第31話 閻魔大王の妹! 零番隊参上!

 要塞に着いた黒崎と霧島。


 現在の時刻は一五時一〇分過ぎ……


 会議そのものは一六時からだが、早めに来た方が良いというメアリー司令と霧島の判断だ。


 各支部の全司令は勿論、閻魔大王も直接会議に参加する。


 万が一にも遅れるわけにはいかないし、ひりひりした空気にもなるだろうから少しでも会議前にその空気に慣らしておいた方が良いとの判断だ。


 だが既に大量の車両がとまっている。


 通常車両の駐車場の他に、少し離れた所には装甲車や戦車といった類の車両が多くとまっている駐車場が見える。


 要塞とはよくいったものだ。


 他の支部の司令達も、既に何名かは来ている様だ。


 霧島達は要塞の門の見張りに話を通して中に入っていった。


 霧島は通信でメアリーと連絡をとってみたところ、メアリーもすぐ到着するとの事だった。


 それまでの間、霧島達は立ち入り許可の出ているエリアのみだが、各施設をまわってみることにした。


 といっても、ほとんど立ち入りできるエリアがなかったのだが……


 そうこうしているうちにメアリーが到着。 霧島達と合流して三階フロアにある巨大会議室へと足を運んだ。


 まだ揃っているわけではないが、先に到着していた他支部の司令達は他の司令達と挨拶を交わし、情報交換等を行っていた。


 黒崎達もメアリーに連れられ、他の司令達に紹介され、昨日の襲撃事件について情報を共有していった。


 各司令の黒崎に対する気持ちはメアリーや霧島的には不安なものがあった。


 黒崎は普通の人間…… 本来なら死神業を補佐させるなんて正直納得しないのが多数派だろう。


 きつく当たる者もいるかもしれない……


 少し前のカエラの様に……


 しかし司令クラスともなると、それ相応に全体の流れを見渡す力を持ち合わせている。


 そして閻魔大王の判断ならと彼の決めた事なら間違いないと絶大な信頼も寄せている。


 メアリーや霧島から昨日の黒崎の怪物との一戦の立ち回りや、それ以外にも通常業務の

取り組み方等、彼はよくやってくれていると、他の司令達に話していると、彼らもまた黒崎の事を一定ラインまでは認めてくれたのか、割と好感触でフレンドリーに接してきてくれるのだった。


 黒崎もその場の空気に合わせ、他の司令達とも上手くコミュニケーションをとっていった。


 ただ、そんな中でも黒崎は辺りを警戒していた。


 この要塞のセキュリティは昨夜、霧島から教えてもらっていた。


 だが、あんな怪物を目の当たりにするとやはりどうしても心配になってしまう。


 それにあの怪物は擬態能力を持っていた。


 この中の死神達に偽者がいないという保証はない。


 昨日は霧島の偽者の芝居があまりにも下手だったのと、本物の霧島の人間性が黒崎にはよくわかっていたからすぐ見抜けたのだ。


 まあ、言葉に言い表せない嫌な感じというか、修羅場慣れしている黒崎の単純な勘も働いて、それが当たったというのもあるのだが……


 それで何とか見抜けたが、ここにいる連中はメアリー達以外、完全に今日が初対面だ。


 元々よく知りもしない者達の偽者が混ざっていたとしても、まず見抜ける気がしない。


 それに黒崎は先程から正体不明の、嫌な予感が拭えない自分がいるのが気になってしかたなかったのだ。


 偽者ではなくとも、奴らが何か仕掛けてくるのではないかと……


 せっかく友好的に接してくれている司令達には申し訳ないが、上手く対応しつつ、一線を引いて少しでも不自然な状況がないか警戒していた……


 そうこうしている内に、気付けば会議開始時刻が迫ってきていた……


 各司令達も全員揃い、席にもう着いている。


 例の諜報部の役割を果たす一~一〇番支所の司令も後からやってきて全員揃っていた。




そして時刻は一六時の五分前…… 



その扉が開かれた。



入ってきたのは二名。



閻魔大王。 そして秘書のエレインだ。


 いつもは軽妙な雰囲気と表情を浮かべる閻魔大王も、今日は最初から大王としての厳しい風格を出してきている。


 場の空気がさらに引き締まる。


 そしてそんな中、大王が口を開く。


「皆、待たせたかな?」


「それぞれが忙しい中、急な招集に応じてくれてご苦労。 心より感謝する」


「知っての通り昨日『真なる選別者』の刺客が第一一七支部を襲撃した。 その事件についての、改めての正確な情報共有! それとは別の現在掴めている情報整理! そして今後の対策について話を練っていく!」 


「だがその前に…… やらなければならない事がある」


「二人共! 入ってきてくれ!」


 大王の呼び出しに応じて二人の人物が入ってくる。


 一人は銀髪の髪の長い、日本刀の様な得物を腰に差している女性。


 もう一人は髪の短い茶髪の眼鏡をかけた男性である。


 そしてその部屋にいる黒崎以外のほとんどの者達が驚愕する!


「なっ!」


「そんな! まさか!」


「どうしてあの方がここに!」


 周りのざわめきが収まらない……


 メアリーや霧島に至っては驚きすぎて、逆に言葉を失っていた。


 黒崎も本来なら、彼女らが一体何者なのかすぐに二人に聞こうとするのだろうが、彼も今、それどころではなかったのだ。


 圧倒的なまでの存在感に口が開かず、目が離せないでいたのだ。




 直感ですぐに理解した。


 後から入ってきたこの二人……


 特に銀髪の女の方!





 …… 強い…… それもおそらく、




 この上なく、圧倒的なまでに!


 黒崎は、初めて大王と会った時の事を思い出していた……


 その時に感じた、彼の底知れなさを……


 銀髪の彼女からもそれと同等か、それ以上の存在感を感じる……


 大王が連れてきた時点で敵ではないだろうが、それでも気をぬく事は不可能だった。


 黒崎の頬から汗が滴り落ちる。


 そんな中、銀髪の女性が口を開く……


「やあ! 皆♪ ほとんどの人は久しぶりかな?」


「通信越しではなく、こうして直接顔を合わすのは初めましての方々もいるのかな?」


「まあでも『こちらの名』で名乗るのは、どのみち皆初めてか……」



「『初めまして』 諜報部所属の秘密部隊シークレットフォース 零番隊ぜろばんたい総長 リーズレット・アルゼウムだ」


「まあ『閻魔大王の妹』と言った方が通りが良いかな」


「よろしくね。 皆」


「同じく副長のマクエル・サンダースです。 以後お見知りおきを」


 予想だにしなかった人物と言葉が飛び込んできて、会議室はこれまで以上に緊張が高まるのだった。




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