第3話 プロローグ ③
あれから一週間。
「ちいーす」
とある喫茶店のドアを開けて入ってくる者がいる。黒崎だ。
「おう、いらっしゃい」エプロンを着用している祐真がカウンターの奥でコップをふいている
「ブルマン一つ」
「あいよ」
黒崎から注文を受ける祐真。「泉祐真」 彼は情報屋の傍ら新宿の路面店で喫茶店を営んでいる。
そして二階は黒崎の事務所となっている。
「今起きたのか。もう昼の2時だぞ」
「ああ、佐伯さんの依頼が終わってからは二階の事務所も閑古鳥が泣いてるよ」
「まあ、通常運転ですわな。お前、俺がちょこちょこ仕事を仲介しなけりゃ今頃食いっぱぐれてるぞ」
祐真は情報屋といっても仕事の仲介、そして黒崎と組む時は気の短い黒崎のストッパーになったり、たまに手助けと称して一緒になって暴れたりもする。
「まあ、こないだの依頼料、結構もらってんだ。金銭的には、もうしばらくゆっくりしてもいいんじゃね?」
「そうしたいとこだが、ぼちぼち仕事を見つけないとな」
「なにせ誰かさんが情報料と仲介料をごっそり抜いてったからな。」
「人聞きの悪い、腐れ縁のよしみで優先的に仕事紹介してんだ。文句たれるどころか
感謝してもらいたい位だね」
「へいへい」
「はいよ。ブルマン」
祐真が入れてくれたブルマンをいただきつつ店内の様子を見渡した。
「ここもヒマそうだな」
「いいんだよ。本業は情報屋だから」
店内は黒崎以外、客がいなかった。
「というわけで何か仕事入ってない?」
「文句たれた後でそれかよ」
「悪いがこれといった仕事の依頼はきてねえな」
祐真の言葉を聞いてため息をつく黒崎。
「ま、何か依頼がきたらまわしてやるよ」
「おう、よろしくたのむわ」
しばらくの間、まったりした後、黒崎は店を後にしようとする。
「事務所にもどるのか?」祐真の問いに黒崎は
「いや、ヒマだし何かDVDでも借りに行ってくよ」
「じゃーな、祐真」
「おう、いってらっしゃい」
そう、やりとりして黒崎は店を出た。
祐真の店から二十分程歩いた所にあるDVDレンタルショップ。
1番近いレンタルショップで、黒崎も祐真もちょこちょこ利用している。
店内を物色する黒崎。
「ん~……面白そうなのは割と全部見ちまったんだよなあ……」
旧作コーナーから新作コーナーへ移動する黒崎。
「お! この映画レンタル出たのか。」
前から興味があった新作邦画に目がとまった黒崎はそれを手に取り、さらにもう1度
旧作コーナーにもどり、適当に二本チョイスしてDVDを借りて店を後にした。
店を出て十分位歩いたところで黒崎は、自身の少し前方で右側にある公園からサッカーボールが転がってきたのを確認する。
そのボールを車道へ出てそれを拾いに行こうとする小学生位の男の子が追いかける様に飛び出してくる!
そこへ大型トラックが突っ込んでくる!
運転手も気づいたが、明らかにもう間に合わない!
「!っ あぶな!」
気づいたら黒崎はもう既に身体が動いていた。
子供を助けようと飛び込む黒崎。
次の瞬間!
強い衝撃音と共にあたりから悲鳴が鳴り響ていった……
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