第8話 閻魔大王からの提案
閻魔大王は続ける。
「君の家庭環境はかなり劣悪だったらしいね…… ほぼ毎日の様に君と君の母親に暴力を振るっていた父親がある日、君の母親と口論、そしてそのまま暴力に発展していって突き飛ばした後、母親を絞殺してしまった」
「自分のしでかした事に呆然とした後、錯乱したのか殺意の矛先は君にも向けらた……」
「だが、君は逃げるどころか母親を殺された憎しみに駆られ、悪い意味で果敢に父親に向かっていったが所詮子供の力。 大の大人には敵うはずもなく、なすすべなくやられていった……」
「父親に殴られ、台所にふき飛ばされ所にその衝撃で、父親が外から帰ってきてから母親ともめる前に彼女が、夕食の準備をしていたのだろう。、その時出していたまな板と食材、それから包丁が君の前に落ちてきた」
「そして君は……それを使って父親を殺した」
「……」
淡々と資料を読み上げる閻魔大王に黒崎と霧島は黙って耳を傾ける。
そして閻魔大王はさらに続ける。
「当時まだ七歳の子供だった君の判断能力と正当防衛性、さらには近隣の住民にも君の父親が毎日のように大声をあげて騒ぎを起こしている事も確認できた為、君に罪はないと世間は判断された」
「その後君は親戚に預けられたが、どこもたらい回しにされた挙句、荒れていったところを当時十五歳の君が後の相方となる泉氏に出会って…… まあ、そこからもいろいろとあったみたいだが引き取られていた親戚の家を出て、解決屋をはじめて今に至ると」
「多少搔い摘んで読み上げたが、まあこんなところで間違いないかな?」
「まあ、そんなところですね……」
「正直、天国行きと地獄行きを決定する一つのポイントとなるのは殺人含め悪質性もしくは残虐性のある行いをしているか否かも参考にさせてもらっている」
「ただ、当時の状況や正当性ももちろん考慮に入れさせてもらってね」
「こんな世の中だ。 殺らなきゃ殺られる場合もあるしね」
「それに不謹慎かもしれないが、人殺しを全員地獄行きにしていたら、紛争等が起きている国では参加している兵士達を全員、問答無用で地獄に叩き込まなきゃいけなくなるからね」
「そういうのに参加している者達にも色々守るべきものや家族、譲れぬ正義といったものがあるからね。 まあ、もちろんそうじゃない者もいるが」
資料を置き、閻魔大王は黒崎に結論を告げる。
「黒崎君。 非情に際どいのだがトータル的に判断させてもらうと、今回君の魂は地獄行きになってしまうかな」
「父親を殺した件については状況を考慮して仕方ないとは思う。 が、解決屋の仕事内容も結構引っ掛かるところが、ある!」
「君や泉氏によって救われた依頼人が多いのは確かだけれど、その反面依頼人の為とはいえその障害になるものには、とても褒められたやり方とは言えない解決法や情報収集方等、思いきり犯罪行為だったのもかなりあるからね」
「ただ、黒崎君の場合、かなり天国行きか地獄行きか際どいラインなんだよねえ。 悪人というわけでもないし、君自身は一本筋は通っている人間みたいだしね」
「そ・こ・で・だ!」
「黒崎君。 ここで一つ提案なんだが、しばらくの間、天界で仕事をしてみないか?」
「仕事?」
いきなり何をといった顔で閻魔大王に聞き返す黒崎。
「ああ。 題して『期間限定 解決屋 天界出張サービス!』ってところかな」
「なっ!」
「ええ~~~!」
想像だにしない発言が飛び込んできた来た事で驚きの表情を見せる黒崎と霧島なのであった。
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