第45話 昔話 ⑤
アルテミスが自身の身体をも超える程の大剣を構える。
それを見て構える怪物。
アルテミスに続いて妹のアルセルシアも闘気を解放する。
「さて、どうする? 姉者?」
「そうですね…… まずは手数で攻めてみましょうか」
「了解だ。 姉者」
そう言うと、アルテミスの姿は既に消えていた。
正確に言うと、消えたのではなく、目に映らない程の速さで、怪物の背後にまわり、その身体に強烈な一撃を叩き込んだ後だった。
「ぐぁっ!」
怪物が吹き飛ばされた先にアルセルシアがまわりこみ、無数の斬撃を同時に叩き込み、さらに別の方向へ吹き飛ばす!
「!」
またも地面に叩きつけられ、顔をゆがめる怪物だが、まだ終わらない!
土埃で相手は見えないが、その気配で正確に怪物の居場所を捉え、一気に間合いを詰め凄まじい手数で怪物を圧倒する女神の二人!
「はあああああ!」
最後に強力な一撃を二人同時に怪物の胸に交差する形で叩きつける!
怪物は後方へ吹き飛ばされていった!
「どうだ?」
「……」
無数の斬撃痕がついた怪物だったが先程同様、ダメージこそあるものの、すぐさま傷口が再生して、そして回復していく……
そして起き上がる怪物。
「~っ全く! やりたい放題やってくれるな…… 我でなければ死んでいるぞ!」
「流石にそのスピードで女神二人を同時に相手をするのは少々きついか……」
「だが、いくら攻撃を叩き込んでも無駄なのは理解したかな?」
「やれやれ。 参りましたね…… あれだけの数の攻撃を受けても、
「一撃も効かない…… 手数で攻めても駄目…… どうするよ、姉者?」
「気付きましたか? アルセルシア」
「あの妙な『気の淀み』の事か?」
「ええ。
「今の攻撃を受け、傷口を再生する際に瘴気の流れがあの淀みの中心地から傷口へ流れていくのを確認しました」
「恐らく、あれが奴の
「つまり……」
「あの核っぽいのを潰せば奴は倒れる?」
「ええ。 恐らくは」
「だが我らの攻撃は通用しないぞ。 姉上」
「まともな攻撃では奴の強固な身体を突き破り、核に届かせるのは不可能でしょうね」
「あれに届かせるには、それに見合うだけの力を高め、気で練り上げた最大の一撃で、それも一瞬で決めるしかありませんね」
「なら姉者が気を最大級まで高めた渾身の
「ふふ。 そんなに大差はないと思いますが…… ですが残念ながら私の見立てでは、それでも届かないでしょう」
「それほどまでに奴の身体は固い! 異常なんて言葉では済まされない程に……」
「ではどうするというのです?」
「私とあなた…… 二人の女神の気を最大まで高め、一点に集中した攻撃…… それしか奴を倒す方法はないでしょう…… ですがそれを」
「奴がさせてくれるとは思えない、か」
「イステリアを父上から離すわけにもいかんし」
「ええ。 本来なら勝機を見出すのは厳しかったかと」
「ですが、やはり天は我々に味方した様ですね」
「何?」
次の瞬間、壁をぶち破り、外からこの戦場へ飛び込んでくる一人の男がいた!
「何だ!」
「はっは~! これでもくらっときなあ!」
金の甲冑に身を包んだその大男は巨大な斧槍で怪物を薙ぎ払う!
「ぐっ! 重い!」
咄嗟にガードした怪物だが、その大男のパワーに押され、そのまま吹き飛ばされるのであった!
だがダメージは然程なかった様で、すぐに立ち上がり、怒りを
「おのれ貴様! 一体何者だ?」
「ふん! 化け物なんぞに名乗ってやる名はねえよ!」
「お主は!」
「まあ! 来て下さったのですね!」
「よくきてくれた! 感謝するぞ『雷帝』よ!」
強力な援軍を歓迎する女神と最高神。
「全く…… あなたには『あの子』のお守りをお願いしたはずでは?」
「はは! そう言うな! アルテミス! ピンチだったんだろ! それに俺がいねえと寂しいだろうと思ってよ!」
「心配しなくても坊主なら守りの固い避難所に匿ってもらってるよ! 腕利きも揃ってたし、まず問題ねえよ!」
「そうですか。 それを聞いて安心しました。 別に寂しくはありませんでしたが」
「って、おい!」
「ですが…… 今回ばかりは本当に助かりました」
「力を貸してくれますか? レオンバルト」
「あたりめえだろ! アルテミス!」
大男の加勢で勝機を見出したアルテミス。
怪物との死闘が最終局面へと向かっていく……
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