第6話 オカルト版スレッドタイトル『S県に行ってきたんだけど奇妙な出来事に遭遇したから書き込む』より


オカルト版スレッドタイトル

 『S県に行ってきたんだけど奇妙な出来事に遭遇したから書き込む』より


 親の出身が九州のS県でさ、春休みだしちょっと遠出してS県に行くかーってなったんだよ。

 俺は行ったことなかったし、S県なんてほぼ知らんとこだから、どこだよその田舎とか思ってて、まあ、あんまり乗り気じゃなかった。

 でも今年の四月から社会人になるし、親元離れるから、親孝行しときたいのもあって、一緒に過ごす時間も大切にしたいよなーって、行くことにしたんだよ。

 で、今回俺たちが泊まった旅館がU市ってとこで、昔からの観光街なんだってさ。

 普通に風俗とかもあって、でもやっぱ田舎なんだよね。なんて言ったら分かりやすいかな、街並みとか景観がちょっと独特でさ。

 ジブリの千と千尋の神隠しみたいな感じ。

 秘境感はあるんだよね。

 田舎の中で懸命に村おこししてるらしくて、海外の観光客も多かったよ。


 それで、U市に行くまでに、ちょっと寄り道しようってんで、K市にある三大稲荷のK神社を見に行ったんだよね。参拝に行った。

 すげー立派で、入口? の鳥居のとこに石で出来た狐さんが向かい合う形で居るんだけどさ、なんかそこから妙に視線を感じてちょっと心許なくなったっていうか。

 U市でも不思議なことは起こったんだけど、ひとまずK市のK神社で起きたことを書こうと思う。


 いや、ほんとに凄く綺麗で良いとこだったんだよ。お前らにも行って欲しいなって思うくらい。

 で、藤棚があってさ。丁度見頃だったんだよ。

 でもめちゃくちゃ蜂がいて、俺は虫嫌いだから、近づけずにいたんだ。

 とりあえず本殿にお参りして、まあ、おみくじ引いたり、色々やった。

 余談だけど巫女さんめちゃくちゃ美人だった。


 でさ、俺たち神社に着いたのがもう十七時前だったんだよ。本当はさ、午前中に行かないとダメらしいじゃん、神社って。


 でもそういうスピ系のことってうちの親もあんまり信じないしさ、俺もそうなんだけど。


 だからまあ記念にお参りくらいいいじゃんねって感じで、ほんと軽く。


 今思えばその軽くが良くなかったのかもだけど。


 帰りにさ、その藤棚のとこにさ。

 めちゃくちゃ綺麗な人が立ってたんだよ。凄い綺麗なの。

 服はなんか、平安時代とかそういう時代の着物だった。

 で、長い帽子みたいなのあるじゃん、あれを付けてて、髪もすっごく長くてさ。

 でもその人の身長が、二メートルをゆうに超える大きさだったんだよ。

 藤棚の隣に、藤棚よりデカい図体して、俺たちの方をじーっと見てた。

 めちゃくちゃ美人だけど、顔は能面みたいだったな。

 でさ、俺たちに向かって、ちょっと手を振ったみたいに思えたから、俺も軽く手を挙げちまったんだよね。

 そしたら、その瞬間、能面みたいな顔がさ、ぐにゃあって歪んだように笑って。


 次お前


 って、聞こえたんだよ。


 でさ、俺多分、もうあんまり時間がないと思う。まだこうやってPCの打ち込みは出来てるけど、多分それもあと三日くらいでできなくなるんだよね。


 なんかあの時、その人から貰っちゃったっぽくて。

 U市のことも書きたいから質問あったら続けるけど、無かったらまあいいかな、くらい。


 最近高熱が出て、家にある階段をさ、軽く跳びおりることができちゃうんだ。

 自分の気持ちとかじゃなくて、身体が勝手に動くんだ。

 で、鏡を見たらさ、俺の目がなんか、吊り上がってて。

 でも顔は、あの人みたいに能面なんだ。

 笑おうと思っても出来なくてさ。


 最近、眠ってる時間も凄く短い。夜は勝手に衝動的に叫んでボロボロ泣いちゃうんだよ。朝日が昇ってきたあたりで、ころっと寝ちゃうんだけど。


 でもさ、めちゃくちゃ元気なんだよ。元気っていうか、俺が俺じゃなくなっていくみたいな、変な感覚があるんだ。

 多分、憑かれてるんだと思う。


 最近、耳元で、ケーン、ケーンって、赤ちゃんが泣くみたいな声がする。

 ずっとしてるんだ。何をやっても止まない。


 ほら、今も。

 な、お前らにも聞こえるだろ?


 ほら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る