第46話 昔話 ⑥
「雷帝…… だと?」
「そういえば聞いた事があるな…… 女神アルテミスにはそれを守護する最強の
「その強さは閻魔一族や女神にも迫る力を持ち、巨大な
「巨体に似合わずそのパワーとスピードはまさに電光石火! そいつが暴れた後はまるで落雷でも落ちたかの様に何も残らないという……」
「なるほど…… 『雷帝』とはよく言ったものだな」
「確かに、大したスピードとパワーだ…… 『我以外』なら通用しただろうな」
怪物はそう言うと笑みをこぼす。
「あらら、 よくご存じで。 一応俺の存在って零番隊以上に限られた奴しか知らねえんだけどな」
「まあ、そんな事言ってられない位、どでかい有事の際には暴露される事もあるっちゃあるけど」
「恐らく彼が力と知識を吸収した際に、その噂を知りえたのでしょう」
「なるほどね」
そしてレオンバルトは女神達と小声でやり取りする。
「で、奴の言う通り、確かにありゃ化け物だ。 俺じゃ歯が立たんのは自分でも理解しちまったよ」
「思いっきり全力でぶち込んで、全然効いてねえからな…… やれやれ、結構ショックだぜ」
「無理もありません。 相手があまりにも規格外すぎるのです」
「フォローどうも。 で、俺はどうすればいい?」
「三分…… いえ二分で結構です。 『あなた一人で』少しの間、あれを足止めしてほしいのです」
「できますか? レオンバルト?」
「…… そういう事か」
「わかった! 『外すなよ!』 アルテミス!」
「ええ! 任せて下さい」
「すまない! よろしく頼む! レオンバルト!」
「へっ いいってことよ! アルセルシアの姉御!」
「そんじゃまあ……」
「行きますかあ!」
そう言うと、レオバルトは怪物に向かって猛スピードで突進していった!
重くて鋭い、怒涛の攻撃を仕掛け続けるレオンバルト!
そして少しでも、怪物の注意を自身に引き付け、彼女達から怪物を遠ざける!
実際に怪物は実力的に優位に立っているにも関わらず、レオンバルトの気迫に押され、女神達を気にする余裕はなかった!
それと同時に女神の二人は準備に取り掛かる!
「アルセルシア! お願いします!」
「ああ! 姉者!」
二人は自身の気を最大級まで練り上げ、高め始めた!
そしてアルセルシアは自身の高めた気をアルテミスに流し続ける!
一方、レオンバルトは……
それなりには善戦しているが、流石の雷帝といえどもたった一人では分が悪すぎた。
時間がそう経たないうちに彼は自身の甲冑ごと、どんどん血に染まり、ボロボロになっていく……
それでも彼は、笑みをうかべながら怪物に立ち向かう事を、決してやめない!
彼は武人気質…… こんな状況であるにも関わらず、滅多には出会えない格上の敵との戦闘を楽しんでいた。
そして何より、彼はアルテミス達を信じているのだ。
自分が倒れた後、彼女達なら必ず何とかしてくれる!
そう思っているからこそ、絶対に勝てない相手だとわかっていながらも、彼は迷いなく向かっていけるのだ。
倒しても倒しても起き上がり向かってくる彼の姿に、力では押している怪物が僅かながらに畏怖の念を覚え始めていた。
「くっ! 何なのだ! 貴様は!」
「ええい! しつこい!」
「いい加減に…… くたばるがいい!」
怪物はその右腕でレオンバルトの胸部を貫く!
「ぐはっ!」
「!」
「レオンバルト!」
たまらず叫ぶアルセルシア!
アルテミスは無言だが唇を噛みしめ、血を流しているその姿が、彼女の心境を物語っていた……
血を吐き出しながらも、身体に力を入れ、硬直させ、レオンバルトはその状態で、自身の胸を貫いた怪物の腕をがっしりと両手で掴んだ!
「ぬ、抜けん!」
「これで……も、腕力には自信が…… あってな……」
「はあああああ!」
「ぬん!」
気を高めたレオンバルトはそのまま怪物の右腕の関節をきめ、それをへし折る事に成功した!
「があああああ!」
「おのれ! 貴様ぁ!」
腕を折られ苦痛に顔をゆがめる怪物!
怪物は折れた右腕をその肩ごと左手の手刀で切り取る事を選択!
「ぐああああ!」
さらなる苦痛に襲われる怪物だが、彼は右腕の存在より、身体の自由を優先したのだ。
「貴様ぁ! 絶対に許さん!」
「死ねえ!」
怪物は憎悪を込めた左の拳をレオンバルトに叩き込む!
レオンバルトは遥か後方へと吹き飛ばされてしまった。
「がは! はあ、はあ……」
もう、血まみれで、ほとんど動くことができないレオンバルト……
だが、役目を果たした彼の顔は満足そうな顔をしている。
「へっ…… 後は頼むわ」
「何!」
怪物は女神達に視線を向け、ようやく自分の置かれている状況を理解した!
その視線の先には全ての力を姉に託し、膝をついているアルセルシア。
そしてこれでもかという位に、強大に膨れ上がった霊圧を放つアルテミス!
「レオンバルト…… ありがとうございます…… 後は任せて下さい!」
「アルセルシアも…… あなたから託されたこの力! 絶対に無駄にはしません!」
「姉者…… 後は…… お願いします!」
「くっ! あの男一人だけで向かってきて 何を企んでいるかと思えば! そういう事か!」
「個々の力で勝てないなら…… 仲間を頼ればいい!」
「あなたには理解できない事でしょうね」
「力に溺れ、過信し! 彼を…… そして我ら姉妹を侮った事……」
「それが『あなたの敗因』です!」
そう怪物に言い渡して、彼女は更に上がった身体能力で一気に間合いを詰め、まず怪物に一撃入れ、皆を攻撃の余波に巻き込まない様に上空へと吹き飛ばす!
そして吹き飛ばした先でアルテミスの最強かつ渾身の一撃が繰り出される!
「今後こそ…… これで終わりです!」
「
眩い閃光と共に、運命の一撃が振り落とされた!
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