第22話
トイレへ行くと言って部屋を出た。
「ふぅ」
からかわれてると分かっていてもドキドキする。
まあ花子さんの方が何倍も生きてるから、上手なのはしょうがないか。
二階のトイレは花子さんの部屋となっているので、一階のトイレへ向かう。
『ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ』
ん? 水音?
階段を下りるとより音が大きくなっていく。
台所へ向かい電気を着けると流し台の水道から水が漏れているのが見えた。
どうやら蛇口がちゃんと閉まっていなかったみたいだ。
『ギュッ』
少し強めに蛇口を閉めトイレへ向かう。
一階のトイレには張り紙がしてあり、『男も座ってしなさい!』と書かれている。
男が立ちションをすると100%周りに飛び散るらしく、「いや、100%は嘘でしょ」と言ったところ、花子さんから「はぁ?」と睨み付けられ、日本トイレ協会とか言う団体が出している立ちションの実験動画を見せられた。
100%飛び散るらしい。
スマホでネットニュースを見ながら用を足してると、いつの間にか10分位経っていた。
そろそろ戻るかとトイレを出ると、
『ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ』
また水音が聞こえる。
トイレ? いや違う。
聞こえる方向は…台所? けど台所の水道は間違いなくちゃんと閉めた筈。
二階に戻る前に台所へ寄ると、
『ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ』
先ほど閉めた水道の蛇口からまた水が垂れていた。
また蛇口を閉めようと近付くと、
『ピチャッ…ピチャッ…………』
水が止まった。
中に残っていた水が垂れただけ?
一応もう一度蛇口を閉めてみたが、キツく閉まっていて回らなかった。
…早く皆の所に戻るか。
『ピンポーン…ピンポーン…』
玄関のチャイムがなる。
こんな時間に?
あ、誘った墓場の女の子かな?
俺は玄関に向かった。
『ピンポーン…ピンポーンピンポーンピンポピンポピンピンピンポーン……』
玄関に近付く事にチャイムは激しくなり、玄関に着くとピタっとチャイムが止んだ。
多分あの子じゃない…そう分かっていながら恐る恐るドアスコープを覗き込んだ。
誰も居ない…気味が悪い。
もう一度ドアスコープを覗き込む。
『バンッ!』
「うわっ!」
向こうからドアを叩かれ後に下がった。
『コツン』
後ろに下がった俺は誰かにぶつかった。
「え?」
いったい誰に?
振り向くとそこには1体のマネキン。
…何で?
そこに有る筈の無いマネキンに、恐怖で脈が早くなる。
早く2人の居る部屋に戻らなきゃ…ヤバい…
『カチャカチャ…カチャン』
後ろから玄関の鍵が開く音がした。
『ギィィィッ』
ゆっくりと開くドア。
そこには血だらけのマネキンが1体、そしてそのマネキンの手には引きずられボロボロとなった少女が1人。
マネキンの後ろには少女を引きずって出来たのであろう血の跡が見える。
少女の服は破け、内臓までも飛び出していた。
「た…けて、いた…い……」
少女はこちらに顔を向け手を伸ばす。
目は潰れ、ドス黒い血が流れていた。
「ひっ! うわっ!」
俺は後退りし、後ろに立っていたマネキンにぶつかり倒れた。
『ズリ…ズリィ…』
内臓を引きずりながら、這いつくばって少女がこちらへやって来る。
「目が…見え…ない、いた…い…いたいよ…」
「うわっ!! 来るなっ!」
急いで立ち上がり逃げようとしたが、一緒に倒れたマネキンが俺の腕を掴んできた。
俺はバランスを崩し、また倒れる。
『ズリ…ズリィ…』
倒れた俺にゆっくりと近付いてくる少女。
『ガシッ』
少女は俺の足を掴んでよじ登ってくる。
マネキンと少女に押さえ付けられ、起き上がることが出来ない。
気付けば俺の周りを10体位のマネキンが囲み、見下ろしていた。
もう逃げることは出来ない。
少女は血で濡れた両手で俺の顔を掴み、
「目が…見えないの…暗い…暗い…暗い…ねぇ…私の目、知らない?」
少女は目の無い目で俺の目を見る。
「ねえ…あなたの目を…ちょうだい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます