第14話 決着
「な、何、今のは?」
信じられないといった様子のカエラ。
あまりの事態に霧島達も驚きを隠せない。
「今のはまさか…… 黒崎さんが霊力をコントロールした? 何の訓練もなしで?」
「その様ですね…… 最も、力そのものは非常に弱かったので、ほとんど意味はなかったようですが」
「ここは天界。 元々霊力は常に満ちている状態です。 何かしらのきっかけで気を具現化させる事が人間にできても理屈ではおかしくはないですが……」
「極限まで追い詰められた事で、黒崎さんが自らの潜在能力の一端を解放、気を放つことができた……という事かもしれませんね。 ただのまぐれかもしれませんが」
「それでも、これはすごい才能かもしれないわね!」
今の状況を分析したのも束の間、霧島はすぐに倒れている黒崎のもとへ飛んで行った。
意識はしっかりあるが、立ち上がれない、といった感じの様子の黒崎。
霧島は黒崎の魂が無事なのを確認してほっとする。
そしてカエラを睨みつける霧島。
「てゆうか…… いい加減納得してくれましたか? もし、これ以上騒ぎを大きくするようなら……」
「僕も…… 黙っていませんよ?」
それは静かだが、それでいて凄まじい怒りと気を纏わせ始めている霧島。
本気で怒りを漂わせる霧島に対してカエラもだんだん冷静さを取り戻してくる。
そして両者睨みあいの中、カエラが一息して口を開く。
「はあ…… わかっていますよ。 霧島君。 この勝負、私の負けみたいですね。」
「…… 何だと?」
「黒崎修二! いえ…… 黒崎さん。 ある程度ですが、あなたを信用させていただきます」
「最後の気の解放、まぐれでも何でも、訓練もなしにお見事でした。 まあ最後の一撃は限界まで手加減していたので、まともにくらっていてもほとんどダメージはもらわなかったはずですけどね」
「! おいおい、どういう事だ?」
意味がわからないといった顔の黒崎。
「私は、わざと事前に霧島君たちのいる場所の直線状にあなたを吹きとばしたんですよ」
「!」
「そして、私は霧島君がまともに攻撃をくらったり、まきこまれたりしたら危ない状態だという事をあなたに聞こえる様に言ったんですよ」
「まあ、実際は嘘なんですけどね。 彼、全然ピンピンしていますから」
「てめえ……」
カエラを睨みつける黒崎。 そして段々状況がわかってきた。
「もっと言ってしまうと、私達死神は別に上級神ではないです。 したがって例の眼も持ち合わせておりません」
「ですので、あなたの本質、人間性を見極めるために、外に出る前に霧島君達と軽く打ち合わせをしていたんですよ。 彼はそこまであなたを追いつめるのを最後まで反対していましたが、私が無理矢理ゴリ押しさせていただきました」
本当に申し訳なさそうにする霧島とエレイン。 メアリーも同様だ。
「もし、あなたが彼らを無視して、自分だけ私の攻撃を避けようものなら、あなたを認めるわけにはいきませんでした」
「ですがあなたは、自分の身を呈して周りの者を守ろうとした。 その姿勢は…… 認めないわけにはいかないですからね」
「中々できる事ではありません。 悔しいですけど、お見事でした。 黒崎さん」
「前例のない話だったので個人的には間違った事をしたつもりは全くないですが、それでも今までの非礼は詫びさせていただきます。 申し訳ありませんでした」
「そして改めて。 カエラ。 カエラ・クリスティンです。 しばらくの間、我らの仕事の補佐、よろしくお願いします。 黒崎修二さん」
「性格悪すぎるやり方な上に、かなり上から目線で正直頭にくるが、まあ必要最低限は認めてくれたって事でよしとするか」
「お手柔らかに頼むわ。 『カエラさん』」
「ただ、その前にまず手当をお願いしたいんだ…… これじゃ仕事どころじゃねえ」
「だらしないですねえ。 あの程度のやりとりで」
「っておい!」
雨降って地固まるというやつなのか、二人共とりあえず納得、そして互いに認め合った部分があるのか二人共良い表情に変わっていた。
そしてそれは二人の間だけでなく他の死神達の黒崎に対しての疑念も晴らしてくれた。
二人の戦いに他の死神達も称賛し、黒崎を認めるのだった。
だが戦いは終わったが、とりあえず黒崎のケガをどうにかしないといけない。
「黒崎さん。 とりあえず応急手当てをした後、天国の治療施設に向かいましょうか。 元々そちらも本日中にご案内する予定でしたし、それにそちらにも書状を持っていかないといけないので」
「そうなのか? じゃあよろしく頼むわ」
「あ、霧島さんも本日は彼の各施設のご案内、簡単な業務内容含む説明、フォローが仕事になってますので一緒にご同行お願いします。 数日の間は彼のフォローがメイン業務になりますのでよろしくお願いします」
「わかりました!」
「では、黒崎さん。 また」
「ああ。 また」
黒崎に肩を貸してとりあえずビルの中に入っていく霧島とエレイン。
それを見守るメアリーとカエラ。
「黒崎修二か。 中々面白い男の様だな。 彼なりの正義もあるみたいだし、見込みもありそうだ。 とりあえずは信用していいんじゃないか?」
「ええ。 そうですね」
「とはいえカエラ君! 少々やりすぎだぞ。 大王様からの決定事項にもかかわらず、あそこまで食って掛かるとは!」
「も、申し訳ありません! しかし!」
「しかしじゃない!」
「…… 申し訳ありませんでした」
冷静になって、完全にやりすぎた事を自覚し反省するカエラ。
「だがまあ、君の気持ちはもちろんわかっているよ。 ただ、もう少しだけ冷静になってくれると助かる」
「…… はい」
カエラは大切な部下の一人。
彼女の事を心配、気にかけてもいるが故に、いきすぎた行動やまちがった事をした時は厳しくもするが叱りつけながらもその眼と心は優しさも兼ね備えているのがメアリーだ。
そしてメアリーの優しさをカエラも十分すぎる程に伝わっている。
そしてメアリーは切り替える様に手を叩いた。
「はい! 反省したならお仕事だ! 気持ちを切り替える! 霧島君の分だった仕事も数日の間、分担しないといけないからね!」
「了解しました!」
「さあ、行くわよ!」
霧島達に続いて、ビルに向かう二人だがカエラは少し不思議な感覚にとらわれ、足が止まっていた。
「あのオーラ…… どこか懐かしい気が……
気のせいかな、?」
「カエラ君!」
「あ、はい! すぐに行きます!」
この感覚が何なのかはわからない。
そもそも気のせいなのかもしれない。
とりあえず今は仕事!
カエラはメアリーの後に続いていくのであった。
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