第21話 よろしく哀愁 ②
『ご主人、単身赴任だったんだぁ』とモルがリプを送る。
『おめでとうございます』とピノコが余計なコメントを打つ。
『⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄テレテレ』って返すメルモにも腹が立つ。
結婚生活って楽しい?とかで盛り上がる女子トークに思わず『ねぇ俺の話聞いてる?』と語気を強めた。
『今、ちょっと大事な話してるからそっちで男子トークでもしといて』
今、絶賛結婚したい病のモルにキツく言い返される。
『とりあえずエロゲの話でもする?』
トビ男に慰められてもなぁ……。
ひとしきり女子トークのリプの飛ばし合いが終わり、通常の雑談枠が再開した。
みんなが自分たちの話題をひとしきり言ったあとメルモが提案した。
『雑談は雑談で楽しいけど、企画ものとかやってみない?』
『いいじゃん👍』賛同のコメントが続く。
リスナー・アンケートの結果、第1回目はお料理企画って決まったけど……
『待って待って!俺、料理なんてした事ないんだけど…それに調理器具も無いし……』
金のあった頃はウーバー、コンビニ、宅配ピザのローテーションだった俺。
確かに最近は、贅沢しなきゃ食うに困らなくはなった。とはいえ切り詰めなきゃって思いもあって自炊は頭になかった訳じゃないけど急過ぎやしないか?
とりあえず2日間の時間を貰って、簡単な調理器具を買いに行く。
その間は普通の雑談配信をしながら必要な材料や調理器具とかを教えて貰うって流れになった。
でも 翌日も翌々日も、メルモは枠に来なかった。さすがに心配になる。
『あれ?今日もメルモちゃん居ないの?』
ほぼ皆勤賞のメルモが居ないのをさすがにみんな気づいていた。
『明日は来るかなぁ💦この企画の言い出しっぺのメルモちゃん来てくれないと…』
ピノコの言葉にモルがすぐさま返事をする。
『ほら、旦那さん帰って来たし…意外と今頃熱い夜を過ごしてたりして(*´艸`)』
『いやいや意外と旦那様に "男の配信なんか聞くなぁ!" って拘束されたりしてwww』
そうピノコが更に返すと…
『拘束とか素晴らしい響き( ≖ᴗ≖)ニヤッ』
トビ男の発言に女子二人が黙っちゃいない。
『えー引くわぁ💦』
そんなやり取りを見ていた俺の脳裏には以前、トビ男が送り付けたSMチックなエロゲのワンシーンが頭に浮かんだ。でもその顔はメルモのアイコンのアニメキャラのままだ。
その瞬間……
『ウッッ!』
突然襲った吐き気に口元を抑えトイレに駆け込んだ。
習性から咄嗟にミュートにはしたものの枠に戻るとみんな心配したのか『大丈夫?』『どうしたの?』ってコメントでいっぱいだ。
咳払いをひとつして…
『みんなが笑わせるから…さっき飲んだ水が変なとこに入っちゃったじゃないか』
『オッサンやん🤣』
そう言って笑うみんなのコメントに『うるせぇよ』と笑顔で返した。
まぁダンのコメントだけは『誤嚥というのは肺炎を引き起こす場合もありますので』って真面目に『あ、はい』と返したけど。
『なんでテフロンのフライパンに金属のフライ返し買うかなぁ💦』ってダメ出しや、『明日の買い物はブタ肉はコマ切れにしなさいよ』なんてコメントを聞きながら、俺の頭の中はある疑問でいっぱいだった。
想像してムラムラなら分かるけどなんで吐き気をもようしたんだろ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます