第24話 深夜の報告会 ①

 時刻はもう0時をまわっている。


 皆、事件現場の処理に追われていた。


 被害状況を確認したところ、霧島の偽者以外の捕らえた、残り四人の侵入者達も偽者が爆発したのと同じタイミングで四人も爆発。


 爆発した場所は取調室手前付近の廊下、連行していた七名の死神達が重傷を負ってしまう結果となった。


 死者が出なかったのは不幸中の幸いというべきか……


 天国の治療施設から救急車が到着後、負傷者を搬送、同じく右腕を負傷しながらも事態の収拾活動を行っていたカエラもこのタイミングで治療施設に運ばれた。


 あの後通信で軽くメアリーから説明された本物の霧島も、戻ってきて現場で状況説明を受ける。


 そして事務所のモニター通信で閻魔大王に緊急通信。 報告をするのだった。


「―― 以上です。 私がいながら、このような失態、また、このような時間帯に大王様のお手を煩わせてしまい、本当に申し訳ございません」


 閻魔大王に報告をしているのは司令を務めるメアリー。 数人の見張りと受付以外、事務所の死神は全員揃っている。 


 当然、黒崎も残っている。


「いや、不測の事態に皆、よくやってくれた。 此度の事態収拾と報告、感謝するよ。 メアリー司令。 他の皆や黒崎君も」


 メアリーや他の者達を労う閻魔大王。


「ありがとうございます」


 頭を下げるメアリーと他の死神達。


「しかし、とんでもない事になってしまったな…… 今まで『奴ら』がここまで表立って仕掛けてくる事は『あの時』以来だ」


「ええ。 その通りです」


「他の支所に同様の被害の報告は今のところ上がってきてはいないが……」


「そうですか…… 大王様。 その点について一つ気がかりがあるのですが……」


「俺の事だな」


「! ええ……」


「…… ふむ。 先程の報告によると、その異形とかした怪物は明らかに『黒崎君を狙っていた』との事だったが……」


「間違いないのかい?」


「ああ。 間違いねえ。 あの怪物が、はっきりもらしてやがったからな…… 『捕らえる命令を受けてた』とか何とか」


「そうか……」


 その後、閻魔大王は何か考え込む…… 


 黒崎はずっと気になっていた事を閻魔大王に質問する事にした。


「…… 何か心当たりでも?」


「……いや、…… どうかな……」


 珍しく歯切れが悪い閻魔大王。


「すまない、黒崎君…… 正直…… 『全く、心当たりがないわけではない』」


「!」


「だがはっきり言って、今の段階ではまだ推測の域を出ない…… いや、それどころか単なる妄想に近いレベルだ…… 今、この場でその妄想の内容を口にしても、この場にいる全員を無用に混乱させてしまうだけだろう…… 黒崎君、君も含めてね……」


「無用な先入観を持たせその結果、今後被害を拡大させてしまう事になるかもしれない」


「だからその問いの答えに関しては、もうしばらく控えさせてもらいたい…… 確証、もしくはそれに近い形になったら、必ず答えると約束する…… 今は、どうかそれで納得してもらいたい…… みなの者も」


 そう言うとモニター越しに閻魔大王は黒崎含む全員に頭を下げた。


「そんな! 大王! どうか頭をお上げ下さい!」


「そうですよ! 大王様! おやめ下さい!」


 メアリーがたまらずそう促す。 霧島や他の死神も動揺している。


 天下の閻魔大王が頭を下げている。悪い言い方だが、普通死神風情にあり得ない事だ。


 だが、これが当代閻魔大王なのだ。 


 誰に対しても真摯に接する…… 


 身分等関係なしに。


 そんな彼だからこそ、皆からの信頼も厚いのだ。


 黒崎もはっきり言って全然納得はしていないが、その点は理解している。


「…… わかりました。 では質問を変えます。 これは大王様、というよりこの場にいる全員に、ですが」


 質問を変える黒崎はもう一つの疑問について尋ねる事にした。


「『例の組織』、『奴ら』とは一体何者なんです?」


「流石にこれだけは答えてもらいますよ…… 今、この天界で、何が起きているのかを」


「勿論だ。 それをこれから説明させてもらうよ」


「よろしいのですか? 大王様。 彼とはいえ、人間にこの事情を話してしまっても」


 念の為確認するメアリー。 本来なら普通の人間には伏せている事だからだ。


「かまわないさ。 むしろきちんと説明すべきだろう。 一戦交えた時点で彼も無関係ではなくなったのだから」


「それは確かに」


「少し長くなるが、最後まで聞いてくれるかい? 黒崎君」


「…… お願いします」


今、閻魔大王によって、天界で何が起きているのかが語られようとしていた。


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