第49話 会議終了 そして……

 会議も終盤に差し掛かっていた……


 真実を打ち明け、皆、それぞれの覚悟を決めた後、アルセルシアもそのまま残り、現時点での犠牲者の数の確認、具体的な戦力バランスの調整、配置、役割分担等、閻魔兄妹とエレインを中心に固めていった。 


「由々しき事態だね……」


「改めて数にすると、そこまでいっていたのか……」


「ええ。 殉職者だけでなく、怪物の材料にされているであろう地獄の魂の行方不明者の数を入れるとさらに増えますね……」


「怪物共だけなら遅れをとることはないが、何人か敵の…… 恐らく主力級の使い手達が上手く立ち回って、確実に支部を乗っ取っていったってところか」


「でないと司令級も含めて、そう簡単にやられ続けるわけないからね」


「といっても司令達にしても、正直戦闘力がピンキリだからね。 兄上、やっぱり全体的に戦力の底上げをしておかないとまずいでしょう」


「はっきりいって各自訓練不足もあるんじゃない?」


「ええ。その通りです。 ただ、如何せん人手が足りてなく、中々質の高い訓練が……」


「それは言い訳だよ。 エレインさん。 我らが倒れれば天界にいる全ての死者の魂達が危険にさらされる」


「そうだな。 その辺りも恐らくつかれたのだろう。 やられた事務所も非常に普段から死者達の為によくやってくれているが、こと事務所全体の戦闘力に関しては少し他支部と比べて見劣りしてしまう部分もあったのは事実だからね」


「そうですね。やはり全事務所の戦力バランスの見直し、特に先程被害が確認された各事務所の戦力の補填、空きビルにして放棄しても近隣の住民が危険に見舞われた時に対応が遅れますからね。 それから……」


「訓練は今後の課題になってくるかな。 はっきり言って、もうそこまで時間をかけてるつもりも余裕もない。 今後また大きな事件が起きないとも限らないから、そこは落ち着いたらすぐにでも対応しないとあれだけど……」



 司令達も交え、各死神達の一時的な配置換えや天使側との連携方法、優先順位等も話し合われ、現時点での戦力配置と対策については一通り目途がたったのである。


「―― とりあえず布陣はこんなところか…… 細かい修正は随時入れるかとは思うが……」


「そうだね…… ふう。 やれやれ…… これは僕達も、まだまだ楽できないね」


「そういう事だ。 まあ全員で互いにフォローしあっていこう」


「うん。 そうだね」


「なるべく速やかに連中を処理したいですが、もし大規模な交戦が発生し、死者の魂達や市街地が巻き込まれそうになった時、我ら死神を戦闘班と避難誘導や支援サポートと上手く役割分担をさせていきます!」


「正直申し訳ないですが、戦いについてこれなさそうな方々は、その分死者の魂達の避難や守り、負傷者の手当てや搬送、バックアップや後方支援に力をいれていただきます。 適材適所! バックアップも立派な務めです! 皆で一丸となって頑張りましょう!」


「ああ! その通りだ! 皆頑張っていこう!」


「はい!」


「それでは、会議はこれにて終了! 解散!」


「はい!」



 こうして、予想以上に濃い時間を過ごす事になった緊急の対策会議は幕を閉じたのであった。


 皆が会議室を退出していく中、黒崎、霧島、メアリーは閻魔大王に残る様に頼まれる。


 黒崎達以外の全員が退出した後、閻魔兄妹、エレイン、そしてアルセルシアの案内でフロアを移動、相当に広い大部屋へと移動していった。








「わざわざ引き留めてすまないね。黒崎君、霧島君。 メアリー君も」


「いえ! とんでもない」


「ええ。 黒崎さんが関わる事なら彼を預かっている我らにも関係がある事ですし」


「それで、俺達が残った理由は昨日言ってた『渡す物』の事ですか?」


 黒崎の質問に大王が答える。


「ああ。 エレイン君。 例の物を」


「かしこまりました」


「黒崎さん。 こちらを」


 大王に促され、エレインは黒崎に小さな箱を持っていき、本人の前で蓋を開いた。


 箱の中身は二つの銀の指輪、それと金色のペンダントが入っていた。


「これは…… 指輪? それにペンダントか」


「やはり……」


「まあ、非常事態ですからね」


 霧島とメアリーは事前に予想がついていたみたいだ。


 そして大王が黒崎に対して、これらの説明に入る。


「黒崎君。 それでは説明させてもらうよ」


「まず、そちらの銀色の二つの指輪。 それは霊子空間の環PSYCHEON SPACE RING 通称PSリングと呼ばれる代物だ」


「PSリング?」


「ああ。 死神達含め、治安維持に務める者達が扱う『武装を霊子空間から出し入れしする』為のものだ」


「何だって?」


「その他にも結界を出し、防御シールドを展開する事が可能だ。 指輪を着けて合言葉と共に念じる事で空間が発生。 そこに腕を入れ武装を掴みだす。もしくは自動で装着出来る物もある。 しまう時も同様に念じれば収納される優れものだ」


「昨日の戦いでも、メアリー君やカエラ君が使用していたと思うが」


「! あれか! そういう事だったんですね!」


 昨日の怪物戦でカエラが使ってたトンファーとマシンガンの一体型の様な武装。


 司令も糸状の強力な物を使用していたな。


 どこからあんな物騒なもん持ち出してきたかと思って、後で本人に聞こうとしてたが、ドタバタしていて、結局忘れてたな……


「ええ。 今大王様が仰った通り、我ら死神も不測の事態に備えて、全員、常時この指輪を身に着けています。 武装の種類は人それぞれで、黒崎さんに今渡したのも昨日のカエラさん達が使っていた代物とはまたちがう武装なんですが」


「先程も言った通り、これから先、厳しい戦いや状況に見舞われる事もあるだろう…… 君自身の戦力は、できるだけ強化しておくべきだと思ってね」


「なるほど。…… 確かに」


「それから、こちらの金色のペンダントなんだが」


「これは霊力増強効果のあるパワーストーンだ。 こちらの使い方はトップの装飾部分を握って合言葉を言えば、ある程度だが、普段よりパワーアップした状態で戦える」


「だがその分、使用中は霊力の消耗が激しいので、使いどころは見極めてくれ」


「詳しい使い方は、二人やカエラ君に教えてもらうといい」


「そんな物があったんですね」


「わかりました。 大王様。 わざわざありがとうございます」


「いや、なんの。 それで黒崎君。 この部屋は内壁に強固な障壁が張られている訓練室なんだ」


「時間が惜しい。 急で済まないが、これの使い方を実践と説明を交えながら、今、行いたいのだが、準備はいいかな?」


「! やれやれ。 本当にいきなりですね。 ですがまあ、願ったりかなったりです。 よろしくお願いします!」


「よし、わかった! では霧島君。 お願いできるかな?」


「かしこまりました。 大王様」


「では黒崎さん。 順を追って説明していきますね」


「ああ。 よろしく頼む!」


 こうして黒崎の戦力強化を図った特訓がはじまろうとしていた。



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