第10話 ある女性の証言
あら、こんにちは。今日はよろしくお願いしますね。
S県の不可思議な話を尋ねて回ってらっしゃるって本当だったんですね。ふふ、ご連絡を頂いた時は驚きました。一体あんな昔のブログどこから引っ張り出してきたんですか?
私自身、もうブログのことも忘れていたのに。
でも、おかげでブログ、消すことが出来ましたよ。
あんなブログ、いつまでも上げておくものじゃありませんからね。
なんというか、若い文章だと思いました、ふふ。
私も当時はまだ思春期の乙女でしたから。今ではもう、三十路を控えた女になってしまいましたけどね。
……ああ、あのブログ、拙い文章ですけど嘘ではないですよ。聞いたお話をそのまま書いたものですから。説明が下手だったことは認めますけど。
早速そのお話を聞きたそうなお顔ですね。
確かに、その為にわざわざS県にいらっしゃってるんですものね。時間をかけるのも勿体ぶっていて良くないですよね。
それではお話しますね。
私の父が小学生だった時のお話です。
K市の、K神社って分社があるんですよ。それがK高校に近い場所にあって、お庭みたいに素敵な場所なんです。自然が豊かで、お社もあって。
それで、父はよくそこの分社で探検をしていたようです。
K市のその辺りは若い父の庭みたいな場所でしたから、結構好き勝手してたみたいですね。
それで、当時はその分社に、倉庫みたいな建物が建っていたらしいんですけど、幼い父はその倉庫に冒険心から侵入したことがあるみたいなんですよ。
薄暗くて埃っぽいその倉庫の中に入った時は、ドキドキしたそうです。
父のわんぱくな姿、目に浮かぶようですよ。そういうこと大好きな人ですから。今もなんですけどね。
そこにね、あったんですって。
人の顔の十分の一くらいの小ささの骸骨。
しかもね、角が生えてた、って。
父はそういうオカルトをくだらない嘘で話す人ではありません。
最初は猫の骸骨だと思ったらしいですけど、猫の骸骨だって耳の骨はそんなふうに残らないでしょう?
父は、その骸骨を「小鬼」と呼んで、たまに眺めに行っていたそうです。手に持ってね、質感を確かめるんですって。
ある時倉庫に行ったら、忽然とその骸骨、なくなっていたらしいんですけど。
ああ、そこの分社も狛狐さんがいらっしゃいますよ。K神社のお狐さんたちより随分と控えめな姿ですけれど。
え? 今まで聞いてきた話と違う?
――あら、怪異が一つだけだって誰が決めつけたんです?
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