第121話 錬金素材を生み出す剣
あの後も錬金武器や外套については色々と検証を進めて分かったことがある。
アイテムスロットに入れられるのはダンジョンのアイテムだけで現実世界の物はダメだった。また現実世界で加工されたアイテムも対象外となってしまうらしい。
だがその代わり錬金アイテムでもアイテムスロットに入れることは可能なことが分かった。
だから錬金武器に錬金武器を込めることも可能な訳だ。もっともそれをしても現状では何の意味もなかったが。
残念なことに爆裂玉をスロットに入れた剣を更に別の剣のスロットに入れてみたら、最初の方にあった爆裂玉は消滅してしまったからだ。
どうやらスロットに込められたアイテムは、別のアイテムに込めた際には消えてしまうみたいだ。
(それに錬金武器同士を組み合わせても何の効果も発揮しなかったしな)
元々の錬金武器には特殊な効果など何もないので、スロットに込めたところで何も起きない。
あるいは二重になることで何らかの効果を発揮するのではと僅かに期待していたのだが、その予想は外れだったようだ。
そんなこんなでとりあえず爆裂玉を込めた錬金剣を三十本、身代わりの指輪を込めた錬金外套を二着ほど作ってアルケミーボックスに収納しておく。
身代わり機能付きの錬金外套はもっと作っておきたかったが、手持ちの身代わりの指輪はこれだけしかなかったのだ。
(後でオークションでも利用して手に入れないとな)
そうして手持ちの爆裂玉を錬金武器にどんどん込めている最中にふと思いついたのだ。
アイテムスロットにアイテムが込められるならスキルオーブなども込められるのではないか、と。
そんな素朴な疑問の答えを知りたくなってしまった俺は、試しに実行に移してみた結果が目の前のこれである。
「なるほど、こうなるのか」
低位錬金武器(剣)
品質 27
STR1
アイテムスロット スキルオーブ(錬金素材作成レベルⅥ)
使用回数5回
たった今、生み出したばかりのスキルオーブがスロットに込められている。
そして使ってみたところMPを消費せずにレベルⅥまでの錬金素材を一つ作ることができた。
その際には勿論使用回数が減っている。
そう、世にも奇妙な錬金素材を生み出す剣がここに誕生した訳だ。
このことから分かる通りどうやらスキルオーブを込めた錬金武器の類は対価なしでその効果を発揮できるみたいだった。
だがよくよく錬金術師のジョブのことを考えればこれは当たり前なのかもしれない。
(錬金術師は錬成術師と同じようにジョブ専用のスキル以外が使えなかった。この武器とかはその不利を覆すための代物ってところか)
解析率もそうだったのだが、スキルオーブの錬金に使う魔石など一部の魔物由来の素材は何でもいい訳ではなくて、どうやらある程度新鮮なものでなければならないものがあるらしい。
錬金術師がそれらを手に入れるために強力な魔物と戦うとなった時、ジョブで手に入るスキルでは明らかに心許ない。
他で手に入れた戦闘スキルなど全く使えないのだ。
俺のように固有のスキルやジョブがあるとかの半ば反則に近い何かがなければ不可能に近いと言えるだろう。
だがこうして錬金武器にスキルオーブなどを込められるのなら話は変わってくる。
回数制限があるとは言えスキルを無条件で使えるようになるのだから。
また錬金剣士のジョブレベルが上がった際に、回数補充アイテムのレシピも俺は手に入れている。
だから壊れる前に回数を補充すれば、半永久的にそれらを稼働させることが可能になるはずだ。
つまり目の前の錬金素材を生み出す剣も使い方を誤らなければ壊れることなく永遠に素材を生み出せるはず。
運が良いことに回数補充アイテムの素材は錬成水、錬金砂、錬金土、錬成紙、錬成鉱なので今の俺でも作成は可能だ。
作ってみた回数補充アイテムにも50回の使用回数があって、どうやらこの使用回数を他のアイテムに移し替えることができるらしい。
素材を生み出す錬金剣、略して素材剣の消費した使用回数を補充すると補充アイテムの方の回数が一つ減っている。
「うん、これはかなり使えるな」
これがあれば回数補充アイテムさえあれば俺がいなくても錬金素材に限っては作り放題になる。
また一つ、俺だけにしかできない仕事が減ることに繋がる訳だ。
「それにスキルオーブが作れるようになったらもっと色々なことができるようになる」
それこそスキルオーブに込められるスキルなら回数制限以外はほぼ無条件で使い放題になる。
それがどれだけとんでもない事なのかは説明するまでもないだろう。
「となるとより一層早く上のダンジョンに潜れるようにならないとな」
スキルレベルアップポーションがまだ作れない以上は、自分のスキルをレベルⅥ以上にするのにはどうしても時間が掛かる。
ならばもう一つの魔物の魔石を使う方法を取るべきだろう。
それなら上のダンジョンの強い魔物を倒しさえすれば手に入る心当たりがあるのだから。
なおジョブオーブは錬金武器などには込められなかった。
込めようとした際に低位錬金武器ではこのアイテムは使用できませんと錬金真眼で表示されたのだ。
それが指し示すことは、きっと中位以上のものなら可能なのではないかということでもある。
「くくく、これは面白くなってきたぞ」
錬金剣士が俺を高みへと連れていってくれると信じてここまで突き進んできたが、その想像を遥かに超えてきそうな予感がしてならない。
それと同時にこれだけのことが出来る錬金術関連のことを御使い達が隠そうとするのも納得できた。
あいつらにとってもこの力や技術などは自分達以外に渡したくないものなのではないか、ということだ。
(隠そうとしたって無駄だぞ。この力の全てを必ず俺は手に入れてやる)
改めて錬金という力の可能性に期待を膨らませた俺はそう胸に誓うのだった。
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