第33話 祓う そして 挨拶
大王、リーズレット、マクエルの三人が闘気を纏い始めた。
最初に動き始めたのはマクエル!
右手を前にかざし、次の瞬間、会議室の部屋の中に…… 正確には部屋の中にいる死神達を部屋ごと囲む様に青白い障壁の様なものが展開された!
「! 何だ! こりゃあ!」
「これは……
「拘束? おい! あんたらどういうつもりだ!」
黒崎の問いにマクエルは素早く簡潔に答える。
「話は後程! じっとしてて下さい!」
それだけ答え、マクエルは結界を完成させた。
そして今度はリーズレット……
胸の前で印の様なものを結び、詠唱を唱え、陰陽術を発動させるリーズレット。
「
すると一部の死神達から悲鳴が出る!
「ぎゃあああああああ!」
「ぐああああああああ!」
同時にその死神達から黒い瘴気の様なものが発生し始めた!
「兄上!」
「ああ! 任せたまえ!」
そう言うと大王は、炎の様な闘気を纏っている状態で、さらに瞳は金色に輝き始めた!
そして大王も何かしらの術を発動したのか、詠唱を始めた。
「我が問いに偽証は不可能…… その心の中を我が眼前の元へさらしたまえ!」
光り輝くその大王の『眼』は彼らをじっと見据えている……
ぱっと見では、大王の術で何か特別な事がおきている様には見えない。
だが、実際には大王の『眼』と『耳』には、何かを捉えているのだ。
「加減が難しいな…… 兄上! まだかい?」
「…… OKだ! 後は任せた! 妹よ!」
「了解!」
大王の合図と共に、術の力を上げようとするリーズレット。
しかし、そこで瘴気にまみれた死神達の胸元が赤く光りだした!
三人は勿論 黒崎達もそれに気づく!
「! あれは… 昨日の怪物と同じ!」
「体内に埋め込まれた爆薬か!」
このままでは会議室の中で爆発が起こり、大惨事になってしまう!
だが、リーズレット達はそれすら織り込み済みだった!
「! ふふ! やはりそう来るか」
「マクエル!」
「お任せあれ!」
マクエルは凄まじい程の冷気に変換された気を両手に帯び、そこから対象の死神達に向かって冷気を放ち、死神達の胸周りの辺りを凍らせてしまったのだ!
規格外の冷気だったのか体内に仕込まれた爆薬の起爆装置の部分が、冷却停止されてしまう!
さらにマクエルはあえて一人だけ残していた瘴気を帯びた死神に、超スピードで飛び込んでいく!
それと同時にマクエルは自身の両手の冷気を解除、通常の気で強化しただけの状態に高速でもどしていた!
「麻酔なしで申し訳ない! 後でしっかり治療しますからね!」
「そこです!」
なんとマクエルはその死神の胸部に自身の右手で突き指し、そのまま爆薬を引き抜いた!
引き抜くと同時に素早く空いている左手を死神の胸部に置き治癒術を発動、爆薬を掴んだ右手は再び強力な冷気を発動、掴んだ爆薬を凍らすことで最後の爆薬を機能停止に追い込んだのだ。
これらを全て一瞬で行ったマクエル。
信じられない程のレベルの気のコントロール技術とピンポイントで爆薬の場所を見極め、最小限の傷で摘出させる眼と技術!
全てが揃って初めて成せる技である!
「摘出完了です」
「今です! 総長!」
「ああ!」
「邪のものよ。 せめて安らかなる眠りを……」
「はああああああああ!」
マクエルの合図で術の力を上げ、瘴気を完全に祓いにかかるリーズレット。
「がああああああああ!」
死神達は、悲鳴をあげながらもその瘴気は完全に消え失せていった。
瘴気から解放された死神達は、気絶してその場に倒れこんでいった。
「ふう」
「二人共、何とか上手くいったみたいだね」
「結構ぎりぎりではありましたけどね。 全く大王様も無茶な作戦を考え付く」
ため息交じりに言うマクエル。
「はは。 すまなかったね。 結局これしか方法が思いつかなくてね。 感謝してるよ。 マクエル君」
「まあでも僕はこの三人なら絶対上手くいくって思ってたけどね!」
「やれやれ。 ほんとにお二方はよく無茶ぶりをしてくれますね。 正直ひやひやものでしたよ。 まあ確かに、この方法しかありませんでしたけど」
「大王様。 一応サンプルも手に入れる事ができました」
凍結させた爆薬を手に報告するマクエル。
「よくやってくれた! 解析班に任せよう! キール司令! 頼む!」
「は! 了解しました!」
大王の声で前に出てきたキールと呼ばれた死神。
キール・スタイン司令。
諜報部 死神事務所 第七支部司令兼解析班責任者も務めている男だ。
別フロアに彼の部下である解析班のメンバーが解析室で待っているのだ。
「あ! ちょっと待って。 マクエル! そこだよ」
「ええ。 存じています」
マクエルは右斜め上方に向かって小さく冷気を放った。
すると小さな蚊の様な虫の姿をしたものが氷漬けになって落ちてきたのだ。
落下点に歩いていき、それを手にするマクエル。
「ふむ。 おそらくですが両目の部分が、超小型カメラになっているんでしょうね」
「さっきから
「ええ。 もちろん。 キールさん、これもお願いします。 後程、氷は解きますので」
「了解であります!」
キールは停止した爆薬と一緒に、それも受け取り部屋を出て行った。
さらに大王はエレインに指示を出す。
「エレイン君。 至急、倒れた者達の支部ナンバーを確認してくれ! 司令
「つまり事務所の部下達が全員操られている、もしくは本物の彼らがそこで幽閉されていて、怪物達が化けている可能性がある!」
「かしこまりました! ただちに調べます!」
「第二七、三六、四一、四九、七二、それと九三支部の司令達です!」
「かなりやられていたな……」
「リーズレット!」
「了解」
大王に促されると同時に、リーズレットは通信機を使いメールを複数送信していた。
「各支部に待機させている部隊にメールを送ったよ。 後は彼らに任せよう」
「なあに。 一応祓うのに長けた道具を各班に持たせているし、化けてるなら化けてるで、彼らならすぐに制圧して、もろもろ解決できるでしょ」
「うむ。 そうしたら救護班! 入ってきてくれ! 彼らを治療室に運び、残りの爆薬の摘出と治療をお願いする! マクエル君もよろしく頼む!」
「ええ。 お任せ下さい」
そう言うと大王は会議室の外に事前に待機させていた救護班のメンバーを中へと招き入
れ担架に運ばせるのであった。
「それでは大王様、総長。 そちらの事はお願いします」
「ああ。 こちらは任せてくれ」
「彼らの事は任せたよ~」
マクエルは彼らと共に、倒れた者達を外の治療室へと運ぶのだった。
「さて、と…… 後は……」
「ふむ…… 愛しの妹よ。 このまま帰すのもあれだ…… せっかくだ。 軽く『挨拶』しとくかい?」
「もちろん♪」
大王がそう言うとリーズレットは刀に手をかける。
それと同時に凄まじい霊圧を放ち始めた!
その圧倒的な霊圧に黒崎含む、他の死神達も圧倒される!
「! なんて奴だ!」
「くっ! これが『剣神』!」
「す、凄すぎる!」
あまりに強力な霊圧で、会議室がぎしぎし揺らいでいる程だ!
「はああああっ!」
眼にも止まらない、いや、映らない速度の抜刀でリーズレットは外に向かって強力な霊圧を帯びた斬撃を飛ばした!
その斬撃は窓と、そして要塞の外に展開していた結界の一部をも斬り飛ばし、近くの崖の上に立っていた、ある一人の男に向かっていく!
しかし、斧槍の様なもので斬撃をはじきとばす謎の大男!
「! おっとお! あぶないねえ! まさか気付かれていたとは…… ちゃんと気配は消していたつもりだったんだが……」
「しかもこの距離を結界ごと破って、これ程の斬撃を正確に飛ばしてくるとは……」
かなりの距離があるが、二人は互いにその姿を視界に捉え、不敵な笑みをうかべている……
首を洗って待っていろ。
いつでもかかってこい。
両者の間に、まるで言葉なき挨拶が交わされているかの様だ……
「くく。 剣神、か…… いいねえ!」
「また近いうちに会えるのを楽しみにしているぜ!」
そう言って男は崖を飛びおり、どこかへと姿を消していった……
「今から追っても無駄かな」
「だろうね。 あれは相当な手練れだ…… 距離もあるし、もう完全に気配も消えた……」
リーズレットは刀を鞘に納める。
「実に歯応えがありそうだね…‥ いずれ、ちゃんとした形で
狂気じみた笑みをうかべるリーズレット。
その様子を見て黒崎は彼女に軽く恐怖を覚える……
大王は逆に妹の性格を熟知しているのか慣れているといった感じだ。
「やれやれ。 頼もしい事で。 まあ、結界は張り直さないとだけどね」
「ふふ。 ごめんごめん。 でもすぐ張り直せるからいいじゃない。 これで『完全に鬱陶しい視線』も消えた事だし、会議に専念できるでしょ」
「まあ確かにね。 これで心置きなく始められる」
「皆、騒がせてすまなかった! 会議の前に! 今のこの状況を説明しよう!」
「はいはい皆席についてね~♪」
手を叩いて席に着く様促すリーズレット。
僅かな時間で、凄まじいやり取りが展開された会議室!
遂に緊急対策会議が始まろうとしていた……
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