第7話 体育館裏の告白(ツンデレ)
「……ふぅ」
昼休み、俺は体育館の裏口で弁当を食べていた。
ここは日中ほとんど人が来ることがなく、部活の時に利用するのか長椅子も置いてある。
ぼっちの俺に取っては周りの目を気にしなくて良いオアシスのような場所だ。
春の暖かさを感じ、春晴れの空をぼーと見上げる。
やはり、一人は落ち着く……
『キスがしたい』
っ!!
不意に昨日の夜のことを思い出す。
昨日、俺はいきなり黒宮にキッスされた。(しかもめちゃくちゃディープなやつ)
だめだ……やっぱり頭から離れない。
だって、だってさぁ……! やばかったもん! お互いの唾液が行き交うくらい激しかったし!! 完全に俺が捕食される側だった。
あの時の黒宮はなんというか、目が潤んで……まるで発情してたみたいだった。
しかも、キッスの後……
『私と……結婚して?』
なんかプロポーズされてしまった。
生まれて初めてプロポーズされてしまった俺はキャパオーバーしてしまい完全にフリーズ。
そんな俺に対して黒宮さんは
『あ、待って! その……今のは違うからああああ!!』
顔を真っ赤にして焦りながら脱兎のごとく帰ってしまった。
何が待ってなんだ? 何が今のは違うからなんだ?
ああ、助けておばあちゃん。女心が全然わからないよ……
今日どんな顔して会えば良いのかわからなかったが……まぁ、俺みたいな陰キャが黒宮と絡む機会なんてなく……普段通りの黒宮を教室の隅で眺めているだけだった。
正直、今一番会いたくないー
「……こんなところにいた」
少し息を切らしてビニール袋を右手に持つ黒宮が現れた。
なんでこんなところに? いつもは仲の良い白咲さんや黄瀬さんとお昼食べるのに……!!
え? まさか俺に会いにきたのか?
…………なんで?
「…………………………」
え? ちょっと……なんで黙ってるんだ? 俺を探してたんじゃないのか?
なんで俺の顔じーと見つめてくるんだよ。怖いよ……気まずいよ……誰か助けてくれよ……
「昨日のこと、真に受けないでくれる?」
「……へ?」
「あんたみたいなぼっちでコミュ障な陰キャに、この私が惚れると思った?」
「えっ……」
「勘違いしないで。私はあんたのことなんて全ッ然! 好きじゃないんだからね!!」
ツンデレかお前は!?
「じゃあ、なんであんなことを?」
「そんなの私が知りたいわよ!!」
「えぇ……?」
嘘告白の時と違って黒宮の言葉が『嘘』かわからない。『嘘』を見分けるには本人が『嘘』だと自覚していなければいけないからだ。
だから、多分だけど……昨日のキッスに関しては本人もよくわかっていない! 黒宮さん……あんたはおもしれー女を通り越してヤベー女だよ。
「はぁ……ま、そういうことだから」
言いたい事を一方的に言った黒宮はため息をつきながら俺の隣に座った。
え? 隣に座るの? 教室に帰るんじゃないのかよ! もう帰ってくれよ!!
そんな俺の思いは届かず、黒宮はビニール袋から購買のパンを取り出して食べはじめる。
「……そ、それじゃ。お先に失礼します」
「待ちなさい」
黒宮はこの場から逃げようとする俺の手首を掴む。
「あんた。このわたしをこんなところで一人にするわけ?」
お前からここにやってきたんだろ!! という強い思いを抑え渋々座りなおした。
食べ終わるのを待つしかないか……そんな事を思いながら黒宮の様子を見る。
つい、視線が唇を捉えてしまう。
いや、仕方ないだろ……! 昨日あんなことがあったんだから! と心の中で言い訳していると
「何見てんのよ」
黒宮さんに突っ込まれる。どうやら視線に気づかれてしまったようだ。
「まったく、キスくらいで浮かれないでくれる? 高校生なんだからキスの一つや二つ珍しくないんだから」
な、なるほど……陰キャぼっちの俺には考えなれないが陽キャにとってキッスなんて軽いものなんだ。
確かに、陽キャたちはところ構わずキッスしまくってる感じがする。ということは黒宮も隠れて男子当然キッスしまくってるってことか。
俺は所詮星の数ほどいる男子の一人だったってことだ。
「そ、そうですよね……黒宮さんは俺と違って人気者なんでキスくらい数えられないほどしてますよね」
「はー!? 私そんな軽い女じゃないんだけど? 正真正銘のファーストキスだったんだけど!? そんなホイホイキスなんかするはずないでしょ!? 馬鹿じゃないの!?」
ええ!? どっち!?
俺の平穏だった昼休みはキッスや求婚までしておいてツンデレみたいな事を言い出した黒宮さん(ヤベぇ女)によって破壊された。
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