第25話 深夜の報告会 ②

「まず最初に『例の組織』と呼ばれている者達についてだが、我々もあらゆる手を使って調べてこそいるが、連中の詳細については未だ掴み切れていない」


「事の始まりは一年程前から、ここ天界で妙な事件が起こる様になった……」


「妙な事件?」


「ああ…… 『死者の魂達の行方不明者が発生する事件』だよ。 それも全員『地獄行きを言い渡された魂達』だ」


「何だって!」


「悪い言い方をすると僕や天界の治安維持に務める彼ら死神達は死者の魂達を一人残らず監視している。 特に地獄行きを言い渡された者達はちゃんと罪を償っているか、悪事を働いて事件を起こそうとしていないか、あるいは逆に変な事件に巻き込まれて危険なめにあっていないか等をね」


「勿論、死者の魂達の数は莫大だ。 二十四時間三百六十五日体制で全員に死神を直接つけて監視している訳ではない。 どちらかというと彼らが暴動を起こさない様に、抜き打ちチェックや悩み事の相談なんかをメインにやっていて問題があればその都度そこから対応していくといった感じだ」


 なるほど…… まあ、転生していない魂達まで管理となるとどうしたって人手は足りないか……


「そのかわり、地獄行きになった魂に限り、一人一人に発信機付きの腕輪をつけてもらっていて、これは専用施設でないと絶対に外せない仕組みになっている上、もし無理矢理外そうものならすぐにわかる仕様になっている」


「そして天界の各関連施設のデータベースには死者達のデータがキッチリ保管されている」


「当然こちらでも『何かあれば確認してわかる』様にできている……」


「なるほど。 それで人材不足の穴を埋めているってわけか」


「そういう事になるかな」


 ここまでの説明を受けて黒崎は天界における死者達の管理システムの内容が大雑把ながら理解できてきた。


「ただ、それにもかかわらず、ある時を境に、『天界に存在するはずの死者の魂の数がデータと合わない事件』が発生し始めたんだよ」


「! 何だって!」


「本来それは絶対にあってはならない事だし、そもそも起こりえないことだ。 データ保存の際は何重にもチェックしてるし、今言った腕輪が不当な方法で外されれば各施設のモニターと死神達に支給されている小型通信機に反応が出る様になっているからね」


「にもかかわらず行方不明者が出る様になったと…… ちなみにどの程度の数なんですか?」


「…‥ 現時点で一四六名にものぼる」


「! そんなに!」


 かなりの数だ。 それも今説明されたシステム、いくら人手不足でも死神達が動いていてこんな事が起こるものなのか?


「はらわたが煮えくり返る気分だよ…… 地獄行きの彼らだって更生の余地は十分にある! 彼らを守る事も我らの務めだ!」 


「それにこれは明らかに我らに喧嘩を売っている行為だからね……」


 普段温厚な閻魔大王でさえ、流石に怒りの表情をにじませる。


「そして私達は調査をさらに続けるうちに、夜な夜な地獄でフードを被った不審な者達が複数の魂達と連れ歩いている姿を監視カメラが何度か捉えていてね。 画像を拡大、調べたところ、その連れられていたのが行方不明者達だったんだ」


「しかし映像に映っていた情報を頼りに捕まえようにも、まるで我らの包囲網を熟知し掻い潜るかの様に奴らは我らの前に姿を現さない……」




「だが、そんな時…… あれは半年前か。 『異形の怪物』が魂を襲っているという通報が入ってね」

 

「『異形の怪物』だと!」


「そうだ。 黒崎君。 先程、君達が交戦した者と同じ様な姿をした、ね」


「すぐさま近くを巡回していた死神達を急行させ、応援も呼び制圧に成功した」


「そして驚いた事に制圧した怪物は力尽きたのか人型の姿に戻ったんだ…… そしてその人物は行方不明者リストに載っていた一人だったんだ」


「!」


「そして彼を捕らえた死神事務所第二十八支部が取り調べをしたが当日は結局何も喋らなかった」


「まるで何かにおびえているかの様に…… ガタガタ震え、何も喋ろうとしなかった……」


「結局その日は何も情報は引き出せず……」


「そして翌日…… 取り調べの進展の報告が私の元へ来るはずだったのだが、一向に連絡がこなくてね…… あまりにも遅かったのでこちらから連絡したのだが繋がらなくて……」


「近くの支部の死神達に様子を見に行ってもらったんだ…… そしたら……」



 


「殺されていたよ…… 怪物含め、二十八支部の面々全員が!」


「なっ!」


 閻魔大王によって黒崎に明かされる天界に起こっている異常事態!


 驚く黒崎に、閻魔大王は話を続けるのだった……


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