第56話 死闘！ 黒崎vsアラン！
「現れたか…… 黒崎修二！」
べっと口から血と折れた前歯を吐き出し、立ち上がるアラン。
「誰だてめえ…… 奴らの仲間か？」
「どっちにしろ、こんな真似してただで帰すつもりもねえがな！」
「霧島！」
「はい！」
黒崎の声と共に、素早く霧島が現れ、カエラを抱え込み京子の所へ一瞬で移動する。
そして霧島は、京子の拘束具を闘気を込めた手刀で素早く破壊する。
「大丈夫ですか！ カエラさん！ 京子さんも！」
「霧島君……」
「達也はんも！ よう来てくれたわ！ 二人共！」
「遅くなってすいません！ まさかこれ程の事態になっているとは！」
「京子さん！ いきなりで申し訳ないですけど、すぐにカエラさんの治療を！」
「！ わかったわ！」
京子はすぐにカエラに治療系のオーラをあてて、カエラを治療する。
「京子、さん……」
「しゃべらんといて！ ほんまにすまん！ カエラ…… ウチのせいでこんな……」
「はは…… 大した事、ありませんよ……」
「黒崎さん！ そいつはアラン・カーレント！ 先日の会議に名の上がってた敵の主力です！」
「！ てめえが！」
敵から視線を離さず、霧島の言葉を確認する黒崎。
「ふん。 順番が狂ったが…… まあいい！ 先に貴様らを始末させてもらうぞ！」
「やってみろよ！ 今度は俺が相手してやる！」
まずい！ 相手があのアラン・カーレントなら黒崎さんに勝ち目はない！
「黒崎さん！ 代わって下さい！ 僕が戦います！」
相手は格上…… 本来なら全員がかりでかかりたいところ……
だが今はカエラさんは負傷し、非戦闘員の京子さんもいる……
誰か一人は必ず守りに入らなければならない！
黒崎さんではアランに勝てない！
自分でも一人では厳しいが、それでも何とか勝負にはなるかもしれない！
カエラさんが回復するまでに時間を稼ぐしかない！
そう考えを巡らし、黒崎に声をかけるが彼は既に切れていたのだ。
霧島の声を無視して戦闘モードに入る黒崎！
「はあああああああああ！」
黒崎が闘気を全開放する！
「！ 黒崎さん！ 待って下さい！ 落ち着いて！」
「ん？ …… !」
黒崎さんの闘気量が先程の訓練時より上がっている！
やっぱりおかしい…… 黒崎さん、あなたやはり……
「解放！」
「な！ 黒崎さん！」
いきなり霊石を解放して
使いどころは慎重に見極めないと、すぐにへばって……
いや！ 相手は遥か格上！ 出し惜しみはかえって危険という事か！
何という決断力！
ったく！ どんだけ
黒崎の霊石解放による
「！ 何だと！」
驚くアランの目の前にいた黒崎の姿は、既に彼の視界から消え、その瞬間、彼の右拳がアランの顔面にめりこむ！
「ぐぁっ！」
吹き飛ばされるアラン！
だがすぐさま体勢を立て直す！
が、黒崎の手刀がアランの右の眼球目掛けてすぐ目の前まで飛んできていた！
「！ くっ！」
頬を掠めたが間一髪、かろうじて左へ躱すアラン！
だが、躱された時の避ける動作と方向を予測していた黒崎が、アランに躱された右手の手刀をそのまま横に流し、アランの顔を掴み、左手も添え、そのまま両手で黒崎の身体に引き寄せると同時に右膝でアランの顔面を強打する！
そのまま右膝でアランの顔面に三連撃！
「おらああ！」
「！ ぶぁっ！」
そして同じく顔面に思いっきり頭突きをして、最後に渾身の左ストレートを叩き込む黒崎！
「らあああ！」
「がはあ！」
またも吹き飛ばされ、倒れるアラン。
「…… す、凄い！」
「あ…… あれが黒崎さん？」
「凄いわ！ 修二はん！」
黒崎さんが短期間でここまで強くなっていたとは……
特訓に付き合っていた自分から見ても予想外の展開だ！
ただ、それ以上に……
よ、容赦ね～！ ヤンキーの喧嘩殺法みたいな戦い方するなあ！ 黒崎さん！
けど、一見、雑な喧嘩に見えますけど、その実、洗練されていて、ジークンドーを絡めた急所を狙う攻撃に、優れた先読みのセンスも織り交ざっている……
そして怒りと冷静な判断力、そして先程の決断力が見事なまでに共存している……
今までにも何度か思いましたが、本当に…… 黒崎さん、あなた生前、どれだけ修羅場潜ってきたんですか！
「おい！ こんなもんで済むと思ってんじゃねえぞ！ てめえ！」
「あいつの足を斬り落とそうとした位だ…… てめえが何されても文句言えねえよな？」
…… うーん、黒崎さんがヤクザに見えてきたな……
まあ、実際本当のところ、相手が相手だ。 その位しないと拘束できないかもしれない……
黒崎さんにそこまでさせるのも忍びない。
その時は自分が……
霧島がそう考えていた時、流血した顔を抑え、よろめきながらも立ち上がったアラン。
それと同時に、アランの闘気量がどんどん上がっていく！
「！ 黒崎さん！ 気を付けて！ 本気できますよ！」
「わかってる！ 二人を頼むぞ！ 霧島！」
カエラさんはまだ動けそうにはないか……
動けるだけでも回復したら二人を離脱させ、僕は即座に加勢しないと！
何とか持ちこたえて下さい！ 黒崎さん！
「…… 調子にのるなよ…… 黒崎修二」
アランは収納空間を出し、先程まで使っていた剣とは明らかに格の違う、禍々しい形状をした大型の剣を出した。
何だ、あの如何にもやばそうなオーラを纏ってるデカブツは！
今、迂闊に近づくのはやべえ！
くそ！ はええとこ決めねえと、こっちがやべえってのに！
顔に出さない様にしているが、強化《ブースト》の反動は確実に黒崎を襲っていた。
くっ もう少しもってくれよ！
慎重に距離をとり、構える黒崎。
霧島も警戒態勢を敷いている……
そして、アランの剣に禍々しいまでの黒いオーラが集まっていく！
「魔剣グニアス…… 奴らを喰らい尽くせ！」
「！ なっ！」
アランの声と共に、その大剣はまるで大蛇の様に、はたまた生きた大鞭の如く、巨大に、そしてしなりながら周辺の木々をなぎ倒しつつ黒崎達を襲う！
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