第32話 「剣神」そして「再生の天使」
その銀髪の女性は笑顔でそう告げた。
茶髪の男性も同様だった。
閻魔大王の妹だと!
それに零番隊?
予想外すぎるワードと桁外れな闘気の持ち主が現れ、流石に驚きを隠せない面々。
黒崎も例外ではない。
しかしその言葉を聞いて、ようやく圧倒されていたメアリー達も小声を発し始めた。
「まさかリーズレット様までお越しになられるとは…… 直接お顔を拝見するのは、いつぶりになるのか覚えてない位ね……」
「ええ。 滅多に公の場には現れない方ですからね…… それに後ろの方は……」
「『再生の天使』と名高い、マクエル氏までいらっしゃるとは……」
「零番隊…… 本当に実在したのね……」
「おいおい! ちゃんと説明してくれよ! どうなってんだよ一体!」
二人で勝手に納得してないで説明を求める黒崎。
「ああ、すみません。 僕達も驚いていたもので、つい!」
「今おっしゃられた通り、大王様には妹君がいらっしゃるのよ」
「リーズレット・アルゼウム様。 代々の閻魔の家系に伝承される、極神流一刀術の免許皆伝者にして、さらに忍術と陰陽術も極めた天界における武の世界の達人…… いえ超越者ともいえるお方よ」
「『剣神』の異名でも知られている方で、噂ではその剣腕は天界でも屈指の使い手であられる、兄君の大王様にも匹敵、もしくはそれ以上かもしれないとまで言われているわ」
「基本的に役職等にもつかず、自由奔放に過ごされていて、所在をつかめている者はほとんどいないとされ、彼女の事を詳しく知っている者は近しい者以外ほとんどいないのよ」
「各司令クラスでも滅多にお目にかかれない方だわ」
「ええ。 僕も実際に…… というか通信越しでもお目にかかれた事は一度もなかったですからね」
「そうなのか……」
思っていた以上にとんでもねえ人物みてえだな……
「もう一人の…… 後ろの茶髪メガネは?」
「あちらはマクエル・サンダース氏。 天界一の外科医にして最高の治療士とまでいわれている方です。 絶望的なまでの傷をも再生し、数々の命を救ってきた天才治療士で、かつて暴徒と化した死者に銃弾を浴びせられ、瀕死の重傷を負わされた天使がいたのですが、その方の体内に残っていた銃弾をも、一瞬で抜き取り、傷口をふさぎ、命を救った一件は、天界では伝説として今でも語り告げられていますね」
「ついたあだ名が『再生の天使』…… ちなみに京子さんの治療士としての師匠にあたる方でもあるみたいですよ」
「! そうだったのか!」
「ええ。 治療士として、少しでもあの方の背中に近づきたいと以前おっしゃっていましたが、全然近づける気がしないと珍しくぼやいてた時がありましたよ」
京子さんがそこまで言うなんて、相当な腕なんだな。
こっちもこっちで、規格外な奴だな……
「ちなみに天使の皆さんは、戦闘職ではないので、そのほとんどの方は治癒能力以外は一般の人間の魂と、さほど変わらない力なのですが、たまに例外的な方がいるのですけど、あの方はその最たる例みたいですよ」
「私も霧島君も直接見た事はないけど、その戦闘能力は死神の司令クラスをも遥かに凌駕しているとの噂よ」
「ったく、ここに来て、またとんでもねえチートキャラみてえのが出てきたな」
「まあ味方だってんなら頼もしい事この上ねえが……、」
「頼もしいなんてレベルじゃないですよ」
「ええ。 最強の助っ人だわ」
「今聞いた話だと、滅多に表舞台に出ない二人なんだろ。 あっちのメガネも含めて」
「ええ…… それと黒崎さん! 当然ですが、お二人にも失礼の無い様に!」
「やべ! わりわり。 『マクエル氏』も含めて、な!」
「お願いしますよ! 本当に!」
「わかってる! …… で、話をもどすが」
「ええ。 マクエル氏もお忙しい方なので、あまりお二人共滅多に公の場には現れないですね」
「なるほど。 つまりは」
「それ程までの事態…… って事でしょうね」
「ですね」
やっぱりそういう事だよな…… 大王様もそこまで本気って事か……
一つずつ情報を整理する黒崎。
そして黒崎はもう一つ気になっている事があった。
それについて霧島達に再度尋ねる。
「もう一つ…… 零番隊ってのは?」
「零番隊…… 天界でまことしやかに囁かれていた、一種の都市伝説みたいなものがありまして……」
「まさか本当に実在するとは思いませんでしたけど……」
「ええ。 しかも総長と副長…… 要するにあのお二方がそこのトップという事みたいね」
「みたいですね……」
「…… 黒崎さん。 実は天界には正体、所属共に不明の、天界最強の戦闘集団が存在するという噂があったんですよ」
「! それって昨日の夜、霧島が言ってた!」
「ええ。 その通りです」
「規模、構成員、本拠地等も不明。 ただ大王様直属の懐刀といった話も持ち上がっていて、公にできない任務等も遂行する影の様な役割を果たす、一騎当千の猛者達がいるって言われていたのよ…… おそらくそれが……」
「あの零番隊ってやつか」
「みたいね…… ふう…… 実在しただけでも驚きなのに、まさかそのトップが大王様の妹君だったなんて」
「正直、どこからツッコんでいいのかわからない気分ですね」
全くだ…… 既にお腹一杯な情報量だが、当然これで終わるわけがない……
零番隊…… いわゆるノーナンバー 影の存在ってか…… 所属的には一~一〇番隊と同じ諜報部ってのも、そういう事ってわけか……
やれやれ、この会議、やばそうな事になりそうな匂いがプンプンするな……
この後どういう事になるのやら…‥‥
全体を軽く見渡す大王の妹こと、リーズレット。
「…… ふむ。 大方、予想通りか……」
「その様ですね」
「やれやれ…… 全く…… 随分と、なめられたものだね……」
リーズレットの目が鋭くなる。
「マクエル」
「ええ。 こちらはいつでもいけますよ」
「兄上」
「ああ。 こちらも大丈夫だ」
リーズレットは大王とマクエルに何かの確認を行っている。
「全員、起立!」
「? 何だ?」
「早く!」
リーズレットに促され、その場の全員が席を立つ。
続いて大王が口を開く。
「諸君! 非常に申し訳ないが! これから! 君達に無礼を働く事となる! 本当に申し訳ない!」
「だが、どうしても必要な処置だ! どうか許してほしい!」
「何だと!」
黒崎に動揺が走る。 黒崎だけではない! その場にいる他の面々もだ!
「大王様! 一体何を?」
「どういう事ですか?」
会議室がまたざわつき始めた。
だが閻魔大王はその声をあえて無視し、行動にうつす。
「二人共、始めてくれ!」
「OK!」
「了解しました!」
会議室に凄まじい緊張が走る!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます