


 アランとの間合いを一気に詰める霧島!


「ふん! 馬鹿が! その程度のスピードで」


 霧島に斬りかかるアラン!


 だが、その斬撃は霧島の身体をすり抜ける。


「なっ! 残像!」


 動きに緩急をつけ、残像を発生させていた本物の霧島は、上に飛び、その鎌を振りかぶっていた。


 高速で自身の体重ごとフルパワーで鎌を振り落とす霧島!


 魔剣を持っている右手と左手も剣に添え、受け止めるアラン!


 あまりの衝撃だったのか、アランが踏ん張っている地面が大きく崩れる!


 さらに素早く、霧島は横に回転しながら、その鎌でアランの首を狙う!


 身体をさらに低くして躱すと同時に、前方へ飛び距離をとるアラン!


 逃がすまいと右手で鎌を超高速で回転させながら突っ込む霧島!


 それに対し、構えるアラン!


 互いの渾身の一撃が激しくぶつかり合う!


「! こいつ!」

「ちぃ!」


 それを皮切りに両者無数の連撃を放ち合う!


 アランと互角に渡り合う霧島!


 いや、左腕を使えないアランの方がむしろ押されている位だ!


 ここまで接近されていると、魔剣を変形させ暴れまわせるのもかえって危険!


 アランは防戦一方になってきていた。


「くっ! 思ってた以上にやりおる!」


「はあああああ!」


 対する霧島は反応が鈍い、アランの負傷している左サイドをできる限り制して、攻撃を仕掛けている。


「若造が! 小癪な真似を!」


 アランが左腕に力をこめる!


 霧島の鎌がアランの左肩に振り降ろされる!


 だがアランは気を左肩に集中させこそしたものの、あえてまともにその一撃を受ける!


 アランの返り血がとぶ!


「がああ!」


「なっ!」


 何とアランは、そのまま強靭な精神力で左手で自身の肩に刺さって止まった霧島の鎌を掴むと同時に、既に気をこめた右拳で霧島の顔面を殴り飛ばす!


「がはぁ!」


 吹き飛ばされ、丸腰になった霧島に向かって、魔剣を解き放つアラン!


「! まずい!」


 またも周辺の木々を荒らしながら、辺りを蹂躙する魔剣。


 霧島は逃げるので精一杯だ。


 直撃は避けているものの霧島のスピードをもってして回避に専念していても、徐々に斬り刻まれていく。


「くそ! もう少し近づければ…… よし!」


 霧島は何とか魔剣から致命傷は避けつつ、徐々にアランとの距離を一定距離まで詰めてきていた。


「ここまで近づけば! …… 武装解除!」


 霧島の右手の前方に収納空間が現れる。


 一定距離まで近づかないと発動しないが、武器は収納空間を出された時、その空間にオートで収納される機能がある。


 霧島はそれを上手く利用したのだ!


 左肩に突き刺さったままの鎌が反応してアランの左肩から強制的に抜け、収納される!


「ぐあああ!」


 鎌が抜けた事で左肩から血が噴き出し、激痛に襲われるアラン!


 チャンスと見た霧島はアランの右手に狙いを定め魔剣を落としにかかる!


 魔剣さえどうにかできれば、今のアランになら勝てるという霧島の判断だ。


 アランの右手を手刀で砕き、魔剣を落としたところを遠くに蹴り飛ばせば!


 だが、アランも一筋縄ではいかない男だった。


 痛みを耐え、向かってくる霧島に対して時計回りに自身の身体を回転させつつ、カウンターの形で霧島の背中を、魔剣で深く切り裂いた!


「がはっ!」


 そのまま吹き飛ばされる霧島!


 ただ、アランの左肩も最早上がらなくなっていた。


「ぐうぅぅ! ここまで手こずらされるとは!」


「ごふ! ごほ! はあ、はあ……」


 吐血する霧島。





 あれ…… しくじったなあ……


 まさか、あそこから切り返すだけの力が残ってたなんて……


 …… 気合い入れれば、立てなくはないが、まともに戦えるか? 結構出血もやばいな……


 京子さん達も、あの状態じゃまだそこまで離れてる事はできてないはず。 


 もう少し時間を稼ぎたい…… 


 というか、ここまできたら確実にこいつは倒しておきたい……


 どうせ死ぬなら……






「どうやらもう満足には動けそうにないか……」


「!」


 そう言うアランの言葉とは、対照的な行動をとる霧島。


「召喚!」


 再び鎌を出し構える霧島。


 彼の目はまだ死んでいない……


 凄まじい闘志を秘めた戦士の目だ。


 だからといって、彼の背中の出血は止まってはくれない……


 彼の両膝は震えていた……


「もう少し…… お付き合い願いましょうか……」


「…… どうしてそこまで……」


「友人の仇と、命もかかってますからね…… こういう時位は、漢をはらないとね」


「…… やれやれ。 先程の女もそうだが、一一七支部の連中は本当に厄介な奴らが揃っているな」


「どうやら最優先で殲滅しておかないと、いざ『その時』がきた時に、我々にとって、大きな障害になる可能性がある!」


「そんな事はさせませんけどね」


 あ~ やば…… まじでしんどい…… 目が、かすんできた……


「敵ながら貴様は、この私相手によくやった…… もう無理をするな。 せめてもの情けとして次の一撃で終わらせてやる」





 …… ここまでか…… すいません。 黒崎さん…… もうちょいなんですけど、仇…… とれなさそうです……


 すいません…… カエラさん、京子さん……


 メアリー司令…… エレインさん……


 そして、大王様……


 後はお願いします……















 …… 何だ…… 俺は殺られたのか?


 …… いや、もう死んでいるんだったな…… あ~、死後の世界ってのは、ややこしいな。


 未だに実感がわかなかったが……


 だが、どうやら…… 本当にここまでらしい……


 確か死者の魂がそのままもう一度死ぬと、本当にそれでおしまい…… 


 転生もできず魂は消滅だったっけか……


 結局あの世来んだりした先でも、やるはめになった解決屋業務も失敗…… 


 随分中途半端な結末になっちまったな……


 あそこに見えるのは、アランとかいういけ好かない奴と…… 霧島か……


 くそ! 助太刀してえが…… もう俺は……






 俺は?


 ちょっと待て……魂が消滅して、無になってんだったら何故俺はまだ意識がある?


 それに何だこの感じ…… 良く考えれば、さっきから身体が暖かい感じがして、痛みが徐々に引いていっている様な……


 それに力も…… 何だか湧いてきてる様な……


 それ以上に、ずっと気になってた事が……


 アラン・カーレント…… 奴の名前を一週間前の緊急会議で初めて聞いた時……


 何故だか胸の中がざわざわした……


 初めて聞いた名前とは思えなかった……


 俺は『奴と会った事がある?』


 奴が戦いで傷ついてボロボロになった姿も、周りがめちゃくちゃになった事も……


 そして、俺が死んだ事も?


『俺は似た様な状況を過去に経験した事がある?』



 何だ…… 何だ! この感覚は! 記憶は!


 何が何だかわからず、頭の中で混乱する黒崎の胸をドクンと胸打つ!


 黒崎の脳裏に、とあるビジョンが流れる。


――

「マクエル…… 後は任した……」


「わりいな…… 京子…… 達者でな」

――


「!」


「そうだ! 俺は!」


「あああああああああ!」


 少し前から黒崎を包んでいた薄い、ぼんやりとした光が突如、力強い光の竜巻となり激しく立ち昇った!



「! 何だ!」


 光の竜巻の中から現れたのは、桁外れの霊圧で髪が軽く逆立ち、圧倒的な存在感を纏っている黒崎であった!


 しかも先程受けた傷やダメージが全てなくなっている!


「黒崎修二だと! まだ生きて……」


「! いや、ちがう! 黒崎修二ではない! この強大な霊圧は!」


「…… そうか! くくくく…… 『やはりお前だった』か!」


「もう現れてくれないのかと半ば諦めていたが……」


「ようやく『目を覚ました』か!」


「待っていたぞ! 『シリウス』よ!」


「さあ! あの時の決着をつけようぞ!」



 頭を抱える黒崎…… いや、シリウスと呼ばれた男。


「…… あ~ そういう事だったかぁ……」


「全部思い出したわ……」


「久しぶりだな。アラン…… 再会早々でわりいが……」




「ソッコーで片付けさせてもらうぜ!」

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