第15話
逃げなきゃ、逃げなきゃ… 何処へ?
隠れなきゃ、隠れなきゃ… 何処に?
何処に行けば…
そうだ! 学校なら、誰か居るかも!
誰か! 助けて! 先生 !何処に居るの!
どうしよう…どうしよう…
見つかっちゃう…もう隠れなきゃ!
何処に隠れれば…あっ!トイレなら鍵が掛かる!
「はぁはぁはぁはぁ…逃げきれた? …これからどうすれば…」
『コンコンコン』
「居るんでしょ?」
「いやっ! やめてお母さん!」
「ごめんね花子…ごめんね…」
「っはぁはぁはぁ、嫌な夢ね…」
生きていた頃の記憶…
私が母に殺されたときの記憶。
最近は見なかったのに…何でまた…
「はぁ…寒い…」
あんな夢を見たせいか…とても寒く感じる。
膝を抱えうつ向く。
「ん? …あっ!?」
『ピピピピピ♪ピピピピピ♪』
朝か…仕事だからな、起きなきゃ。
あれ? そもそも今日仕事だっけ?
…今日何曜日だ?
『ピピピピピ♪ピピピピピ♪』
スヌーズ5分間隔の無限リピート。
手探りで枕元にあるスマホを取り目覚ましを解除する。
スマホの画面を見ると今日は水曜日だった。
…なら今日は休みか、花子さんが起こしに来るまで寝てていいや。
スマホを枕元に戻し、布団に潜る。
『むにゅぅ』
ん? なんか柔らかいものに当たった。
そしてなんだろう…いい香りもする。
気になり布団を捲ると、そこには丸まった花子さんがすやすやと眠っていた。
「…へ? うわっ!! 花子さん!? 何してんの!?」
「ん? なに…もう朝? 寒いから布団捲らないでよ…」
「いやいやいやいや! 何で花子さんが俺の布団に居るの?! いつもトイレで寝てる筈でしょ!?」
「故障したのかわからないけど、便座ヒーターが暖かくならないのよ。私寒いの苦手なの。寒いと夢見が悪いのよ…。別に口裂け女とも一緒に寝てたんだから、私が一緒に寝ても問題ないでしょ」
「いやいやいや、大体便座ヒーター着かないって、廃校に居たときは便座ヒーターなんて無かったでしょ?! どーしてたの!?」
「全身ヒートテックに熊の着ぐるみパジャマ着てたわ。それでも寒い日は二宮金次郎の背負ってる薪を燃やしてたわね」
「11月頃から廃校で不良達が原因の不審火が相次ぐってニュースになってたけど、もしかして…花子さんのせいで取り壊されたんじゃないの?」
「え!?そ…そんなことないわよ…ね?」
「結構高確率で花子さんが原因な気がする」
「…そんなことより! 便座ヒーター直さないと、まだまだ寒い日が続くから」
「話を反らすなよ」
「ちなみに便座ヒーター直るまでここで寝かせてもらうから。まぁ、私とずっと一緒に寝たいなら壊れたままでも構わないわよ?」
「マサムネさん、花子さん知りません? 台所にもトイレにも居なく…て……え?! 花子さん何してるんですか?!」
「ん? 寒いからマサムネの布団で寝てただけよ?」
「えっ!!ちょ!『男女七歳にして席を同じゅうせず』って知らないんですか!?」
「貴女もマサムネの布団で寝てたじゃない」
「わ…私はマサムネさんの母親なのでセーフです」
「改めて言うけど俺と加藤さんは血縁関係無いからね? 他人だからね?」
「本当に血縁関係が無いと…思います?」
「リアルな恐い話朝には重いよ。てか、花子さん探してたんじゃないの?」
「あ、そうでした。花子さんお腹空きました。朝ごはんまだですか?」
「たまには自分で作ってみたらどうなの?」
「台所が私の血で染まりますが?」
「はいはい、ご飯は炊いてあるからすぐ準備するわ」
花子さんが台所へ向かい、俺と加藤さんだけになった。
「花子さん、何かあったんですか?」
「便座ヒーターが壊れたらしくて、寒いからって俺の布団に潜り込んでたみたい」
「それだけですか?」
「俺は何もしてないからね?」
「なんか花子さんいつもより元気がなかった気がしたので」
「そう? いつもと同じに見えたけど」
「少しは女心を勉強しましょ?」
「参考書とか売ってない? あ、ネットとかに書いてないかな?」
ちょっと調べてみるか。
「…」
「…」
「女性から布団に入って来たならヤれる可能性が大だって書いてあるけど…どう思う?」
「男ってバカだなぁって改めて思いました」
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