【11】他者の成すことを学ぶのは全くためになる

≈≈≈


「結構たくさんれたわねっ!初めてにしては上出来だわ!」


 魔女は両手に抱えた【長虫ワーム】の『たまご』を見ながら機嫌よく言った。二人のゴブリンも革のロープで編んだ【あみ】の中にたくさんの『たまご』を抱えている。

 意気揚々と帰り道を歩く魔女と打って違って、二人のゴブリンは憔悴しょうすいしきっている。

 まさか、【長虫ワーム】の巣穴に入り『たまご泥棒』をする日が来ようとは……。


「あんた達が居てくれて助かったわ。太鼓たいこ叩いてる間は、他に何もできなくなっちゃうから…」


 だから、魔女はこの『たまご泥棒』に仲間を必要としていたのか。と骨ピは心の中だけで思う。…ならば最初からそう言えばいいのに。


「“【長虫ワーム】の巣に『たまご』を採りに行く”なんて言ったら、みんな怖がっちゃってね。まったく意気地いくじが無いったら……」


 魔女はそう言って嘆息たんそくした。“みんな”というのは、この魔女の『集会』に集まるしゃべる生き物どもの中で最も弱い生き物すなわち人間たちのことであろう。無理もない。勇気あるゴブリンにさえそれは難しいことなのだから。

 だから、この魔女は最初不機嫌だったのだな、と骨ピは心の中だけで思った。


「だから、あんた達が来てくれて助かったわ」


 実際いくら魔女でもなかなか一人では生きられないもんなのよ…と、魔女は前を向き歩きながら小声で言った。『魔女』の口からそう言われると真実味がある。


 フム…と骨ピは考え込む。案外あんがいこの男はゴブリンには珍しく『悩む』タイプである。しかし、その『悩み』は全く前向きなものだ。

 

 骨ピは考えていた。


(……俺は、たまご泥棒名人などと仲間に呼ばれて浮かれていたのだ。世の中には俺の知らないこんな『たまご泥棒』のやり方もあるのだな。自分以外の『他者たしゃすことを学ぶ』のは全くためになる)


 骨ピは心の中だけでそう思った。となりを見るとウンラロも何やら思案しあんげな顔をしている。もっとも、この男はいつでも思案げな顔をしているが。


「さあ、帰って集会の準備よ!……勿論もちろん手伝ってくれるわよね?二人共?」


 魔女は二人のゴブリンに流し目を送る。『赤い石一個』では割りに合わないな…と、骨ピは心の中だけで思った。



To Be Continued.⇒【エピローグ】

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