第7話 Hさんの発言 文字起こし


 こんにちは。Hです。

 今日は聞きたいことがあるって言われたので、電話しました。

 はい、いえいえ、こちらは本日時間がありましたので。

 構わないんですが……その、本当にあんなお話を聞きたいんですか?


 私としては、S県の印象が悪くなりそうで嫌なんですよね……。せっかく、うちの地域も村おこしとかし始めて、発展し始めたところだから、こういう噂を悪用されそうで……なんというか、信用がいまいち、あ、すみません……気を悪くされましたよね……その……私はS県が大好きなので、U市も大好きですから、その為に観光案内所に勤めたのもありますし……。

 うーん、まあ、悪用されないのならいいです。本日はよろしくお願い致します。


 それで……神社についてでしたよね。はい、確かに上司が言うには、僕の同期に、身体の中に神社を持った人間がいるということですよ。その人の個人情報は伏せさせてください。あの人、凄く仕事に真面目で……優しい、優しい人なんです。迷惑なんて、掛けたくないですから。


 どこからそのお話を聞かれたのか分かりませんけど、S県のはよくそういった方のことをお話してくださいますよ。


 その人の胸あたりに、神社と鳥居があるってお話です。

 なんの事? って、聞いた人は誰だって思いますよ。意味わかんないですもんね、人の中の鳥居なんて。


 でも、霊感がある人みんな口を揃えて言うんですよ。


 この人の中には神社があるって。


 それで、私、同期の、じゃあBくんということにしましょう。Bくんと一緒に、あるの元に行きました。


 そういえば、余談ですけど、って他の地域ではどんな言い方をするんでしょうね?

 沖縄とかだと、ユタとかですかね?


 まあ、それは置いといて。


 ええっと、にお話を聞こうと思ったんですよ、同期の持つ鳥居について。


 同期もその存在については知ってるみたいですけど、私がいくら聞いても、にこやかに笑うだけで答えてくれないので、私が無理やり連れて行ったんです。無理やりというか、騙してというか。

 一緒に行きたいところがあるから行こうって言って、一緒にの所に行きました。

 Bくん、そこがどこだか分かっても相変わらずにこやかなままなんですよ。ずっとそうなんですよね。私、彼が怒ったところは見たことないです。仕事でイラついたりしてるところも見たことありません。ただ、いつも微笑して過ごしてます。


 目も凄く綺麗で、本当に聖人みたいな人ですよ。悪いこととか嘘とか、知らないって顔をしてます。


 それで、に顔を合わせて、Bくんを紹介した時に、は目を見開いて深くお辞儀してました。手を合わせて、深々と。

 Bくんはそれを目の当たりにしても変わらずにこやかなままでしたけど。

 奇妙な光景でしたよ。依頼したのは私の方なのに、あんな迎えられ方をするなんて。


 それで、お茶を頂いて、ああ、ですか?


 いえ? お坊さんじゃないですよ?

 普通のおばさんみたいな、女性の方です。ええ、男性じゃありません。


 それで、えーと、のことはIさんって呼びますね。


 Iさんに、私が単刀直入に尋ねたんです。


 「Bさんの中に神社があるって本当ですか?」


 って。

 そしたらIさんは、目をうっすら細くして、なんというか、目が吊り上がったように見えましたけど、そんな感じの表情のまま、ちょっと笑って、頷きました。


 「その通りです」


 と仰ってましたよ。


 だから私、「その神社ってなんなんですか?」って聞いたんです。


 だって、気になるじゃないですか。


 Iさんは、S県の地図を開いて、解説? みたいなの、してくれましたよ。


 えーと、何だったかな、K神社。そこがね、泉みたいに湧き出てるらしくて。と言っても、別にね、どの県にもそういう、神社を持った人間はいるみたいですよ。


 神社って、古今東西繋がってるらしいです。

 それで、泉っていうのは、エネルギーみたいなものらしくて、こう、日本を連ねて湧き出てるんですって。


 それが、たま〜に人の中に入り込む? みたいな。

 や、詳しい話は本当に難しくて頭の中に入らなかったんです、はぐらかしてるわけじゃなくて。

 はあ、信じてくださってるならいいんですが、すみません……。


 とにかく、神社の一部を切り取って生まれる、みたいな話らしいです。中には自発的に神社を持つことができる人もいるみたいですけど。徳を積んだらどうのこうのって、Iさんは言われてましたね。


 うーん、ええと、そうですね、Bさんはその話を聞いても変わらずニコニコしていたままでしたよ。特に変わった素振りは無かったです。


 Bさんですか? ええ、普通の出自の方ですよ。

 神社に関係する人じゃありません。なんか、Iさんの話だと、正直神社の家系云々はあんまり関係ないみたいでしたけどね。


 ああ、そういえば、Iさんこの辺りじゃ有名ななんで、いろんなお客さんがいらっしゃるみたいなんですけど、私たちの前にIさんの家から出て行ったと、その人の付き添い人? みたいな方々が凄く印象的でしたね。


 付き添い人みたいな人は凄く項垂れてて、しくしく泣いてました。ずっと。

 それで、の方は、なんだか、顔つきが……。

 うーん、目が吊り上がってて、能面みたいなんですよ。それで、凄く高い声で「ケーン!」て鳴くんです。

 気味が悪かったですね、こういうの話したら、またS県の観光客、減っちゃいますかね……。

 私としては、S県には多くの観光客に来て頂きたいんですけど。


 だって、S県って凄く魅力的なんですよ。本当に。

 どんなとこって……。

 自然ですよ、自然。

 人もいいし。

 でも一番の魅力は――(最後が聞き取れず、文字起こし不可能)

 


 

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