「『死刑の仮想現実空間における執行及びその執行に伴う釈放の特例に関する法律』の概要及び同法執行に係る要綱の概要」

法務省第1号

西暦2040年5月1日


西暦2040年4月1日施行の「死刑の仮想現実空間における執行及びその執行に伴う釈放の特例に関する法律(以外「仮想現実空間死刑執行法」と呼ぶ。」)について、同年5月1日より現在勾留されている死刑囚から無作為に10名を選出し、同法の執行に関する要綱に基づき、刑を執行する。

ついては、今回選出された死刑囚一同に仮想現実空間死刑執行法の概要及び同法の執行に関する要綱の概要を通達する。


本日西暦2040年5月1日及び2日を刑の執行に係る死刑囚への通達及び周知の期間とし、同年同月3日より刑を執行する。


ついては、以下の通達の内容を充分に理解し、刑の執行に望むようされたい。


仮想現実空間死刑執行法の概要


1 刑法11条に規定する死刑の執行について、西暦2040年4月1日から西暦2050年の10年間、本法で規定する仮想現実空間内において、別に定める要綱に基づき執行する。

2 死刑の言い渡しを受けた者を仮想現実空間に接続する機器等は、刑事施設内に設置する。

3 仮想現実空間内で死刑の執行により、死亡が確認された者は、死刑が執行されたものとみなし、釈放する。ただし、別に定める基準に満たないものは、その限りではない。


附則

本法は、本法施行以前に死刑の言い渡しを受けた者にも適用する。



仮想現実空間死刑執行法の執行に関する要綱の概要


1 死刑の執行は、法務大臣の通知する期間内で執行する。

2 刑場は、法務大臣の通知する仮想現実空間内とする。

3 死刑囚は仮想現実空間内において苦痛の度合いを計測し、それを数値化している。以下、その数値を苦痛値と呼ぶ。

4 本刑場において死亡が確認された場合、仮想現実空間から退出することができる。

5 本形場において、死刑が執行された場合、仮想現実空間から退出した場合も刑が執行されたこととみなす。ただし、死亡時に累積した苦痛値が、一番低かった者は現実世界において、絞首刑を執行する。また、他者へ与えた苦痛値と、自らが受けた苦痛値の和が別途定める規定値を超過していない場合、同様に現実世界において、絞首刑を執行する。

6 本形場において、死刑の執行は各死刑囚において行うものとし、その方法は問わない。

7 執行の開始から1日につき1名、本刑場での死亡が確認された時点で、当該日の死刑の執行を終了し、全ての死刑囚は独房に戻る。ただし、傷等の手当ては行われず、翌日の午前7時までに独房内で死亡した場合は、翌日の死亡者に起算しない。

8 死刑の執行の時間は午前7時から午後9時(以下、「執行時間」と呼ぶ。)までとする。

9 1日毎の執行時間内において、1名以上の死刑の執行が行われなかった場合、本刑場での刑の執行は即座に中止され、仮想現実空間退出後、全員を即日絞首刑とする。

10 執行期間の最終日が終了した時点で、または仮想現実空間内において生存を確認できる死刑囚が2名になった時点で、本刑場での死刑の執行を終了とし、残された2名のうち、他の死刑囚に与えた苦痛値が低いものは、現実世界において死刑を執行する。



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