第51話 第二ラウンド!

 黒崎と霧島の第二ラウンドが始まった!


 一気に距離を詰めようとする黒崎!


 霧島の視界から、正面に捉えている黒崎の姿が消える!


 ! 速い! 後ろを!


 後ろを取られたと思い、自身の身体を切り返す霧島!


 だが、黒崎は勢い止まらず、更に先の方へと身体が流れる!


「ちい!」


 速すぎて、身体のこなしがついてかねえ!


 それに、身体にかかる負荷も半端ねえ!


 馴染むまでに時間がかかるな。


 改めて、霧島に向かって正面から殴り込む黒崎。


 ! だから速すぎだって!


 黒崎の右ストレートを鎌で受け止める霧島。


 踏ん張った床に自身の床がめり込むほどの衝撃!


 身体のこなしがまだ追いつかない黒崎が今できることとして選択したのは、超接近戦での手数を利用しての乱打戦!


 その場合はリーチのある鎌の方が不利だと判断したからだ!


「うおおお! マジですか! 黒崎さん!」


 とはいえ霧島も何とか捌き続けていた。


「ふふ。 中々思い切りがいいねえ。 現状じゃ最善手かな」


「そうだな。 まあ、身体が慣れてきたら話は変わってくるだろうが……」


「だが、あちらさんも面白くなってきているみたいだよ」


「!」


「ふふ。 彼も男の子だねえ!」


 閻魔兄妹が見つめる先は黒崎だけではない。


 注目はもう一人の男の方に集まっていた。


 その男は普段の温厚な顔つきではなく、どこか楽しげで、それでいて狂気じみた目つきに変わってきていた。


 …… やばいな…… 柄にもなく僕もたぎってきましたよ。 黒崎さん!


 そんな熱い攻撃をしてくれると、僕にまで熱が移っちゃうじゃないですか!


 今の黒崎さんの状態なら大怪我はしないでしょうし、僕も本気で答えますよ!



「はああああああああ!」


 霧島がギアを上げた!


 彼の放つ霊圧が巻き起こす風に押され、後ろへ後退させられる黒崎。


「ぐっ! これがてめえの本気マジモードか!」


「ちょっと大人げないんじゃないか? 霧島よぉ!」 


「ふふ…… 今の黒崎さんなら大丈夫です!」


「あまりこういう機会もないですし、たまには男同士、熱く語りますか!」


「ふん! 柄にもねえ事を! だがのった! 精々胸を貸してもらうぜ! 霧島!」


「はい! 黒崎さん!」


 二人の表情は共に、どこか楽しそうになってきていた。


 霧島はその巨大な鎌を、まるでヨーヨーでも身体の周りに振りまわすかのごとく、超高速で、しかも片手で振りはじめ、黒崎に突進する!


「! 本当に大人げねえな!」


 そう言いながら黒崎も、少しずつだが身体が慣れてきているのか、紙一重もいいところだが何とか致命傷は避けている。


「ぐっ! 接近戦もやべえなこりゃ!」


 距離をとろうと後ろへ大きく下がる黒崎!


「甘いですよ! 黒崎さん!」


「はああああああ!」


 霧島は大きく鎌を振り、黒崎に向かって巨大な斬撃を飛ばす!


「! やべ!」


 黒崎は途中で回避の方向を変える様に床を蹴り上げ、それを躱す。


 霧島の飛ばした斬撃は、黒崎に躱され、そのまま部屋に張られている障壁を破り、壁に巨大な斬撃痕を残した!


「へえ! 中々やるじゃないか! 彼! 結構頑丈な作りなんだけどな。 あの障壁と壁」


「霧島って言ってたけど、もしかして……」


「ああ。 『彼ら』の血筋の者だよ。 確か玄孫やしゃごだったかな?」


「なるほど。 彼らの一族で死神業についているのも、ちらほらいるけど、彼はその中でもその才能を色濃く受け継いでいるみたいだね」


「これは将来が楽しみだ! 零番隊うちで引き取ろうかな♪」


「リーズレット様。 一一七支部司令官の前で堂々と彼を引き抜かないでもらえます」


「はは。 冗談だよ! メアリーさん。 でも君の支部は中々の粒ぞろいじゃないか!」


「ええ。 カエラさん同様、一一七支部は良い若手が育っていますね。 流石はメアリー司令です」


 エレインもメアリーの司令としての手腕を褒める。


「いえ、私は大した事は…… 彼らの日々の努力の賜物です」


 下がった位置で見守りながら、そう話す閻魔大王達。


その時!


ガキィン!


 互いの攻撃が交差し、強烈な金属音が鳴り響いたと思ったら、両者は既に距離をとった後であった。


 そして互いに、更に気を込める!


「はあああああああ!」

「はあああああああ!」


 そして両者が互いに、その渾身の一撃を交えようとしたその瞬間!










「そこまで!」



 黒崎を閻魔大王が、霧島の一撃をリーズレットが割って入り、それぞれ剣で受け止める形で二人を制止した。


「うん♪ 良い一撃だね! 霧島君♪」


「! リリリリリリ、リーズレット様! たた、大変失礼しました!」


 慌てて頭を下げる霧島。


「謝らなくていいよ。 むしろ良いものを見せてくれた!」


「君も中々面白そうだね♪ どう? まだ余裕ありそうだし、親睦を深める意味を込めてこれから僕と死合わない?」


「滅相もありません! 本当に!」


「え~! つれないなあ~ ちゃんと手加減するのに!」


「じゃあ、また今度ね♪」




 いや、絶対に嫌なんですけど! この若さで死にたくないし! マジで勘弁して下さい!


「リーズレット様。 その辺にしてあげて下さい」


「はあ~い」


「メアリー司令~! あ、ありがとうございます!」


 メアリーの助け舟に感激し、思わず手を握る霧島。


 神だ! 神はいたんだ!


 いや、自分達も一応は神に分類はされるかもだし、実際女神様もいるんだけども!


 軽く半泣きしている霧島をなだめる為、頭を撫で軽く、よしよししてあげるメアリー。


そして、それを見るエレイン。



「かわいい……」


 ちょっとだけ母性本能が働くエレインであった。


「二人共よくやってくれた! 黒崎君。 最後は霊石を握って、言葉は『解除』だ! 掴む手に直接気は込めなくてかまわん! 既に気の暴走状態の様なものだからね!」


「! ぐっ…… 解除!」


「ぶはああ! はあ、はあ!」


 まだまだ余裕がある霧島に対して、黒崎はもう限界であった。


「えらく消耗するだろう。 黒崎君。 使い慣れれば、ある程度マシになるが、さっきも言った通り、使いどころを見極めてくれ! 自分の限界と向き合いながら」


「へろへろになったところを狙われたら一巻の終わりだからね」


「はあ、はあ…… わかり、ました」


「止めてもらった事も含めて、ありがとうございます。 大王様」


「なあに、これ位!」


「霧島も、付き合ってくれてサンキューな」


「え、ええ…… しっかし凄い石ですね! それ!」


「ああ、上手く使いこなせば相当な戦力になりそうだ!」


「うむ。 基本的な使い方は以上だ! 念の為に説明書も渡しておくが、後は訓練の中で覚えていってくれたまえ!」


「それとメアリー君は流石に支部へもどって色々仕事をしてもらうが、霧島君と黒崎君は暫くの間、要塞に滞在して訓練に集中してくれ! 治療の湯含め、治療施設や寝床も要塞内に完備してある! 引継ぎ等はメアリー君! 頼む!」


「了解しました!」


「! まじですか!」


「やはりそうなりますか……」


「確かに、今は時間がありません。 黒崎さん……」


「ああ。 そうだな…… そうさせてもらおう」


 一通りの使い方を説明して、最後に閻魔大王は黒崎にある事について話そうとする。


「それと…… 黒崎君。 昨日…… というか、日付的には今日か……」


「『例の君の問い』についてだが……」


「私の眼で見たもの、それを含め、得られた情報をもとに『敵が君を狙う理由のいくつかは掴めた』と思っている」


「『妄想』ではなく『恐らく当たっているであろう推測』レベルにはね……」


 そう閻魔大王が告げると、黒崎を含め、周りの面々の表情が変わるのであった。

 

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