第120話 各種スロットと真価を発揮するアイテム

 詳細は省くが俺達の活躍で東京の治安がそれなりに良くなったとだけ言っておこう。

 そしてそれによって功績もたんまり稼げたのは間違いない。


 なにせ一度に大量に指名手配された探索者が捕まったことで、探索者用の留置所などがパンクしかけたくらいだし。


 隆さんには助かるけど限度を考えてくれ、と言われてしまったくらいだ。


 なので次からは一度にやらずに随時送り付けることにしよう。

 定期的な功績稼ぎとして使えるから今後もやるつもりだし。


(これならE級への昇格試験もすぐに受けられそうだな)


 それに見合う功績は十分に稼いでいるし隆さんにも早めに試験を受けたいと希望を伝えているからたぶん行けるはずだ。


 だから今の俺の関心はそこにはない。

 それよりももっと重要なことが判明したからだ。


「スロットか」


 前にも述べた通り鑑定能力が強化された錬金真眼では、回復薬などで熟練度とフレーバーテキストが見えるようになった。


 その中でフレーバーテキストの方は未だにどういう意味があるのかよく分からないが、熟練度はどれだけそのアイテムを作成したかによってその数値が変わることも検証の結果で判明している。


 今のところ熟練値による変化は確認できていないが、これも品質と同じでMAXの100になるかそれに近づけば何か変化があるのかもしれないと予想していた。


 だがそれ以外でも見えるようになったものがあったのだ。


 それがスロットと呼ばれる一部のアイテムだけに存在していたものである。


 低位錬金武器や錬金術師の外套、そして空のスキルオーブなどにスロットはあるようでこれらのアイテムはそのスロットに適したアイテムなどを入れることで真価を発揮するようなのだ。


(スロットが見えないとそもそもそこに何も込められないって仕様なのか。どうりで何をやっても使い物にならなかった訳だ)


 まずスキルオーブだが、それにはスキルスロットと呼ばれるスロットがあるみたいだ。

 そしてジョブオーブにはジョブスロットと呼ばれるものがある。


 そのスロットを埋めるためにはスキルレベルⅥ以上のスキルを持った存在が一定以上のMPを込めるか、またはスキルレベルⅥ以上のスキルを有していた魔物の新鮮な魔石を錬金することでその存在が持っていたスキルを込められるらしい。


 ジョブの方もスキルレベルがジョブレベルに入れ替わっただけで原理は同じだ。


(つまり今の俺ならスキルオーブでもジョブオーブでも問題なくスロットを埋められるはず)


 スキルレベルⅥ以上のスキルを持っている魔物は残念ながら低級ダンジョンでは滅多にいない。

 仮にいたとしてもそこまで強いスキルではないのでこちらは今はやるべきではないだろう。


 やるなら俺が有する錬金剣士を込めるべきだ。


固有職ユニークジョブってことは他にないはずだけど、これに込められるもんなのかね?)


 その答えは試してみることでしか分からないだろう。なので早速やってみたのだがそれは想像以上に大変だった。


 なにせ必要としたMPが1000という大量なものだったからだ。


 俺は魔力回復薬マナポーションをがぶ飲みすることでどうにかできたが、これの量産に成功していなかったらまず間違いなく出来なかったに違いない。


 だがその甲斐あってジョブスロットには確かに中身が込められており、空のジョブオーブという名称もちゃんと変わっていた。


「錬金術師のジョブオーブか。どうやら固有職ユニークジョブを込めた場合はその下位互換に変化するみたいだな」


 この分だと錬金真眼も同じだろう。


 これらの固有のものは他者に分け与えることはできないみたいだ。それは素直に残念だったがそれでもこの成果は大きい。


 なにせスキルオーブやジョブオーブで手に入るそれらは、ステータスカードさえ持っていれば無条件で獲得できるからだ。


 ランクが足りてないなども関係なくて、仮にランク1の探索者になりたてだろうと第四次特殊職である錬金術師を獲得できるのである。


(これで錬金術師の数が足りてない問題もどうにかなるか)


 錬成素材ならともかく錬金素材を作れるのもこれまでは俺だけだった。


 だがスキルオーブに錬金素材作成スキルを込めることも出来たので、これを誰かに与えればその問題も解決である。


 会社の事業として考えた時に俺が居なければ成り立たないのははっきり言って危険過ぎる。


 無論そう簡単に死ぬつもりなど毛頭ないが、それでも誰かに頼り切りである現状を改善できるのなら早めにするに越したことはない。


(愛華もランク10になって次のジョブを何にしようか考えていたところだったし丁度いいな)


 本人が望むならこのジョブオーブを与えて錬金術師になってもらえばいい。


 補正値もALL4と優秀ではあるし最終的には本人の意思次第だが悪くない選択肢だと思う。


「それでこっちはどうなるのかね?」


 錬金武器や外套にはアイテムスロットが存在していて、どうやらそれが見えた状態で別のアイテムをスロットに組み込む形で錬金しなければならないようだ。


 試しに爆裂玉を錬金剣に錬金してみるとこうなった。


低位錬金武器(剣)

品質 27

STR1

アイテムスロット 爆裂玉

使用回数5回


(ステータス補正に影響はないのか)


 スロットに入れたアイテムによって強化されるステータスが変わるとかだと思ったのだが違うらしい。


 でも使用回数があることから何となくどうなるかは分かったので、試しにクイーンスパイダーを斬ってみたら、


 敵に剣が当たった瞬間、ものの見事に爆発した。


 しかも普通に爆裂玉を使うよりも明らかに強力になっている。


「クソいてえ」


 敵も自分も爆発をモロに受けた結果、俺は結構な重傷程度で済んでいたがクイーンスパイダーは一撃で死んでいた。


 どうやら錬金武器は錬金アイテムだから錬金剣士による錬金アイテム強化のジョブ効果の対象となるらしい。


(アイテムを込めることでその効果を発揮できるようになる。そして錬金アイテム以外でも錬金アイテムとして運用することが可能になるのか)


 更に使える回数が増えるのも地味に有難い。


 錬金外套も錬金武器の防具版のようなので身代わりの指輪を錬金してみたら、こちらも使用回数が5回になっていた。


 そして実際に攻撃を受けても五回までは錬金外套がダメージを肩代わりしてくれたのである。


「これはかなり使えるな」


 しかも回数があるということは最近手に入れたスキルの過剰駆動オーバーロードが使えるはずだ。


 最後にそれを試すべく爆裂玉を込められた錬金剣に過剰駆動オーバーロードを使ってみる。


 念のために身代わりの指輪を錬金した外套を着た状態で、また出現させられたクイーンスパイダーに投げつけてみた結果、


「えっぐ」


 その一撃で剣もボスも欠片も残さず消し飛んだ。


 余波もとんでもないことになっているので使いどころは難しいかもしれないが、強力な武器が手に入ったこと自体は大変喜ばしいことである。


 ただし錬金武器に回復薬が込められない点や外套に爆裂玉が錬金できなかったので、どうやら武器や防具などの特性に適したアイテムしか込められないようだ。


(爆裂玉を付与された外套とか面白い使い方出来そうだったんだけどな)


 攻撃されたら爆発するとか結構面白い使い方出来そうだったのにそこは非常に残念である。でもかなり色々と使える力が手に入ったことには違いないので大満足である。


(上のダンジョンでも試したいな)


 そのためにも功績稼ぎに精を出していち早く昇級しなければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る