第19話
「パンフレットなんて要らないでしょ。メーカーのホームページ見れば商品の詳細は分かるし、気になる便座が見付かったなら型番でネット検索掛ければクチコミも出てくるでしょ」
「ネットで良いのあっても家電屋に売ってなかったらしょうがなくない?」
「電気屋に在庫無くてもメーカーホームページで紹介されている商品ならメーカー在庫は有るでしょ、電気屋にメーカーと型番を伝えて取り寄せすればいいんですよ」
「ねぇ、そーゆーの何処で習うの?」
「さぁ? そもそも現代では必須科目でしょ? 逆に何で知らないのよ」
あれ? こーゆーの割りと一般常識なのかな?
「あ、そー言えば今日パジャマパーティーやるんだけど良かったら来ない?」
ちょっと行ってみたいな…けど、
「折角のお誘いだけど、私は表の世界には行けないの…人を殺しすぎてるから。表に出たら逆に狩られる立場なのよ」
絶望を抱えた人間を誘い込んでは何人も殺した。
見渡す限りの墓は私が殺した人間の数。
「貴方ももう来ない方がいいわよ? …次は殺してしまうから」
私にとって人間は食料でしかない。
馴れ合うと…殺しづらくなる…
「そっか…じゃあコレ。さっきのお礼に」
コンビニ袋から出てきたチョコレート菓子を手渡された。
「またね」
「本当に次は殺すわよ?」
馬鹿もここまで行くと救いようがない。
「俺みたいなのは殺しても中々死なないでしょ」
イライラする。
「貴方に…人を殺さないと存在できない私の絶望が理解できる? もう来ないで…」
イライラする…
「人を殺したときの絶望は知ってる知ってる」
え?
軽く答えられた。
「私はあなたの知り合いだって殺してるかもしれないのよ?」
彼は端に有る墓を指差し、
「あれ俺のじいさんの名前だわ。行方不明だったけどここに居たんだな。それじゃまたね。もし気が向いたらパジャマパーティーも来てよ」
彼は白い花の植えられたお墓を辿って帰っていく。
「…本当に何者なのよ…」
少し帰るのが遅くなってしまった。
スマホの時計は17時12分、パジャマパーティーに12分遅刻だ。
「ただいまぁ」
「あっ、居た! ちょっと何処行ってたのよ」
出迎えてくれた花子さんは熊の顔のフードが付いた着ぐるみパジャマを着ていた。
ヤバい、めちゃくちゃ可愛い。
「ごめんごめん。ちょっと家電に詳しい友達に色々聞きに行ってたんだ」
「あれ? 居ないと思ったら何処か出掛けてたんですか?」
パジャマ? なのか分からない姿の加藤さんも玄関へやって来た。
「あ、ただいま。ちょっと家電の事で友達のとこまで。ところで…その格好はパジャマなの?」
「へ? 見たら分かるじゃないですかパジャマですよ?」
着ているパジャマを広げて此方に見せる加藤さん。
何の色気も無い上下グレーのスエット姿。
「チェンジ」
「なっ!? マサムネさんは本当にデリカシーが無いですよね!本当に私の息子なんですか?! 女性にそんなこと言う人はうちの子じゃありませんからね!?」
「だから息子じゃないって、うちの子じゃないのはアンタだよ」
「たく、屁理屈ばっかり。そもそもどんなパジャマを期待してたんですか」
「ん~、ネグリジェとか?」
「今まだ3月ですよ? ネグリジェじゃ寒いですからね? そもそもそんなに母親のネグリジェ姿…見たかったですか?」
「…」
「まぁどーしてもって言うなら、着てあげないこともないですけど」
『母親のネグリジェ姿』ってパワーワード。
頭に浮かんだのは加藤さんじゃなく、本当の母親のネグリジェ姿…
60歳過ぎた母親がスケスケレースのネグリジェ… おええぇぇぇぇっ!!
「なんか…ごめんなさい…」
「え?! 何なんですかそのリアクション?! え?!」
「ねぇ、バカなやり取りはお酒飲んでからにしない? それにマサムネの準備もしないといけないし」
「え? 何? 俺の準備って?」
「いいから時間もないし洗面所に行くわよ」
手を引かれ洗面所まで連行される俺。
「えーっと、私は何をすれば良いですか?」
「マサムネの準備に20分位掛かるから、その間に料理を二階まで運んでってもらえるかしら」
「分かりました。ところでマサムネさんに何をするんです?」
「秘密、出来てからのお楽しみよ。あっ、マサムネのパジャマも預かってくわ」
俺…何されるの?
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