第2話 出会いはスローモーション ②
人間の身体ってのは現金なもんだ。
貰ったアイテム代を握りしめ、吉野家の大盛り牛丼を食べ終える頃には身体に力が戻ってくる。やっぱり肉の力ってすげーのな。
腹を満たし眠りについた。
いったい何時間眠ったんだろ……
久しぶりの熟睡から覚めてスマホに向かい配信サイトの入口をタップする。
フォロワー一覧の上にある可愛いアニメキャラのアイコンにホッとする。
『良かった…まだ居てくれた』
リスナーなんて気まぐれな生き物。
昨日まで『私の一生の推しなの』なんて言ってたくせに、ちょっとコメントを飛ばして読まなかったってだけで翌日には平気でブロックするなんて日常茶飯事。
ましてやフォローしてと言われて断りきれず一旦フォローしても枠を離れた瞬間に解除なんてザラな話だ。
だからといってそれで落ち込んだ事はない。
そもそも今までフォロワーの数なんて気にした事なんてなかった。常に1000人を超えるフォロワーの1人や2人欠けたところで痛くも痒くもなかったし、毎日の様に来るDMの返事すら億劫で絵文字ひとつしか返さない事もあった。
それでもなんとかやって来たんだけど、ある時、枠内で揉め事が勃発した。
いや、それは急に始まった事じゃない。気がついていなかった訳じゃない。面倒くささから俺が放置した結果だ。
その小さな火種を一気に燃え上がらせてしまったのは全て俺のせい。
今ならそう思えるけど当時の俺は……
そんな事をぼんやり考えてたら目の前のスマホに文字が浮かぶ。
【メルモさんが入室しました】
『今日はちゃんとご飯食べた?』
第一声がそれかよwと俺は思わず吹いた。
『母ちゃんかよwww』
『((´∀`*))ケラケラ』
『じゃあメルモちゃんの好きな食べ物は?』
『う〜んグラタンかな』
そんな他愛もない会話が続いた時、彼女が一言コメントした。
『さっきから1時間以上話してるけど他に誰もコメントしないね』
たまに通り過ぎていく人はいても誰1人挨拶すら返さない。たんなる過疎とは違う雰囲気を、さすがに彼女も感じたんだろう。
『う…ん……色々あって………』
思わず口ごもった俺に彼女は優しく応えた。
『そかそか(*^^*)色々あるよね』
『言いにくい事は言わなくて🙆♀️』
俺は肺の中の空気を出し切ると思いっきり息を吸ってスマホに向かって言った。
『大丈夫!いやむしろ聞いて欲しい。俺の今までの話を……』
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