第20話

洗面所から微かに聞こえてくるマサムネさんの声。

何やら花子さんに文句を言っている様だ。

準備をすると言って洗面所まで連れていかれたマサムネさん。

「何されてるんだろ?」


マサムネさんの準備? は、少し時間が掛かるらしく、その間に料理を二階まで運んでと頼まれた。

料理のある台所へ向かうと、

「うわ、流石花子さん…」

唐揚げ、焼き鳥、オニオンリング、揚げだし豆腐、枝豆、チーズ揚げ、サラダ、刺身などなど。

中には見たことも無い料理もある。

知らない料理だけど、花子さんが作ったんだから美味しいんだろうな。

楽しみにだ。


おつまみを運ぶ為二階と台所を往復していると、

『ピーピーピー♪』

炊飯器のアラームだ。

ご飯も持っていこうと蓋を開ける。

真っ白な蒸気が上がりいい匂いが広がった。

すると洗面所から花子さんが、

「今の炊飯器の音?」

「あ、はい。ご飯が炊けました」

「ご飯はまだ持ってかなくて良いわ。それ〆のお茶漬け用だから」

「わかりました」

炊飯器の蓋を閉める。

「〆も豪華なんですね」

炊飯器の中には鮭の切身と梅干しが入っていた。


料理を運び終え、花子さんとマサムネさんを待つ。

「まだ掛かるかな?」

目の前の枝豆を1つ口へ運んだ。

「あっ! 枝豆うまっ! だだちゃ豆かな?」

つまみ食いをしながら待つこと5分。

『ガチャ』

「待たせたわね、って!?枝豆半分位無くなってるじゃない!!」

あっ、つい食べすぎた。

「…気のせいですよ」

「正直に言わないと〆のお茶漬けは無しよ?」

「すみませんでした!」

速やかに土下座をする。

「つい1つだけのつもりが止まらなくなってしまいました」

「ったく、しょうがないわね」

花子さんが布団の上に座る。

「あれ? マサムネさんは?」

「ちょっと、マサムネも早く来なさいよ。パジャマパーティー始められないでしょ」

「…」

ドアの影に隠れ、無言のまま部屋入ろうとしないマサムネさん。

「もぅ、諦めなさいよね」

「いや、流石にこの格好は恥ずかしいんだけど…」

あ、なるほど。

パジャマに買ったナース服が恥ずかしいんだ。

「笑ったりしないから大丈夫ですよ。早くパジャマパーティー始めましょ。早くしないと枝豆無くなっちゃいますよ?」

そうは言ったが多分私は大爆笑するんだろうな、マサムネさんのナース服姿。


「早く着替えたい…」

ゆっくりと恥ずかしそうに部屋に入ってきたナース服姿のマサムネさん…じゃない!? え? 誰?!

部屋に入ってきたのはナース服を着た知らない美少女。

セミロングの茶髪に薄い赤の口紅、頬にもチークが入り、10代位? 少し幼くも見える。

ただ身長が高いのでモデルさんみたいだ。

私は花子さんのに、

「え? っと、どなたです?」


「ん? 何言ってるの? それマサムネよ」

「…え?! 嘘でしょ?!」

ナース服の美少女をよーーく見る。

恥ずかしそうに顔を反らす美少女。

ん~確かに…マサムネさんに似ている?

う~ん。

「信じてないの? これが証拠よ。ほら!」

そう言ってナース服のスカートを捲る花子さん。

「へ?! いや! ちょっと何してんの花子さん!? ちょ! 離して…離せって!」


捲られたスカートからはトランクスが見えた。


「何で俺ガチ女装させられてんの?」

「パジャマパーティー=女子会だからよ」

「本当にマサムネさんなんですね。どうやったらこんな美少女になるんです?」

「良い出来でしょ? 元々肌が綺麗だったから化粧下地の後はコンシーラーだけで済ませて、目にはフチ有りのカラコン、涙袋にピンクのアイシャドウ、頬には少しだけチークを入れて、口紅は上唇を少しはみ出し気味に、あと鼻の下に影を着けると幼さが出るわ。最後にウィッグで少し顔の輪郭を隠せば、美少女マサ子ちゃんの完成」

「メイクでこんなに出来るんですね。このまま外を歩かせたら何人の男が釣れるか試しません?」

「試さねぇよ! そもそも釣ってどーすんだよ!?」

「そりゃあ…色々な意味で食べたり食べられたり」

「知ってた? 口裂け女の部屋、本棚に入りきらないのくらいBL本が山積みになってるのよ」

「マサムネさんも読みます? 新しい自分が見付かるかも知れないですよ?」

「そんな自分探しはしたくないんで遠慮しときます」










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