第23話

少女は血で濡れた両手で俺の顔を掴み、

「目が…見えないの…暗い…暗い…暗いの…ねぇ…私の目、知らない?」

少女は目の無い目で俺の目をじっと見る。

「ねえ…あなたの目を…ちょうだい?」

ゆっくりと近づく少女の顔に俺は…


デコピンをした。


「はうっ! ちょっ!痛いのですぅ…暴力はだめなのですぅ」

「…ケイちゃん久しぶり、なにしてんの?」

顔が近付いたことでわかった。

この子は学校の七不思議、走る人体模型のケイちゃん。

小さいとき一緒に廃校を走り回って、よく転けては内臓を飛び出させていたおっとり系ドジっ娘。

「お久しぶりですぅ。いやぁ~久々の再会を盛大なイベントにしようと頑張りましたぁ。楽しんで頂けましたかぁ?」

「お前等怪異は普通に再会を喜ぶことは出来ないの? ビビるから今後は普通にしてくれない?」

「はぅ、自分の特技を活かしたサプライズだったんですけどぉ」

「手の込んだ嫌がらせの間違いだよね? それより、目が無いみたいだけどどうしたの?」

「学校が取り壊されるときに慌ててたから落としちゃったんですぅ。何か目の代わりになるものとか有りませんかぁ?」

「目の代わりになる物って言われてもなぁ。取り敢えず探してみるからこのマネキン達退かしてくんない? てか、このマネキン達どーしたの?」

「あ、皆さん放して大丈夫ですよ。このマネキンさん達はショピングモールフォルテのマネキンさん達です。私が目が見えなくて迷ってたところを助けてくれたん命の恩人なんですぅ。帰る場所が無かったので一緒に服屋さんでマネキンとして働いてましたぁ」

俺はマネキン達に向かい、

「友人を助けていただきありがとうございます」

するとケイちゃんが、

「いえいえ、別に大したことはしてないですよ。困ったときはお互い様です」

「…それお前が言うの?」

「え? はうぅ、違いますよ私はマネキンさんの言葉を伝えただけですぅ」

「あ、ごめんごめん」

ケイちゃんは物の言葉が聞き取れるのだ。



俺はケイちゃんの目の代用品を探しにリビングへ。

なかなか目の代わりになる物が見つからない。

そもそも目の代わりになる物って何があるんだろ?

『トントン』

肩を叩かれ振り向くとそこには1体のマネキン、手招きしながら戸棚を指差している。

戸棚の中を覗くと小さな袋にビー玉が入っているのが見えた。

戸棚を開けビー玉を取り出すと袋の中には大小のビー玉。

「大きいサイズのビー玉なら丁度良さそうだね。ケイちゃんに持って行ってみよ」

ケイちゃんの居る玄関までビー玉を持って行くと、ケイちゃんは飛び出した内臓を腹の中に戻している最中だった。

「お待たせ。マネキンさんがビー玉見付けてくれたけど、これで代用出来る?」

「あっ、ありがとうございますぅ。ちょっとはめてみますね」

『スポッ』

「大丈夫そう?」

片眼にビー玉を入れたケイちゃんは目をパチパチさせ、

「あっ見えます、大きさも丁度良いですぅ…え? えっ?!」

ケイちゃんは此方を見て首を傾げる。

「どうかした?」

「あの…ちょっと待って下さいね」

もう片方にもビー玉を入れ此方をよく見る。

「あっ、いえ、すいません…私ずっと勘違いしてましたぁ…」

「ん? 何を?」

「ずっと男性だと思ってましたぁ…」

「誰を?」

ケイちゃんは此方を指差してきた。

「俺? 普通に男だけど? なんで?」

「えっ?…だって…その格好ぅ…」

「ん? 格好?」

そう言って今の自分の格好に気付いた。

化粧をしカツラを被り胸にはパットを入れミニスカのナース服を着ている。

「違う! 違うの! これは花子さんが!」

「へ? 花子さん? …花子さんってあのトイレの花子さんですか?!」

「そのトイレの花子さんだよ。今この家のトイレに取り憑いてるんだよ」

「良かったぁ無事だっんですねぇ…良かったぁ。あのぉ花子さんに会えますか?」

ケイちゃんは少し涙ぐんでいた。

学校が取り壊されて仲間とはぐれて心細かった様だ。


花子さんの居る二階に向かう階段の途中、後ろを歩いていたケイちゃんが、

「はう?パンツは男物なんですね」

ナース服のスカートを覗いていた。

「ちょ! 恥ずかしいから覗くなよ」

俺は両手でスカートを押さえた。

「そぉ言えば話を戻しますが、何で女装してるんですぅ? 趣味ですか?」

「趣味じゃねぇよ。花子さんがパジャマパーティーするから女装しろって…」

「はう? パジャマパーティーって女装するもんでしたっけ? パジャマでパーティーするからパジャマパーティーって言うのではぁ? そもそもナース服はパジャマじゃないですよ?」

「あ~まぁそうなんだけど、パジャマパーティー=女子会ってイメージが有るから男のアンタは女装しなさいって。なんつーか面白ければ何でも良いってゆーよーな悪のりな感じ?」

「あぁ~花子さんらしいですねぇ」


階段を上り廊下を進む、俺達がパジャマパーティーをしていた部屋の前に着いた。

「ここに花子さんが居るんですかぁ?」

俺はケイちゃんに向かい頷いた。

ケイちゃんはドキドキした様子でドアを開け、

「花子さんお久しぶりです! 会いたかったよぉ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の廃校からトイレの花子さんが引っ越して来た 叉焼 @ajisio3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ