第57話 黒崎倒れる! 霧島の覚悟!

「! しゃれになってねえぞ! これ!」


「黒崎さん!」


 凄まじい轟音と共に辺りを蹂躙していくアランの魔剣グニアス!


 黒崎も何とか凌いでいるが、一気に距離を空けられ、追い詰められていく!


 霧島も障壁を全開にして、カエラと京子を守っているがそれが精一杯といった状況だ!


「霧島さん! 私はもう大丈夫です! 私達に構わず黒崎さんの援護を!」


「! 何言ってるんです! どう見てもこれを凌げる程回復してないでしょ!」


「だけどこのままじゃ黒崎さんが!」


「くっ! 増援はまだか!」


 身動きのとれない霧島!


 黒崎はどんどん追い詰められている!


「おおおおおお!」


 とうとう捌ききれずに気を張って逃げながら防御に専念せざるを得なくなってきた黒崎。


 強化ブーストの反動も身体に来はじめている。


 だが今解いたら、瞬殺されるのは確実!


 完全に手詰まりになった!


「調子にのりおって…… 貴様ら全員皆殺しだ! 京子もここで一旦殺し、魂だけ持ち帰らせてもらう!」


 このままじゃ全滅だ!


 イチかバチか!


 黒崎は両手を前に交差する形で、気を更に高め、防御力を少しでも上げつつ、被弾覚悟でアランとの間合いを猛スピードで詰めようと突っ込んだ!


 黒崎の身体がどんどん切り裂かれるが、お構いなしに突っ込む黒崎!


 下手に逃げまどうよりも、前方の守りを固めて、攻撃を捌きつつ突っ込んだ方がまだ被害が最小限になるといった黒崎の判断だ!


「黒崎さん!」


「まあ、そうするしかないよな」


 その動きを読むアラン!


 次の瞬間!


 黒崎の右の手刀がアランの心臓目掛けて飛んでくる!

だがアランも何とか躱し、完全には回避しきれなかったが致命傷は避け、左腕が貫かれるにとどまった!


 そしてアランも、剣のサイズを戻す暇がなかった為、剣を持っている右手を一旦はなして、空いた右手の手刀でカウンターを仕掛けていた!


 咄嗟に身体を捻り、黒崎も致命傷を避けたが、黒崎も左肩を貫かれる!


「ぐっ!」

「ぐあ!」


 両者痛み分けで互いに距離をとる!


 アランは魔剣を回収しつつだ。


 互いに同程度のダメージ…… いや、無理に突っ込んできた黒崎の方が明らかにダメージを負っている様子だ。


「くっ!」


 やべえ…… 色々と限界みてえだ……


 黒崎はとうとう強化を解除してしまう。


 膝をついて動けなくなった黒崎。


「はあ、はあ、はあ……」


「ぐっ…… 全くふざけたものを使いおって! 貴様が突っ込んでくる事は容易に想像ついたが、それでもそのスピードは厄介だったな…… 完全に避けたつもりが私まで腕を貫かれるとは……」


 左腕からおびただしい出血があるが、アランは立ち上がり、黒崎に向かって歩を進め、魔剣を構えた。
















 あー、こりゃあ、やべえな…… 





 くそったれ! ここまでか……






「死ね! 黒崎修二!」


 次の瞬間、魔剣は黒崎の身体を縦に切り裂き、黒崎は血の海に沈んでいた。

 





「黒崎さん!」

「黒崎さん!」

「修二はん!」


 辺りに三人の悲鳴がこだまする。


 黒崎の目に光は失われていた……


 誰がどうみても、もう助かる傷ではなかった……


 その上、既に魂だけの黒崎はもう一度死んだら……


 三人の顔が絶望に沈む……


 そしてそのまま絶望の感情は、怒りの感情へと変わっていく!


「カエラさん…… 無茶を承知でお願いします…… 何とか立ち上がって、京子さんと共にここから離脱して下さい!」


 霧島の目が、かつてないほどの怒りを纏い、殺気立っていた……


「! 霧島君! 私も戦いますよ!」


「カエラさん!」


「!」


「その気持ちは京子さんを守る事に使って下さい! 奴の手下が現れないとも限りません! トリガーを引く位の握力はまだ残ってるはずです!」


「ただ、奴の攻撃をなるべく捌きますが…… そちらにいく攻撃を全て捌ける自信は正直ありません」


「二人には何としても生き残ってもらいたいのですが…… 『最悪の場合』も一応、覚悟しておいて下さい」


「霧島君……」


「達也はん……」


「そのかわりと言ってはなんですが……」












「奴は…… 僕が何が何でも倒します! 例え刺し違えてでも!」


「あかん! 達也はん!」


「があああああああ!」


「カエラ?」


 歯を食いしばって立ち上がったカエラ。


 カエラは霧島の目をじっと見る……


 死神として職に就いた以上、殉職の可能性も覚悟しなければならない……


 霧島の目はその覚悟が定まり、そして、その時が来たと強く目で訴えていた……


 ここは任せてもらう……


 そちらは頼んだ…… 


 互いに目で会話をする二人……


 ならば自分もその覚悟にこたえるのみ!






「霧島君…… ここはお願いします……」


「お任せを!」


「ちょっ! カエラ! 何言うてんねん! 達也はんも! 一緒に逃げるんや!」


「京子さん!」


「!」


「…… お願いします……」


 悔しさに溢れるカエラの表情……


 ああ…… ウチのせいや…… ウチがバレずに一人でここへ来れてたら……


「そんな事はありませんよ! 京子さん!」


「!」


 京子が何を考えているかカエラには容易に想像がついていた。


「どのみち奴が潜伏してた時点で、放っておいたら相応の被害は確実に出ていたでしょうし、交戦の可能性もありました」


「そして私達は死神…… 皆、『最悪の可能性』も覚悟はしています……」


「だから別に京子さんのせいなんかじゃ、絶対ないですよ」


 優しく語りかけるカエラ。


「カエラ……」


「それに霧島君なら大丈夫ですよ…… よく同列にされてますけど、純粋な戦闘力は彼の方が私よりも上です! 悔しいですけどね!」


「ああは言いましたが、傷ついているアラン相手になら、後れを取る事は絶対にないですよ!」


「いやー、実はそうなんですよ~ 僕、こう見えてもガチで強いですからね~」


 少しでも京子を安心させようとする二人。


「二人共…… わかったわ!」


 二人の覚悟を痛感した京子。


 これ以上二人の邪魔をするわけにはいかん!


 何が何でも逃げ切って応援を呼ばんと!


「カエラ、歩けるか?」


「…… 余裕ですね! ていうか走れます! 京子さんの治療のおかげです!」


「とばしますから、遅れずについてきてくださいね! 京子さん!」


 明らかに無理をしている……


 だがここで、それを言うのはカエラの覚悟に対して失礼だ。


「わかったわ! ほな行こか!」


「達也はん…… 『また後でな!』 絶対やで!」


「! ええ。 わかりました。 『また後程!』 そちらもどうか、お気を付けて!」


 カエラと京子はこの場を離れようとする。





















「逃がすと思うか?」



「通すと思いますか?」



「はああああああああ!」



 霧島が闘気を全開放する!


「行ってください!」


「! お願いします!」


「気ぃつけてな! 霧島はん!」


 カエラと京子が木々に隠れながら離脱した。


「…… どうやら、ただの雑魚ではないようだな……」


「久々ですよ…… ここまで頭にきたのは…… あなたは、どんな手を使っても! ここで滅します!」


 黒崎さん…… 仇は必ず! 僕がとります!


 鎌を構える霧島。


 しかし霧島もアランもまだ気が付いてはいなかった……


 黒崎の身体のまわりに異変が起きているという事を……


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