第14話
「流石に田舎だからって、圏外はおかしいよな?」
壊れたか? 流石に4年間使ってるしな。
バッテリーもすぐ減るし、このタイミングで買い替えるか。
やっと新しいスマホに変えれる…
このスマホ、ゲームやると一番低い解像度にしてもラグが起きるんだよな。
けどゲームが理由でスマホ交換するのってどうなの? 電話は出来るから問題は無いじゃん? って思ってて…
まぁ壊れたならしょうがない。
よし! 次はゲーミングスマホにしよう。
あれ? スマホが壊れてる場合って…
ゲームの引き継ぎ出来るのか?
引き継ぎコードとかメモってないし…
「ん…あれ? ここ何処だ?」
コンビニに向かって歩いていた筈なのに、気付いたら知らない墓場にいた。
コンビニの近くに墓場なんて無かった筈…
帰りたい、早くここから出たい…
何故なら…
絶対に…
ろくなことがないから…
俺別に霊感とか強くないのに…
「はぁ」
タメ息が出る。
「絶対に怪異の仕業じゃん…どっちに向かえば帰れるんだよ」
見渡す限りお墓しかないし。
暗くてどっちから来たかも分からない。
スマホを見てみる、やっぱり圏外。
「ん? なんだコレ?」
圏外なのに知らないマップアプリがダウンロードされてる。
試しにマップアプリを起動してみた。
『目的地は貴方の墓場です。人生お疲れ様でした』
なんだろう、無駄に手がこんでるコトにイラっとする。
「えーんえーん、えーんえーん」
遠くで子供の泣き声が聞こえる。
あぁ、コイツのせいか…
「えーんえーん、えーんえーん」
声のする方へ向かう途中、知ってる名前の墓を見つけた。
俺はその墓から卒塔婆を2本抜き、泣いている子供に近づいていった。
小学生位の女の子がお墓の前で泣いている。
コイツが元凶か。
「どうしたの? 誰か一緒じゃないの?」
「えーんえーん」
「そのお墓は君の家族のお墓なの?」
「えーんえーん…ぐすん、違う…」
「じゃあ友達のお墓?」
「ぐすん、違う…」
「じゃあ誰のお墓なの?」
「このお墓はね、お前の墓だー!!って…え?!ちょ、何してるんです!?」
振り返りコチラを向いた女の子の目には、卒塔婆を2枚重てフルスイング準備万端な俺の姿。
「何って、やだなー野球に決まってるじゃないか磯野。ボールはお前な」
「いやいや、私磯野じゃないです! そもそも何ですか?!ボールお前なって、考え方が人間じゃないですよね!? サイコパス過ぎますよね!」
「なんだお前、中島に文句つけるのか?」
「貴方に文句言ってるんですよ!」
「つーかここ何処よ? 酒が温くなるから早く帰してくんない?」
「ちょっとマイペースすぎません? 貴方絶対にB型でしょ?」
「お前、B型に『B型でしょ?』って言っちゃいけない台詞だからな? 」
「え? 何 ですか?」
「悪いイメージしかない血液型だって自負してるからだよ! 俺だって出来ればA型とかが良かったよ! B型の良いところ? そんなもん有るわけねぇーだろ!」
「な…なんかすいません」
「もうB型ってわかったんだし早く帰してくんない?」
「帰れると思っているんですか? ここは不安を抱える人間が迷う墓場、出口なんてありません」
俺の不安?
「じゃあ俺、ゲームの引き継ぎ出来るか不安でココに迷い込んだの?」
「え?! そんな理由で不安を抱えたんですか? えっ? かなりの不安の大きさでしたよ?」
「そりゃ可愛いキャラが欲しいが為に、可愛くない額を突っ込み続けたからね」
「課金してるならアカウントに課金の履歴が残るので、その画面をスクショすれば引き継ぎはやってくれると思いますよ?」
「そうなの? 良かったぁ、じゃあもう不安ないわ」
「いやいや、そんなんで帰れませんからね?」
「酒が温くなると花子さんと加藤さんに怒られるんだけど…」
「まず自分の命の心配をしたらどうです? それに花子って…名前が昭和すぎません?」
「花子さんは確か昭和12年には生まれてたって」
「ん? そんなおばあちゃんと今からお酒飲むの?!」
「え? そうだけど? 梅酒900ml頼まれたし」
「随分元気なおばあちゃんなんですね」
「まぁおばあちゃんって言っても見た目若いから、どう見ても女子高生にしか見えないし」
「いやいやいやいや!!それは言い過ぎでしょ?! 昭和12年には生まれてたって…お前90歳近くじゃねーか!」
「いや本当だって、ほらスマホに写真あるから見てみなよ。この前久々の再会を記念して一緒に写真撮ったんだ」
「え?!見たい見たい……あのぉ~貴方1人でピースしてる姿しか写ってませんが?」
「あれ? 本当だ。あ~花子って写真に写らないんだ。知らなかったわ」
ヤバい奴呼び寄せちゃった!ヤバい奴呼び寄せちゃった!
ただ生気を吸おうとしただけなのに卒塔婆で顔面フルスイングしようとするわ、スマホゲームの引き継ぎ出来るかが最大の不安だったり、90歳近くのおばあちゃんを女子高生って言ったり、最終的に自分の自撮り写真を見せてくるって…
なんか…コイツに絡むの疲れてきた…帰ってもらうか。
「お酒温くなちゃいますし、今日は帰って良いです。帰り道はお墓に白い花が咲いてるんで、その花を辿って行けば現世に戻れます」
「えぇ~、このままだと俺が嘘付いてるみたいじゃない」
いやいや早く帰れよ!さっきまで帰りたがってたじゃん!
「じゃあ今度連れてきて下さいますか? ね?」
「あ~それは無理だ、花子さんトイレから離れられなくて」
「只の便秘女じゃねーか!!」
「あっ!じゃあ証人に加藤さんの方連れて来るわ!」
「わかったわかった、待ってるから早く帰って」
「じゃあまた後で」
「ふぅ、やっと帰った…。また来ないように入り口閉じとくか」
これからは生気を吸う人間はちゃんと選ばないとな。
まぁあれは流石にレアケースだと思いたい。
「あ、いたいた。お待たせ」
「はやっ!? え? どーやって入って来たの? この空間の入り口は閉じてた筈だけど?! え?! 普通に恐いんだけど! 」
「え? 加藤さんに入り口開けてもらって来たけど? あっ! 紹介するね、こちら『口裂け女』の加藤さん」
「あ、どーも口裂け女の加藤です」
「それでこの女の子が、梅酒とストロングレモンを温くした犯人」
「え!? ちょっ!いや間違ってはないけど、言い方が…」
「ちなみに『トイレの花子さん』を便秘女って言ってました」
「花子さんって『トイレの花子さん』のコトだったの?! 」
トイレから離れられないってそう言う意味かよ!!
霊体で汗をかかない筈なのに冷や汗かいてきた。
『トイレの花子さん』も『口裂け女』も私より霊格が上。
下手をしたら消される…
「す…すみませんでした! まさか上位怪異のお連れの方とは存じ上げず! 今すぐお酒を買い直して来ます!」
一瞬で姿を消しコンビニへ。
急ぎ梅酒の900mlとストロングのレモンを持ってレジに、
「はぁはぁ…これ下さい」
「きみ小学生かな? ごめんね、小学生はお酒買えないんだ」
「お…お父さんとお母さんに頼まれたの!」
店員が時計を見る。
現在時刻は23時16分
「こんな時間に頼まれたの? ちょっと待っててね」
早くして! 私の命がかかってるの!
…
…
…
何分待たせんだよ!!ああ?
「あの~急いでるんですがぁ」
「もう少し待っててね。今警察と児童相談所の職員が来るから」
「えっ? あ、いや困るんですけど! 早くしないと私の命が…」
「もう大丈夫だから、安心して」
安心出来ねぇよ!
あ、外で赤いランプが点滅してる車が…人生終了のお知らせかな?
取り敢えず…逃げるか。
「本当にすいませんでした!!」
人生初の土下座。
「気にしないで頂戴、別に責めたりしてないから、ね?」
「ありがとうございます!!」
しばらく人間に関わるのは止めよう…
生きた心地がしない…
2日後。
「ねぇ、スマホ新しいのにしたんだけどさぁ。ゲームの引き継ぎって何処をスクショすれば良いの?」
「お前もう来るなよ! うちはケータイショップじゃねーよ!」
ここに何度も来れる程の不安を抱えて生きている…
コイツの不安は何なのだろう…
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