第3話

次の日の昼間


「一人暮らし始めて早々に料理が上手で可愛い女の子と同棲出来るんだから良かったでしょ?」

「それ自分で言うか?」

流石に見捨てて消えられても嫌なので一緒に住むことを了承。

「取り敢えず一緒に住むならある程度のルール作った方が良いよね?」

「ルール? 私のお風呂覗く毎に指を一本詰めるとか?」

「そんな物騒なルール作らねぇよ! そもそも覗かないから!」

「じゃあ何を決めるのよ? ちなみに覗いたら本当に指詰めるからね」

「普通にご飯当番とかごみ捨て当番とかを決めたいんだよ」

「それなら家の中の家事全般は私がやるわよ? ただごみ捨てとか買い物は家からあまり離れられないからお願いしたいわ」

「正直言うとまともな飯作れないからそれは助かる。食材とかは花子さん買いに行けないしネットで買うのがいいか?」

「私スマホとかタブレット持って無いわよ?」

「俺の使ってないタブレット有るからそれあげるよ。あと花子さんの服とか日用品も買わないといけないよね。あ~、給料日まであと6日あるんだけど待てる?」

「自分の分は自分で買うから大丈夫よ。私、意外と金持ちなんだから」

花子さんがポケットから金色のクレジットカードと通帳を取り出す。

「ほら、ね?」

開かれた通帳には、

「え~っと一、十、百、千、万、十万、百万、千万…何でこんなに持ってんの!?」

「たまに悪霊退治の依頼だったり廃墟に入り浸る不良の駆除の依頼をされるのよ。この業界相場が高いから」

「花子さん取り憑いたトイレからそんなに離れられない筈でしょ?」

「家主の了承が有ればそのトイレに移動出来るわ。そして一時的に取り憑くの。全国に私の怪談が有るのはそのせいよ」

「ちなみに依頼ってどーやって受けてるの?」

「人間に化けてる怪異が依頼を受けて、それに適した怪異が派遣されてるわ」

「まさかの派遣会社なんだ…」

「まぁよっぽどじゃない限り私に依頼は来ないんだけどね」

「ん? 何で?」

「私って怪異的には上位だから依頼料が高いのよ」

「花子さんってもしかいて強いの?」

「まぁね。怪異の強さ=認知度って思ってもらえれば良いわ。まぁ移動範囲に難有りだから余計に依頼が少ないのよ。本当はもっと稼ぎたいんだけどね」

「そんなに稼いでどーすんの? 今でも充分金持ちじゃん」

「取り敢えずは学校を建て直したいのよ。また皆で過ごせるように」

「学校建てるってかなりの額が必要になるんじゃない?」

「土地代と材料費さえあればヌリカベ達に建て直してもらえると思うわ。だからそれまでここに住まわせて欲しいの。良い?」

「まあそれは構わないけど」

「ありがと」



「…そう言えば貴方今日も家に居るけど仕事は? まさかニートじゃないわよね?」

「ちゃんと働いてるよ。今日まで引っ越しで休みにしてもらったの」

「へぇ、何してるの?」

「近くのコンビニ」

「え? まさかバイト?」

「いや社員だよ」

「ふーん。ん? 近くにコンビニなんてあった?」

「一昨年位に出来たんだよ」

「そうなんだ。もう私が知ってる町とは変わってるんでしょうね。ところで、何でそんな近くで働いてたのに会いに来なかったわけ?」

「実家から電車通勤で1時間半かかっててそんな余裕無かったんだよ。田舎だから電車の本数少なくて乗り過ごせないし。仕事しながら車の免許も取らなきゃいけなかったしな」

「出た言い訳。私、会いに来なかったこと結構根に持ってるからね」

「ごめんって。どーしたら許す?」

「なら夜ご飯に櫻寿司の出前特上寿司で手をうつわ」

「櫻寿司? どこら辺に有るお店?」

「近くの商店街の端に有るお寿司屋さん。ここら辺では結構有名よ?」

「え? 商店街?」

商店街なんてあったっけ?

俺はスマホで付近の商店街やお寿司屋さんを調べてみることにした。

「花子さん、その商店街って桜町商店街ってところ?」

「あっ、そうそう桜町商店街! 知ってた? 当時は精肉店の揚げたてコロッケが1個30円で食べれたのよ。まあ今は流石に値上がりしてるでしょうけど」

「…その商店街40年前に区画整理で無くなってるね。櫻寿司の場所、今俺の働いてるコンビニになってるわ」

「…え? 商店街無いの? じゃあ精肉店は?」

「ガソリンスタンドになってるね」

「商店街って無くなることあるのね…町がそんなに変わってると思わなかったわ。なんか浦島太郎になった気分よ」

「夜ご飯どーしよっか?」

「他にお寿司屋さんなんて無いわよね?」

「回転寿司なら2件くらい有ったよ?」

「回転寿司って何?」

「何でチューハイとかコンビニとかスマホにタブレット知ってて回転寿司知らないの? 」

「スマホはヌリカベが学校にWi-Fi引いてくれたから使ってたの。月1回は体育館でスマホをプロジェクターに繋げて映画公開とかもしてたわよ。それで回転寿司って何なのよ?」

俺はスマホに『回転寿司』と打ち込み花子さんに動画を見せた。

「これ出前も出来るの?」

「出前はやってないけどお持ち帰りはやってるから自宅で食べれるよ」

「そうなんだ。じゃあ今日は初の回転寿司で飲みましょっか。ねぇねぇ、お持ち帰りの場合はどうやってお寿司回転するの?」

「…」

「…?」

「じゃあ寿司買いに行ってくるね」

「え? あ、うん。で? 自宅でどーやって回転寿司やるの? 回転寿司のレーンも付属してるの?」

「…」

「まさか…自宅では回転しないの?」

「…電子レンジのターンテーブルじゃ駄目?」

「それ焼き魚になるわよね?」






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